閑話 退位式と即位式
閑話一つというか、ムーカスはまだあとの予定。奴がどうなるか、その設定をするのに様々なパターンが出て悩ましいのである。
・・・・・本日、ザウター王国内はいつも以上に騒がしく、それでいて人々は面白そうに過ごしていた。
それもそのはず、何とこの国の国王であったアレン国王が、退位するのだというのだ。
この話に最も歓喜したのは彼の側近たちであった。
なぜならば、退位した後はアレン国王は先代陛下と呼ばれることになり、国の重要性を考えるのであれば国王となった人の方が偉いので、彼の突発的な行動に負担を強いられる人たちは、いくらか心の負担が減るのだ。
嬉しいと言えば嬉しいのだが、若干マゾ気質な人にとっては残念だったのかもしれない。まぁ、そんな人たちでも3日で音を上げたという話があるのだが・・・・・・
それはともかく、ここで注目すべきことは次の国王はどうなるのかということであった。
今のアレン国王には、子は5人いた。
そのうち、王子は3人、王女は2人だったのだが・・・・・・このうち3人は王籍剥奪や婚姻など様々な理由で王位継承権を放棄しているので、残るのは第1王寺と第2王子のみである。
両王子とも成績優秀、容姿端麗、性格良好で優劣をつけがたいほど良いのだ。
その為、どちらが王になっても民は歓迎するのだが・・・・・・ここで問題なのは、本人たちにその気はなくとも潰し合わせたい者たちがいたりすることである。
甘い汁を吸いたいとか、自らの欲望のために利用したいというか・・・・・・・様々な思惑が交差するのだ。
だがしかし、なぜか不思議なことに、この退位の話が近づくにつれ、不審な噂場話などが出ていた者たちは蟄居したり、旅に出たり、行方不明になったりしたので、無駄に争いが起きる可能性はなくなっていったのである。
その陰には、密かに国王と取引をし、自身の主に迷惑が掛からないように動いたメイドがいたとかいなかったとか・・・・・
そんなこんなで、退位日がやって来た。
この日は同時に即位式も行うので、どちらの王子が国王となるのかも見ものである。
しかも、国の重要な式典という事にもなるので、各国の使者たちが祝いに訪れに着たり、重要な国賓が招かれたりなどと、てんてこ舞いの大忙しでもあった。
「・・・・・しかし、あのアレン国王が退位するとは驚いたな」
「まだまだ現役そうでしたけど、まぁお父様の突発的な行いは今に始まったことではないですわね」
そんな中で、リューたちもその重要な客人として招かれていた。
黒曜魔王、最強の魔物使いの夢追い人などと呼ばれてはいるので、そこそこ有名になっているのだが・・・・・いかんせん、こういう場では視線が辛い。
【いつも以上に気合いを入れて、服装を綺麗に整えたのが原因でしょうかね?】
「それもあるんだろうけど・・・・・良いんだろうか、こんなに目立って」
ハクロの言葉に対して、リューは少しだけ不安であった。
・・・・・正直に言って、このメンツかなり目立つ。
今さら何をと言われるだろうけど、とにかく目立つのである。
ヴィクトリアはアレン国王の娘の一人であり、リューの妻でもあるのでいいのかもしれないけど・・・・ハクロたちが異常に目立ってしまうのだ。
清楚さを出しつつ、その見た目だけなら気品あふれるオーラを放ち、白い正装に身を包みまさに清き権化とか言われそうなハクロ。
真っ赤に燃えつつ、この数年で進化したのかアイデンティティーが失われたのか人ほどの大きさになり、燃え盛るような情熱的な赤さを持ち、それでいてまだ幼さを残すピポ。
澄み渡るような大空を印象付ける蒼さを持ち、足をいくつかスカートの中に収め、上品さと妖艶さを醸し出させるファイ。
踊り子のような衣服に身を包みつつも、品を乱さぬように露出を減らしたのに、更に艶めかしさを出してしまったラン。
紫色の鎧を着用してはいるが、どことなくきりっとした雰囲気を持たせ、兜を外し、肌色が青白くともどこか真面目な雰囲気を醸し出すルピナス。
元はエルフの長にして、ラミアの身体となったものの、その鱗は綺麗に輝き、宝石のように見えるルーン。
そしていつも通りかと思いきや、実はいつも以上に上質なドレス用のメイド服だという訳の分からない者を着用するワゼ。
それぞれが様々な方向性を持った美女であり、その集まりには皆が目を引かれていた。
・・・・・後半からおかしい?そりゃ、俺の語彙力がないからだよ。
とにもかくにも、本日の主役は退位するアレン国王と、即位する第1か2王子なのだが・・・・・それ以上にリューたちは目立っていた。
リューも魔王の衣をだして、黒目黒髪の黒色一色で目立つのだが・・・・・・・ハクロたちには負けている。
周囲では・・・・
「おお、なんというかあそこだけ桁違いの華やかさがありますな」
「あれがモンスターたちでもあるのか・・・・それなのに、人以上の美貌を持つ者ばかりではないか」
「初めて見た者もいるが、それにしても相変わらず桁違いの美しさだ」
「あれがたった一人の男に独占されるなんて・・・・・うう、なんて世界は残酷なのだろうか」
「どうにかして、彼女達をものにできないだろうか・・・・・襲うか?」
色々とこちらに対して、ひそひそ話し合っているようである。
というか、最後の奴だけ要注意だな。後でワゼにぷちっとしてもらおう。
とにもかくにも、退位の時間となった。
アレン国王が国民の前に立ち、退位する宣言をしっかりと出す。
「・・・・・そして、これより私は退位し隠居しよう。もはや国王ではなくなるが、退位後でも国民のために努力を尽くすことをここに約束しよう。では、次に新たな国王になるものなのだが・・・・」
その言葉に、聞いていた者たちはつばを飲み込んで待った。
第1王子か、第2王子か・・・・・・どちらがこの国の王となるのだろうか。
そして、アレン国王は言葉を続けた。
「新たな国王は・・・・・・第1・2王子の共同統治とすることで解決させる!!」
「「「「「・・・・・・・・え?え?え?・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
アレン国王のその言葉に、皆が戸惑い、驚愕の声を上げたのであった。
どうやらアレン国王は次期王としてはどちらが良いのか迷いの迷ったそうであり、この際二人とも国王にしてしまうことで解決しようとしたらしい。
幸いというべきか、兄弟仲も悪くはなく、互いに補い合って政治を行えるので当面は問題は無さそうだ。
ただ、この場合問題となるのがその二人に子が出来た場合、どちらを優先して王位継承権を付けるかなどらしいけど・・・・・・それは家臣たちに丸投げするらしい。
アレン国王の最後の大きなその爆弾とも言える宣言に、どこぞやの宰相が血を噴いて倒れたと言う話が付きつつも、無事に退位式、そして両王子たちの即位式は終了したのであった。
「・・・・・まさかの結末というか、思い切ったことをしたな」
「確かに丸く収まるかもしれないけど・・・・・お兄様たちの共同統治ってうまいこと行くのかしら?」
今後、このザウター王国がどのように変化していくのかはわからない。
けれども、出来れば繁栄し続けてほしいとリューたちは思うのであった・・・・・・・・
「・・・・・あれ?そういえば結局第1,2王子たちの名前って出たか?」
「あら?そういえば言われていませんでしたわね。もはや居ない元第3王子にすらありましたのにねぇ」
・・・・・ある意味、もっとも影が薄いというか、不遇な王子たちでもあった。いや、今は第1,2国王か。
さてと、次回も閑話というか、あのムーカスのその後の予定。
そしてその後は・・・・新たな章に入るのかな?