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誰かが言いそうな気はしていた

珍しく無駄に長めです

SIDEムーカス


・・・・・・ダッツーレラウ王国から時間はかかったが、ようやく天空城があるというザウター王国のオーラ辺境伯爵家領内、ラストリモの森付近までムーカスたちは行軍してきた。


 ムーカスが率いるのは、今回の天空城捕獲作戦のためにダッツーレラウ王国の愚王もとい国王ダラッツーノから許可をいただいて指揮官を得たダッツーレラウ王国の軍隊である。


 一気に大勢の兵士たちを動かしてはいるのだが、誰もが異を唱えていない。


 それは、今回の天空上の件を伝えた際に、ムーカスは言葉巧みに誘導したからである。



「ムーカス最高指揮官殿!!本当に天空城にはお宝が眠っているのでしょうか!」

「ああ、間違いない!!天空城は大昔のある魔王が創り上げた城だそうだが、その内部にはその魔王が蓄えた財産が多くあるそうだ!!金銀財宝、魔道具(マジックアイテム)などと、諸君らを満足させるだけのものが眠っていることをここに約束しよう!」


 兵士たちを集めたときにそう叫ばれたので、ムーカスは応答し、見事に宝の話に目がくらんだ者たちはムーカスを最高指揮官として認め、今回の作戦に乗ったのである。



‥‥‥とはいえ、ムーカスも予想外だったのだが、ダッツーレラウ王国中のまさかの全軍がムーカスに従ったことである。


 給料が満足に支払われていない現状、打破するために乗ったのだろうけど、そうだとしても国の守りが極端に薄くなるだろう。


 また、市街の治安を守っているはずの衛兵たちも来たので、おそらく今は国内の治安が極端に悪化しているはずである。


 抑えるだけの人がおらず、帰ってきたころに城が落ちている可能性もあるが・・・・・・まぁ、ムーカスにはどうでもよかった。


 何しろあんな愚王が治める国はどうせ滅亡しかないだろうし、この天空城に関して知る前は国外逃亡の算段も企てていたのだ。



 何にせよ、これだけの軍隊を引き連れていれば、万が一にも天空城に罠が仕掛けられていたとしても、数の暴力で押し切って手に入れられるはずである。


(・・・・・それに、こんな奴らは宝で目をくらませていればいいからな)



 宝の山の話で目がくらむところで、それ以上の価値が天空城にあることを察せない軍隊に、ムーカスは嘲笑を浮かべる。


 そう、精々彼が天空城の全権を掌握するための捨て駒に過ぎない存在だと思っているのだ。



「しかし最高指揮官殿、本当に天空城なんてものは存在するのでしょうか?」


 と、そう考えていたところで兵士の一人がそう声をかけてきた。


「間違いない。その存在を示す物がこれだ」


 そう言い、ムーカスは懐から小さな石のような物を取り出した。



 一見、ただの石のように見えるだろう。


 だがしかし、その石の表面をよく見るとありえないほど精密なラインに沿って複雑な模様が描かれていたのである。


 その芸術とも言える美しい模様に、質問してきた兵士が驚く。


「こ、これは・・・なんて緻密なんでしょうか」

「少なくとも、ここまで細かな芸術作品といえるような模様は現在の技術では不可能だ。何しろより細かく調べてみると、内部にはさらに細かな模様が掛かれた金属片のようなものがあり、しかもどれもが常に(・・)変化し続けて(・・・・・・)いる(・・)のだ」

「常に模様が変わって!?でもこれは石なのでは・・・・・」

「そう、ありえない話だが、なぜかずっとその内部も一緒に動いている。何の目的で作られたかについては不明(・・)だが、これが証拠となりうるのだ」


・・・・・・実は、その石の使用方法についてある程度までなら文献でムーカスは知っていた。


 とはいえ、使う機会はそうないし、精々天空城の存在の証拠程度にしか扱っていなかった。







 そうこうしているうちに、目的地の森に彼らは到着した。


 大勢の軍隊を引き連れている時点ですでに領内侵犯などがあり、バレれば戦争になる可能性もあるのだが・・・・・それはどうでもよかった。


 ムーカスは、ただ自分だけがあの天空城を手に入れられれば良かったからである。






 森の奥地へ行くと、遺跡のようなものを彼らは発見した。


「おお、間違いない!!ここが天空城への入り口なのだ!!」


 歓喜し、遺跡へ足を踏み入れようとした瞬間であった。



ヴィ―ッツ!!ヴィ―ッツ!!ヴィ―ッツ!!ヴィ―ッツ!!

