まぁ、完璧なやつがいない手本か
そういえば、盗賊戦とかってまともにやったことが無いような
SIDEとある盗賊たち
…‥‥都市ハブリタインの近くにある鉄橋から離れた山中、そこにある洞窟内では今、そこをたまり場にしていた盗賊たちが必死の戦闘を繰り広げていた。
「くそう!!なんでこんなところに襲撃をかけるやつがいるんだよ!!」
「知るか馬鹿!!今はとりあえず何と撃退をし、」
【チェストォォォォォォ!!でござる】
ごっつ!!
「ぶめもげらぁぁぁぁ!?」
「あ、兄貴ぃぃぃい!!」
掛け声を上げて突撃した謎の人物によってたたきつけられた大剣により、盗賊の一人が綺麗なクの形で直撃を受け吹っ飛ばされ、そのまま地面を数度バウンドし、痙攣してそのまま動かなくなる。
「な、なんだよこいつらはぁぁぁぁぁぁ!!」
涙を流し、絶叫する盗賊の一人。
その言葉に返答する者はおらず、気が付けば目の前に黒い大きな拳が迫ってきているのが、彼が見た最後の光景であった‥‥‥‥
―――――――――――――――
SIDEリュー
「‥‥‥よし、これで全員か」
洞窟内に潜んでいた盗賊共をハクロお手製の縄でヴィクトリアと共に厳重に縛り上げ、リューは確認をとる。
「ピポ、ファイ、そっちはどうだ?」
【全滅したピキッツ!】
【氷漬けにもしたが、まぁ無事に捕獲完了カナ】
「ラン、ワゼは?」
【こっちも大丈夫なのだよ。みんな夢の世界へ旅立ったのだよ】
『金的もして、あぶくを拭いて気絶している方もいますが、これで全部かと思われマス』
「えっと…‥後は、『ルピナス』!お前はどうだ?」
【ふっ、全部なぎ倒したでござる!!】
どやぁっと言いたげな声で、鎧を着たモンスター‥‥‥ルピナスはそう答えた。
この鉄橋の怪物のどさくさに紛れて活動していたらしい盗賊団を討伐する前に、一旦仮契約として従魔になってもらったのだが‥‥‥へっぽこなところがあったとはいえ、案外よかったようである。
ちなみに名前の由来の「ルピナス」というのは前世の地球にある花で、色は紫などあり、花言葉が「想像力」や「いつも幸せ」など…‥‥へっぽこな人っていつも幸せそうだなと思って、付けたのである。
まぁ、脳内いつも年中お花畑の馬鹿とは違う花畑という事なのだが‥‥‥ちょっとややこしいかな?
モンスターになってから長い年月が経過したせいか、元々塗ってあったらしい毒は全て無くなってしまったそうだが、それでもその武器や鎧の頑丈さは強敵。
・・・・というか、大剣を武器として扱っているようだけど、その用途が「切り裂く」ではなく「たたきつける」という刃物から鈍器目的で使用しているようだ。
しかも、種族的にはデュラハンに近いようで、それなりに振り回す様子はさまになっているだろう。
『…‥あ、思い出しましタ。あれはデュラハンではなく、「ゴーストナイツ」と呼ばれる種族の方が正しいはずデス』
ふと、ワゼが思い出したかのようにそう口にした。
―――――――――――――――――
『ゴーストナイツ』
その名の通り、鎧を着た亡霊のようなモンスター。深い恨みや、何かしらの怨念を持っているか、もしくは自身の死に執着がなさすぎて気が付けばモンスターと化していたかなど、様々な要因で生まれるアンデッド系のモンスターである。
能力としては周囲を靄で覆い隠して襲撃したり、とんでもなくタフで体力だけで見れば全モンスターの中でもドラゴンに匹敵するほどである。
ただし、死後になった場合は生前の能力が影響するようであり、弱ければ弱いモンスター、強ければ強いモンスターと、その強弱は定まっていない。
ちなみに、全部のゴーストナイツで共通している点の中には、その着ている鎧の重量が合計1tを超えていることである。
――――――――――――――
…‥そりゃ、力魔法でちょっと重さを倍増させれば潰れかけるよな。
例えば単純に2倍の重さにする魔法を使用したとして、1kgを2倍の2kgにする場合と、1tを2倍の2tにする場合じゃ、差がでかいからね。
それを考えると、某RPGのバイ〇ルトなどの強化魔法の効果が見合っていないような事もあるのだが…‥‥それはそれ、これはこれであろうか。
とにもかくにも、これで鉄橋の怪物を語っていた盗賊団は全員捕縛完了である。
全員完全に気絶して意識を失ってもらい、輸送する際に暴れないように厳重に手足も縛り、武器も奪ってある。
