閑話 とある大馬鹿野郎について思う
・・・・・・大蛇化毒の事件から3カ月が経過した。
結局、あの解毒剤以降は何度改良してもエルフの長ルーンにはまったく効力を発揮せず、完全にモンスターの『ラミア』として、種族を変えたきりとなってしまった。
いや、元がエルフで上半身がその特徴を残したままだから『ラミアエルフ』とでもいうべきなのだろうか。
何にせよ、リューたちの依頼は失敗扱いとなり、ルーンはリューたちに同行することになった。
今さらエルフの長としてもう一度立とうにも、ラミアエルフと化してしまったので、もはやふさわしくないと辞退し、その状態となった責任を取ってほしいという半ば押しかけの形で、リューたちの仲間として加わったのである。
そんなことがありつつも、今日は依頼を受けずに休息日にしようという事で、自由行動をリューたちはそれぞれ取っていた。
その最中、ふと、リューはあの都市での毒をばらまいた犯人の手記を読み返していた。
内容的にどうもリュー同様転生者のようであり、恐るべき馬鹿でもあったようだが、薬剤師としては天才的な人物だったのであろう。
他に書かれていた薬剤のメモをファイたちが分析し、その結果それらすべては革新的なものが多かったのである。
「天才と馬鹿は紙一重って言う事か・・・・・」
この手記を書き、そしてあの大蛇化を引き起こした毒を創り出した人物は、そんなくだらない事を考えずに、真面目に薬師として働けば大成したのではないだろうか。
「そう考えると、かなり惜しい人物だったのかもなぁ」
「いや、それはないだろう」
ぽつりとつぶやいたリューに、ツッコミが入った。
「ん?ルーン…さんか」
「別にさん付けしなくてもいいが・・・・・とにもかくにも、こちらが迷惑をこうむった元凶が惜しいとは言えないのではないだろうか?」
なかなか鋭い指摘である。
元エルフの長だけど、今は既に従魔扱い。
・・・・・・これって人身的な倫理だとどうなのだろうか。
いや、ハクロたちを使役している時点ですでに問題はないな。
「まぁ、そう言えるかもしれないけどさ・・・・他にもある薬品は一応役に立つものばかりぢゃお」
そうリューはいい、ルーンにその内容を見せた。
他に案として出されていた薬品としては、「真・育毛剤」、「リラックスアロマ」、「副作用無しの筋力増強剤」、「魔力回復能力増加剤」等、用途を考えればどれも役には立つだろう。」
「でも、やっぱり馬鹿ゆえのいたずらグッズもあるようだぞ」
半目になってルーンが指さしたのは、「円形脱毛剤」、「足の小指だけ感度増幅剤」、「自らバナナへ向けて突っ込む興奮剤」、「ドアを閉めようとして親指を挟んでしまう誘導剤」等・・・・確かに、くだらないものでもある。
というか、ピンポイントで嫌なものばかりじゃないかこれ?しかも、薬の力で自然に誘導しているようにするとか・・・・
「・・・・・うん、前言撤回。やっぱりこの薬を考えたやつ馬鹿だわ」
「これどっちかといえば拷問官とかになっていたほうがよかったのではないだろうか?基本毒薬が多いし、そっちの道でなら日の光が当たらずとも有名になっていただろうよ」
呆れつつも、中にはまずい薬もあったので、リューたちは読み終えた後その手記を廃棄することにしたのであった。
ワゼが記録しているから調合法は分かるし、それに日記のような物でもあったから物凄くくだらない事ばかりも書かれていたからね‥‥‥転生者っぽいけど、縁がなかったし、記憶の彼方でも追いやっておくか。
・・・・・にしても、本当になんというかくだらない内容でもあったかな。
次回は騒動含め、少々のんびりいきましょうかね。
次回に続く!!
忘れがちな事もきちんとやっておかないと後々めんどくさいことになるしねぇ・・・・・




