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いつかは来ると分かっていても

避けて通ることはできない。

いつかは、来ると分かっている。

・・・・・でも、これも運命だから仕方がないのだ。


…‥‥長い年月が経ち、いつしかリューにはひ孫たちまで生まれていた。


 ここまで来る時に、ちょっといくつかの国が滅び、新たな国が産まれもした。




「正直言って、新しい国とかいちいち確認するのが面倒くさかったなぁ‥‥‥」

【いや、自業自得ですよね、リュー様?】


 リューのつぶやきに対して、ハクロがそう返答した。



 何しろこの天空城を動かす際に地図を見て、どこにどの国があるのかを確認しているのだが、国が出来たり滅んだりして何度も書き換わり、移動の際に面倒くさくなっていたのだ。


 まぁ、その国が滅ぼしたのは間接的にはリューの仕業であったけどね。


 子供、孫たちに対してやらかそうとした国に自らおもむき、ある程度のチャンスを与えたりしたのだが‥…それでもダメなところは、経済制裁や強制鎖国などさせて、自ら滅亡するように仕向けたのだ。


 自分でも少々やり過ぎたかなと思ったが、別に文句はその滅びた国しか出ていないから、大丈夫であろう。


 もともとダメダメな人たちが治めていた国や、愚者が産まれたところに絞っていたから、その他のまともな国々はむしろ将来的に迷惑となるようなところを潰してくれたことに感謝してきたのである。


 うん、魔王が感謝されるって微妙だね。いやまぁ、分類的には善の魔王に入ったらしいけどさ、国を滅ぼしているのは自分でもどうなのだろうかと思う時もあるよ。







 でも、魔王とて逃れられない時はあった。


「‥‥‥ヴィクトリアもいなくなったし、もうそろそろ俺も終わりが来ているのかな」


 天空城内に作った墓の前にて、もう亡くなってしまったヴィクトリアに向かって手を合わせつつ、そう思った。


 寿命。それはもうどの生物もが産まれ持った時間であり、尽きたときに死ぬのである。


 魔王の衣作用で老化がほとんどなくなっていたとはいえ、その周囲はきちんと老化していくのだ。


 ハクロたちの見た目は昔とは変わらないが、モンスターゆえにそう大きな変化も起きないのであろう。



 変化したのは、リューにとって親しかった人たちが無くなったことである。


 オーラ辺境伯爵領では、兄が子供に当主の座を譲り、その子がさらに当主の座を孫に譲っている。




 あの元気そうだったアレン国王も、晩年には‥‥‥まぁ、変わりはなかった、


 いや、あれがむしろぽっくりと逝ったことが、今でも信じられないのである。


 最後まで、本当にもういろいろやらかす人で‥‥‥一体何人の愚者があの国王によってふっ飛ばされて裁かれたのであろうか。





・・・・・そして、リューの妻であったヴィクトリアも、数年前に亡くなってしまった。


 亡くなった時に、孫たちも来たのだが、皆で涙を流したのはついこの間のように思い出される。


 遺言で、彼女はせめて最後まで一緒にいるために、この天空城にお墓を作って埋葬してと言われたので、きちんと作って埋葬した。




 

 そして今、リューもまた、己に寿命が訪れようとしていることを感じ取っていた。


 とはいえ、見た目が老化していないので違和感しかないけど、自身の死期を悟ってしまうのはどうしてなのだろうか。


 別に、もうこれ以上長く生きる気もないので、その時が来るまで皆で楽しく過ごすことをリューは決めた。


 よく、権力者とかは不老不死を求めたりするものだけれども、そんなものは別にいらない。


 人というのは、寿命が尽きるその時まで頑張って生きているからこそ、美しい生き物なのだから。






 楽しく過ごすことを決めた後、リューたちはあちこちを天空城で回ってみることにした。


 熱い砂漠の国、海の中にあった国、天空城とは異なるけれど空の上にあった国など、様々な地を訪れ、その地ならではの楽しみなどをしっかり味わった。



 ついでに、かなり昔にファイの魔法を補助して封印した絶対零度の猛吹雪の地にも訪れ、解凍前に問答無用でその周囲全体を消し飛ばし、今では大きな湖に変えてしまったが‥‥‥