「!?」


 突如として、何処からか異音が鳴り響いた。


『警告、天空城が貴方達に対して拒絶反応を示しました。速やかにこの場からの退出を望みます』


 その異音に続けて、そのような声が聞こえた。


「な!?なぜ我々が拒絶されるのだ!!」


 その声の主が分からないが、とりあえずそう叫ぶしかないムーカス。


 その言葉に、その声の主は応答した。


『・・・・・・現在、天空城は主が決まっています。その主によってあなた方は観察されており、危害を加える可能性が極めて高いがゆえに、閉鎖されたのです』



 どこか静かに、そして拒絶した返答に、ムーカスたちはあっけにとられた。


 ここで意気揚々と天空城内に入るつもりだったのに、あっという間に出鼻をくじかれてしまったからである。


「ば、馬鹿を言うな!!天空城に関する文献を見つけ、解読できたのはこのわたししかいないはずなんだぞ!!」

『では、その文献の詳細を解読していますか?「先着1名様」という条件があり、それに解読できるのはあなた以外にもいるんですよ?』


 ムーカスの叫びに、何処か嘲笑じみた声が返答されるのであった。




―――――――――――――――

SIDEリュー


『さてと、これで相手がどう出ますかネ』

「いやワゼ、お前言葉の最後の発音をまともにできたのかよ」

『いえ、少々編集して送っていますので、まともに聞こえるだけデス』


 ちょうどそのころ、天空城の操縦室兼監視部屋では、リューたちは地上のムーカスたちの様子を見ながら話していた。


 

 なにやら軍隊の様なものたちが銛に侵入したので、天空城を元の場所へ動かし、ワゼがフル稼働して情報を収集したのだが、どうもあれはダッツーレラウ王国の者たちらしい。


 噂では、その国は現在色々と愚王というべき人の失策などが原因で反乱とかが起きる可能性があり、難民とかが来る可能性もあるので周辺諸国が対応策を出しているそうなのだが・・・・・まさか、天空城を狙ってやってくるとは思わなかった。



『あの最高指揮官とか言う、茶髪のサングラス男がムーカス=ゴンザレスとか言う方のようデス。名前に「=」があって「・」ではないのは、地域ごとの名前の基準が違うからだそうです』


 言われてみれば、確かに「○○・○○・○○」といった名前がこの国では一般的なのだが、ダッツーレラウ王国では「ムーカス=ゴンザレス」と言うように名字や家名といった感じで名前を書くのが一般的らしい。



 まぁ、名前の書き方はどうでもいいとしてだ、軍隊を引き連れてというのは穏やかじゃないし、そもそもここはザウター王国内でもあるので、立派な領内侵犯を犯しているのだ。



 軍隊で来ているので戦争を吹っ掛けようとしているようにも受けとられるだろうしな。


 とっくの前に、ザウター王国のアレン国王にこの件についての書状を送ったが・・・・随時経過を送るのだが、おそらく今頃それを読み、嬉々としてダッツーレラウ王国に対してどう攻めてあげようか検討中であろう。


 少なくとも、内乱が起きそうな国なので何か要求するのではなく、精神的に攻めていくだろうけどね。




 とにもかくにも、今はこの天空城を彼らが狙っているそうなので、対応してみたが・・・・そう簡単に引き下がる気はない様だ。



『だがしかし!!我々は天空城を手に入れるために動いたのだ!!今の主とやらは偶然にして見つけ、簒奪した者に過ぎないのではないか!そう、我々こそが正当に天空城を受け取れるはずだ!!』