若干、十数名ほど全身骨折や急所付きによる攻撃での痙攣を引き起こしていたが…‥‥まぁ、犯罪者だし問題ないか。
それを考えると、ランに眠らされた奴らの方が一番幸せな捕縛をされたのだろうか‥‥‥いや、目を覚ませば捕まっているし、幸せでもないな。
ついでに、この洞窟内に盗賊たちが蓄えたらしい物品の数々があったのでそれらもついでに回収。
この場合、盗賊討伐者がそれらを受け取る権利があるそうだが、別に必要なものもないのだが、元の持ち主が分かる物は返品し、余りは売却して活動資金にするのがいいだろう。
・・・・・・まぁ、中には違法な品々があったのでこちらは別案件で捜査してもらったほうが良いだろうな。
ワゼに情報を調べてもらって、近いうちにそれらを扱っていたところは逮捕されるであろう。
これでここにいた盗賊たちは完全に終わり、鉄橋の怪物の噂に乗っていた奴らとして突き出せば・・・・‥ルピナスの身代わりとして、代わりに処分されるはずである。
「あとは説明時に、この周囲をうろついていたモンスターで、前衛として優秀そうだから従魔にしたとか言えばごまかしがきくかな?」
『それで大体いと思われマス』
ワゼに尋ね、ギルドへ向かうリューたち。
とにもかくにも、これで今回の依頼は完了であろう。
ついでに新たな従魔も手に入れたし、中々実入りはいい方だろうな…
「と、そういえばルピナス。お前のその鎧色々と汚れているし、洗浄したほうが良いんじゃないか?」
ふと、長い年月を過ごしていたそうで少々汚れている鎧を着たルピナスにリューはそう尋ねた。
【いや、この鎧をあまり脱ぎたくないというか…‥こう、アイデンティティが失われそうで嫌なのでござる】
リューの問いかけに対して、首を横に振って拒否するルピナス。
まぁ、中身がどうなっているのか見ていないけど、確かに鎧が特徴的なモンスターだから、それを脱いだら特徴が無くなりそうだよな‥‥‥
『ですが、痛んでいる個所もあるので修理をしたほうが良いと思われマス』
拒否するルピナスに対して、ワゼはそう言った。
【でも…‥拙者はほぼ鎧を着ている方が安心ゆえにそうたやすく脱ぎたくはないでござるよ】
『そうですカ。…‥あ、だったらちょっと手を両方とも上にあげてくだサイ』
「?」
ワゼのその指示に首を傾げつつ、ルピナスは両手を上にあげた。
その瞬間、ワゼの目がきらりと光る。
『そいヤッツ!!』
ワゼの腕が素早く動き、鎧の腰から上の部分をつかんで一気に上に引き上げる。
さながら子供の着替えを手伝うかのように、ルピナスの鎧を脱がしたのだ。
・・・・鎧ってそんな単純に脱げるようにはなっていないはずなのだが、目にもとまらぬ速さで脱がせられるようにしたようで、しかも兜もまとめて奪ったのでルピナスの上半身があらわになる。
【…‥‥ほへ?】
あまりにも素早すぎる動きに、気が付くまで時間がかかったのであろうか。
ルピナスがどこか驚いてぽかんとする声を出して固まる。
両手を上にあげたままの状態だが…‥‥その鎧の下はなんというか…‥
「鎧でも下に服を着ているはずだよな!?なんで着ていないんだよ!?」
まさかの素っ裸であった。
やや青白い肌とはいえ、沁み一つなく、綺麗な肌。
兜をかぶるせいか長髪が面倒なのか、鎧と一緒の紫色の短髪と瞳だが、整った顔立ちであり、その胸部は豊かな方であろう。
…‥というか、声の時点で大体予想できていたけど、ルピナスは女性でした。
数秒後、ようやくこの状態を理解したらしいルピナスは青白い肌から真っ赤なゆでガニのように赤くなり、慌てて前を隠す。
そしてそのままあぶくを拭いて、羞恥心のあまり彼女は気絶したのであった。
ルピナスは女騎士であった。
それなのに、軽々と大剣を振り回し、かなりの重量の鎧を着ていたのが驚きである。
…‥まぁ、元人間の死体のようなものだし、死んで人間にある制限がなくなったと考えれば不思議でも無いかな?
次回に続く!
「‥‥‥」
【どうしたのですかヴィクトリアさん?】
「いえ、なんかこう、胸部的にね…‥」
その傍らで、どこかヴィクトリアが悲しそうな、うらやましそうな目でルピナスを見ていたのであった‥‥‥
「騎士って鎧が窮屈だから大きくないと思っていたけど‥‥‥むしろ押さえつけられるからそう見えないだけなのね…‥」
【なんかものすごい遠い目になっているカナ。大丈夫カナ?】