 うん、やらかしはしたけど後悔はしていない。





…‥‥で、もう間もなく寿命を迎えそうなのをリューは感じ取っていたが、ふと心残りな事があった。


 それは「従魔契約がどうなるのか」という疑問である。



 現在、リューはハクロたちと本契約を結んでいるのだが、この主の死が訪れたときに従魔たちはどうなってしまうのだろうかということである。


 ワゼに聞いてみたところ‥‥‥本契約であれば、一生を主に捧げる。


 つまり、「死も一緒」であった。



「‥‥‥もう間もなく召されるけどさ、その時に契約を解除しようか?」


 皆を集め、リューはそう尋ねた。



 何も、自分の死に最後まで付き合うこともなく、契約を解除して長く生きてもらおうと思ったのだ。


 そうすれば、彼女達の娘や孫たちの世話をすることができるだろうとも考えていたのだ。



 だが、ハクロたちは首を横に振った。


【いえ、私たちは解除しませんよ。だって従魔になったその時から覚悟もしていましたし、最後まで、いえ、あの世の旅路も一緒になります】


 そう微笑み、皆は同意するように深くうなずいた。


「‥‥‥そうか。‥‥‥ありがとう」


 その温かい心に、リューは涙がでそうになった。










 もう間もなく、死が訪れるであろう。


 魔王の死後、新たな魔王がこの世に生まれるのはいつになるのであろうか?



「というか、この天空城とかどうなるんだろうか‥‥」

『・・・・・ご主人様の死後、私も本契約状態ですので自壊してしまうのが分かっていマス。ですが、安心してくださイ。完璧な計算の元、悪しき持ち主の手に渡らぬようなどこかに自動的に着陸し、そこで壊れるようにしていますからネ』

【まぁ、その前に死後の旅路がどうなるかはわからないでありますなぁ。そもそも、拙者に死の概念があるのかどうなのかも疑問でありますしね】


 ワゼは良いとして、アンデッドでもあるルピナスに言われると少々不安になるぞ。


 そういえば彼女、一度死んでいるようなものだからどうなるのかがわからないな‥‥‥





 何はともあれ、もうすぐ天に召されるだろう。

 

 魔王の死が穏やかなのは少々物足りないけど、でも大往生が一番いいだろう。





 なんとなく意識が薄れてきたリューは、なんとなく傍にいたハクロの手を取った。


「‥‥‥思えば、あの時から俺の人生って色々と波乱万丈だったよな」

【言われてみれば、そうかもしれませんね】



 あの日、森でハクロと出会い、そしてそこから今の人生が始まったように思えた。


 もし、ハクロと出会うことなく、あのまま辺境伯爵家の4男として生きていたら、平凡な人生だったのかもしれない。



 でも、ハクロと出会ったことで、今はこうして好きな人たちと一緒になれたことを思うと、まさに運命だったのだろう。



「俺の人生を変えるきっかけになって、ありがとうハクロ」

【私こそ、貴方に出会えたのが本当によかったですよ。ありがとう、リュー様。‥‥‥いえ、私にとってかけがえのない愛しいリュー。あの世への旅路にお供しますけど、叶うならば来世も‥‥‥」



 ハクロの言葉は、最後まで聞き取れなかった。


 けれども、何を言わんとしているのか、リューは理解し、にっこりとほほ笑んだ。








 この日、黒曜魔王と呼ばれていた魔王が死を迎え、その遺体を乗せた天空城は行方不明となった。


 残された子孫たちは、皆魔王を失った悲しみを持ちつつも、今を生きようと心に決め、そしてリューたちの功績を後世に伝え始めたのであった‥‥‥‥



本日10時頃、エピローグ投稿予定。

‥‥‥それからさらに月日が経過した回となります。

最後まで、ご愛読をどうぞよろしくお願いいたします。

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