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自由に過ごしたい魔物使い  作者: 志位斗 茂家波
終わりが見えてくるで章
156/162

こういう時に父は無力

いくら魔王でも、魔力が多くても、従魔を従えていても、無力な時は無力である。

SIDEリュー


‥‥‥それは突然始まるというが、まさにその通りであった。



 その日、ヴィクトリアの妊娠から40週目を少々過ぎたあたりの晴れた日の午後、大きくなったお腹を持ちながらも、そろそろ孵化の時期が重なるハクロの場所に、皆でゆっくりと笑いながら話し合っていた時であった。


「‥‥‥痛っ!!」

「!?」


 突然、ヴィクトリアがお腹を押さえた。



「じ、陣痛なのか!?」

【ワゼ―!!急いできてーピキッツ!!】


 どうやら陣痛が始まったようで、皆慌しく動き出す。


 ピポが全速力でワゼを呼びに行くと、すぐに彼女はやって来た。


『ふむ、陣痛で間違いなさそうデス。予定日よりも少々遅れていましたが、それでも誤差の範囲内。今から出産を行いマス』


 冷静に、それでもこの状況は初めてなのでどこか緊張したようなそぶりを見せるワゼ。


 と、ここでさらに追い打ちをかけて・・・・



ピキッツ!!

【あ!?卵が!!】


 なんと驚くべきことに、このタイミングでハクロの卵にひびが入ったのである。


 どうやらこちらでは孵化が始まったらしい。


【えっさほいさっと、温かいぬるめのお湯と産着を持ってきたのだよ!!】

【万が一を備えての医療器具も持ってきたであります!!】


 現状、動けるメンバーであるランとルピナスがそれぞれ必要な道具を運んできて慌しくなった。


【大きめのベッドも持ってきたピーキッツ!!】

 

 ピポがベッドを収納していたところから取り出し、そこにまずはヴィクトリアを寝かせる。


 ハクロの方は卵の孵化であるが、こちらは中からきちんと出られるように少しだけ手助けをするらしい。


「えっと、俺はどうしたら・・・・」


【【【『とりあえず外出て無事を祈っていて!!』】】】



 一旦部屋からつまみ出され、待たされることになった。


 こういう時に、父は悲しい立場である。あ、ミニワゼたちもフル稼働して忙しいことになっているようだ。









 それから待たされること3時間ほど。


 無事に出産が終わったようで、元気な赤ちゃんの声が聞こえてきた。


 同時にハクロの方も孵化が終わったようで、こちらはおとなしい。




 少し待って、ミニワゼが出てきて中にはいて良いことになった。



「ふぅ・・・・・この世の地獄から乗り切りましたわね」


 晴れ晴れしく、無事に出産を乗り切ったヴィクトリア。


 その手には、きちんとくるまれた彼女の子供がいた。


『体重およびその他状態はやや軽めですが、元気な男の子デス』


 測定し終えたのか、ワゼが記録を取りながらそう告げる。


 見れば、我が子となる子はどうも男の子だったようで、先程まで泣いていたのだが、今は静かに眠っていた。


 抱えさせてもらったが・・・・ちょっと軽い。


 けれども、その命の重さは確かに存在した。


「ハクロの方は?」

【私の方も無事に孵化が終わりましたけど、『アラクネ』じゃなくてその一つ手前の『アルケニー』です】


 そう言いながらハクロが抱えたのは、ヴィクトリアの赤ちゃんと同じぐらい小さいが、その腰辺りにはハクロと似ている子蜘蛛の下半身が付いていた。


―――――――――

『アルケニー』

アラクネの一つ手前と言われているモンスター。アラクネが大人な外見に対して、アルケニーは幼い女の子の見た目となる。

―――――――――


 すやすやとこちらも眠り、安心しているようである。




‥‥‥可愛い我が子が生まれたことにリューはうれしく思ったが、ここで一つ問題があった。


「名前、どうしよう・・・・・」



 実はまだ、考え中であり、候補が多くあったのだ。


 悩みつつも、何とか名付けするのであった…‥‥

‥‥‥まさかの同じタイミングでの誕生であった。

ちなみに、アルケニーの方に名前を付けたら、従魔としての仮契約になるのではないかと思われそうだが、細かい説明を省いて言えば、仮契約にならずにきちんと我が子としての名前が付くのである。俗にいう、ネームドモンスターかな?

次回に続く!!


・・・・・なお、この子の誕生に関してはすぐさま祖父になる元国王や隠居した辺境伯爵の下へ届けられたのだが、そばにいた現国王や現当主いわく「喜び過ぎで踊り狂っていた」そうである。

きちんとそれが記録され、後々孫たちにその記録が見られて赤面する羽目になるのは、まだ先のことであった。

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