 モニターを介して聞こえる言葉に、リューは思わず苦笑する。


「いやこれもう、明らかに無茶苦茶というか、問答無用で無理やり押し入ろうとしているようにしか思えないな」

【あれはひどいというか、バカみたいですよね】


 リューの言葉に対して、天空城内で自分の部屋を改造していたらしいハクロが室内に入ってきて、ワゼが渡した水を飲みながら同じように苦笑した。


 気が付けば、ファイたちも入室してきており、皆余りの相手の喜劇のようなひどさに苦笑を漏らしているようだ。


【屁理屈をごねているというか、諦めが悪いカナ】

「あれはないですわね。なんというか、馬鹿ですわね」

「というか、その言葉しか出ない我々の語彙力もひどいが・・・・・まぁ、そうとしか言いようがないな」

【ピキッツ、なんというか頑固?】

【いや、ああいうのは屁理屈ごねごね諦め悪い阿呆大将というのが正しいのだよ】

「どんな言い方だよそれ」



 まぁ、今のところ相手側が入る手段はないけど・・・・・うっとおしいな。


「良し、せっかくだし一発ポンっとやってみてくれワゼ」

『了解』


 この天空城を色々と調べてみるとやばい兵器も多くあったのだが、中には非殺傷兵器もとい肉体的な死をもたらさないだけのネタ兵器もあったのだが、それを稼働させて追い払うことにした。



 ワゼが下の方の軍勢へ向けて、声が聞こえるようにスピーカーを調整しつつ、マイクを手に取る。


 なお、念のために声を編集してお送りしているので身バレもそうないだろう。



『・・・・そこまで屁理屈をこねるのであれば、この天空城の主に対して敵対したとみなす。すぐさま命を奪う気はないのだが、ここまで来た愚か者の見本として心に恐怖を刻み込もう!!さぁ、見せてやろう、無限稼働天空城ピュタラーラのもつ一撃を!』


 ノリノリだなワゼ。というか、そのセリフ下手したら後で直さないといろいろやばいような。



 そうこうしているうちに、ワゼがその兵器の稼働ボタンを押した。



ドンガラガッシャァァァァァン!!

『『『『『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?』』』』』



 その瞬間、見ていた軍隊の真ん中に大きな雷が落ちた。


・・・・・・とはいえ、これは本当に非殺傷兵器。今の一撃で命を落とす奴はいないだろう。


 ただし、「社会的な」死はあるけどな。



『なぁぁぁぁぁ!?』

『なんじゃこりゃあぁぁぁ!?』

『なんでなんでなんでこうなるんだ!?』


 雷の後、煙がはれて広がった光景に、直撃を受けていた兵士たちは叫ぶ。


 その光景を見て、思わずリューたちは爆笑した。



 何しろ直撃を受けた兵士たち全員が、それぞれ物凄くおマヌケな状態になって、その場から動けなくなったのだ。



 髪の毛を落ち武者のようにされていたり、清々しく全身脱毛されていたり、むしろ毛が増えて特大アフロになっていたり、鼻眼鏡をかけさせられていたり、福笑いで失敗した顔のように変わっていたり、着ている服が兵士の鎧からピエロなどが着るような服装に代わっていたりと、様々な変化が起きていて、見事なカオスになっていたのだ。



 今の兵器名は「ピュタラーラの雷(笑)」らしい。


―――――――――――――

「ピュタラーラの雷(笑)」

天空城のデザイン関連の設計者である慈愛魔王が考案し、まさか採用されるとは思ってもいなかった完全なネタ武器。

対象に直撃させるとその相手の来ている服装や髪形をランダムに面白おかしく変化させ、武器も防具も消失させ、相手の戦闘力を大幅に無くしてしまう恐るべき兵器。

一度の稼働で最大1000人まで対象にすることができて、軍隊を無力化させてしまう事もある。

―――――――――――――――


 誰の命も奪わずかつ無力化し、そして周囲をカオスにして笑いをもたらす恐るべき兵器である。


 使ってみたのはいいけれども・・・・・恐るべき破壊力であった。主に腹に。笑い過ぎてお腹痛い・・・



 うん、敵味方関係なくダメージを与えるというか、非常に危険な武器である。


 命を奪わないとはいえ・・・・社会的な死をもたらすであろう。




 この攻撃に対して、兵士たちはものすごく動揺し、我先にと逃げ出そうとする。


『いやだぁぁぁl!!俺はあんなみじめなことになりたくねぇぇぇ!!』

『笑えるけど、アレを自分が受けたらと思うと逃れたいよぉぉぉぉ!!』

『宝が何だ!!人としての尊厳を捨ててまで欲しくねぇぇぇぇぇぇ!!』


 それぞれ叫び、攻撃の悲惨さを理解して逃げようとしたが・・・・そうは問屋が卸さない。


『第2波、3波、続けて発射』


ドンガラガッシャァァァァァン!!ドンガラガッシャァァァァァン!!



