肝心なところで抜けてしまう
全部完璧な人はいないのだ。
なにかしらのやらかしは不可避なのである…‥‥
SIDEリュー
エレベータのように変化した石柱に入り、待つこと数秒ほどですぐに扉が開いた。
そして、その外の光景を見て、リューは思わず叫んだ。
「広すぎるだろこれ!?」
そこにあったのは、物凄くだだっ広い草原であった。
金色の草が生い茂り、まるで金色の草原である。
・・・・・ここはおそらくあの下から見えていた物体の上なのだろうが、それにしては想像以上に広い。
『えっと、文献によるとこちら側の方に地図があるはずデス』
「地図?」
『なんでも、全体的にあまりにも広すぎるがゆえに、迷子にならぬよう各所に置かれているそうデス』
迷うのであれば、そこまで広くしなくてもよかったんじゃないだろうか?
そう皆が思いつつも、ワゼが記録をした手帳を見ながら案内して、見つけたのは大きな掲示板のようなものであった。
見れば、この場所についての地図と現在地が記されているようだ。
「えっと、現在地は『A-1階層:金色草原』か」
【そのままというか、ネーミングセンスないですよね】
言ってやるなよハクロ。
【というか、『A-1階層』なら他にもあるのカナ?】
【あ、ここに細かな物があるよーピキッツ】
【えっと、A~Zの26のフロア分けと、1~10までの階層があるようですから、26×10で、およそ260ほどあるのだよ】
かなり多いようだけど・・・・・・そんなにあるのかこの場所は。
『えっと、文献で探る限り目的のフロアはその最終階層・・・・・「Z-10階層」のようですネ』
「その目的のフロアって何があるんだよ?ココでも十分すごいけどさ」
『見てみれば多分わかりますヨ。まぁ、調査段階で分かっている範囲までしかできないので、説明できないというのがありますガ・・・・』
ちょっと不安になりつつも、その目的のフロアを地図から探す。
「えっと、道順が・・・・」
【右言って300m先で左、その先真っ直ぐ階段へ、そこから45度左へ・・・・】
『あ、一目見ただけで記録できましたので大丈夫デス』
相も変わらず超人的なメイドゴーレムなワゼであった。というか、これ一目見て全部記憶できるのか‥‥‥すごいな。
そのまま進み、階段を下ったり、なぜかある滝を登ったり、岩山を砕いて進んだり、水中に潜ったり、燃え盛る火山の中を進んだり、猛吹雪の中を進んだり・・・・・・いや本当になんだよここ。
ありとあらゆる自然の驚異が多いし、もはやダンジョンとか言っても過言じゃないな。
そうこうしているうちに、苦労してようやくたどり着いたのは大きな門の前であった。
デザイン的にはなんというか・・・・・・あれだな。
確実に転生者が作ったと言うべき証拠というか、前世の地球の大昔の・・・・・ローマだっけ?そこのロダンという人が作った地獄の門に似ていた。
そこはどこ〇もドア的なデザインが欲しかったのだが、ありきたりなのでわざわざ凝ったものにしたのだろうか?
もしくは、中二病をこじらせてこちらの方がかっこいいと考えたのではないだろうか?
・・・・・・後者かな?何しろあちこちのフロアの説明がわざわざ無理やりな当て字を入れていたりしたもん。
『この扉の先に、この場所の需要部分があるはずデス』
そうワゼがいうと、扉を開けた。
その先にあったのは、この世界では見ることがなかった近未来的な施設である。
あちこちにメーターやらレバーやら、ボタンやスクリーンとハイテクさを感じさせた。
『‥‥機械魔王様よりも前の魔王による作品ですネ。67%ほどが無駄だと分析できますし、デザインを考えてわざわざ無駄な分を作ったのでしょウ』
うん、やっぱりここを作ったやつって転生者で、そのうえ中二病をこじらせた人か、ディティールにこだわる人で間違いないだろう。
奥の方へ進むと何やら某狸モドキロボが使うタイ〇マシンのようなものがあったけど…‥‥どうやらこれがここのすべてを管理する機械らしい。
ワゼがその前部にある椅子に座りこみ、手帳を見ながらカタカタとセットされていたキーボードに何かを打ち込んでいく。
『えっと、これで大体の電源やプログラムが修復されたようですし、あとはパスワードを打ち込めば、ここの全権を確保できマス』
「パスワードを打ち込むだけって・・・・・打たないの?」
『・・・・・・肝心な事というべきか、それを調べるの忘れていましタ☆』
てへっと、らしくもない失敗をごまかすようにそう告げたワゼに対して、リューたちはずっこけた。
まさかの重要そうなところで、肝心なところが抜けていたようであった。
『パスワードの解析にはおよそ3日はかかりますね・・・・・』
「むしろ3日で済むのがすごいような気がするのだが・・・・・」
ここまで大きな施設というべきか、遺跡とでもいうべき様な場所の、そのすべてをつかさどるらしいところの解析を3日で終える技術力はすごい。
『まぁ、機械魔王様が考えた難解な暗号文よりはマシですヨ。あれはもはや人では読解不可能なものでしたからネ』
そう言いながら、ワゼは遠い目になった。
・・・・・・相当苦労していたのだろうか。考えてみれば、このメンバーの中でかなりの作業をしているようだし、お疲れ様である。
とにもかくにも、解析が終わり、パスワードを打ち込んで全容が明らかになるまでまだ少しだけ時間がかかりそうなのであった‥‥‥
―――――――――――
SIDEとある国
・・・・・・ちょうどその頃、ある国では大昔の文献が見つかっていた。
それは今でこそ解読不可能な古代文字のようなもので書かれていたが、偶然にもそれを読めた者がいたのである。
そして、その文献を解読し、その者は何が書かれているのかを理解し、野望を抱いた。
「これが本当ならば、世界を手中に収めることができるかもしれん!!」
ぐっと握りこぶしを固め、野望のためにその者は動き始めるのであった‥‥‥
パスワードの解析が終了し、ついに今いるその場の全容をリューたちは目のあたりにする。
一方、とある国では文献を解読し、己の野望のために動く者たちが出てきた。
果たして、この両者がぶつかり合う時が来てしまうのだろうか。
次回に続く!!
『それにしても解析中ですが、これを考えた人相当ひねくれていますネ』
「というと?」
『わざわざ「0」と「0」、「し」と「6」、「2」と「Z」などのように、パッと見ただけでは見間違えやすいようなものばかりでパスワードを構成しているようなんですヨ』
「び、微妙なところだな・・・・・(というか、いまさりげなく発音おかしいのがあったような)」
『他にも「l」と「1」、「U」と「V」、「8」と「g」なんてものもありますし、めんどくさいことこの上ないデス!』
「・・・・・まぁ、頑張れワゼ」
見間違いのしやすいようなものばかりそろえるなんて、この場所を作った人は相当用心深いかそれとも後世に解読する人を困らせようと企んだのかもしれない。
・・・・・後者だろうな。