 無慈悲にもワゼは続けて狙いを定めて撃ち、数分もしないうちに全員が悲惨な姿にされたのであった。



『ぐぬぬぬぬう、何で横暴な奴が天空城の主になっているんだ!!』


「・・・・あ、ムーカスとかいうやつだっけ。まだこいつ残っていたのか」


 何か聞こえたと思ったら、最高指揮官だったムーカスとか言う男が立って叫んでいた。


 彼もまたこの攻撃を受け、見事なボンバーヘッドになっているようだ。



『こうなればわたしのものにしたかったが・・・・まとめて消え去ってしまえ!!』


 と、なにやら懐から小さな石のような物を取り出し、天高く掲げる。


『これが自爆用の鍵だという事を文献で知っているのだ!!特定のワードで発動し、その自爆の恐怖を味わってしまえ!!えっと・・・「3分間待ってやる!!・・・・・・バ〇ス!!」』






‥‥‥まさかそうでるとは思わなかった。


 そのムーカスの言葉を受け、自爆用の鍵だとか言う石が輝き・・・・・・すぐに収まった。


『あ、あれ?なぜだ!?』


 ただ光っただけで、何も起きなかったことにムーカスは驚いた。


『あー、生憎様ですが、それだけでは自爆しません』

『なにぃ!?』


 あまりに滑稽という状態を見て、ワゼが告げた。


『確かにそれは自爆了承用の鍵ですが、それはこの天空城内に入って、なおかつ3人は必要で、互いに了承しあっていないと発動しません。この城の創造者の拘りでして、それだけですと輝いて終わりです』



 ワゼの説明を受け、信じられないという表情をしたのち、ムーカスは膝をついてがっくりとした。


 仕返しというか、せめて手に入らないなら無くしてしまおうと思ったようだが・・・・・・無駄である。



『とはいえ、敵対し、なおかつ自爆させようとしたことで貴方にはもっとも重い一撃を与えましょう』

『な、何をする気だ!!』



 ワゼがボタンを押すと、地面から機械のアームのようなモノが多く飛び出て、ムーカスを押さえつける。


 そして、彼の頭を固定し、しっかりと瞼を開けさせ、目を全開にさせる。


『・・・・・では、お決まりというか、きついやつを行いましょう』


 そうワゼがいいながら、別のレバーを動かすと、今度は別のアームが出てきて、柑橘系の果物を持っていた。


 皮をむき、中身は回収して、その皮をムーカスの目の位置にセットする。



『・・・・まさか!?』


 これから何が起きるのかを予想し、ムーカスは顔を青くした。


 逃げようにも固定され、目をつぶろうにもパッチリ見開かされているのでどうしようもない。



『では、いきますよ・・・・・・バ〇ス!!』


 ワゼがそう言い、操作した次の瞬間、アームがその皮を思いっきり曲げる。


 そして、その勢いで出された皮の汁がムーカスの目に入った。


ブシュッツ!!

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁぁぁっ!!』

『それそれそれそれっと』


ブシュッツ!! ブシュッツ!! ブシュッツ!!

『ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



 みかんの皮の汁が目に入ると痛いのと同様に、あれは相当きつい。


 しかも、叫び終わる前に続けてワゼは繰り返し操作し、続けて投入した。


 楽しんでいるというか、普段の憂さ晴らしをしていないか?今度ゆっくり休ませてあげるべきかな?



・・・・・・数十分後、リューたちから連絡を受けてやって来た辺境伯爵たちが見たのは、地面に倒れ込んで絶望しているダッツーレラウ王国軍の兵士たちと、ひたすら柑橘系の汁を浴びせられて気絶しているムーカスであった。





とりあえず、撃退(?)し、天空城を守り抜いたリューたち。

ダッツーレラウ王国軍の兵士たちには甚大な心の傷を与えたような気もするけど関係ない。

さてと、この事実を知ったダッツーレラウ王国はどう出るのだろうか?

次回に続く!


・・・・・「目に汁をぶしゅっと」の元ネタは某カエル軍曹のアニメにあった話だったりする。

「にしても、あれ後々失明するのでは?」

『アフターケアとして、目薬を途中で混ぜていますから大丈夫デスヨ。多分』

【いま不穏な文字が聞こえたような・・・・・】

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