悲劇?喜劇?
本日2話目!!
とりあえず、鉄橋の怪物捕獲!!
SIDEリュー
「‥‥‥で、こいつの種族は何のか分かるか?」
『おそらくですが、「デュラハン」の類かと』
魔法を解除し、暴れないように縄で縛ってからリューは皆の下へ戻り、とりあえず捕獲した全身鎧のモンスターを見せ、種族の判断しをしていた。
何しろ、アンデッド系のモンスターらしいことは分かるのだが、この世界での種族分けはかなり面倒くさいものなのである
アンデッドのモンスターは自然発生することがあるのだが、中には元人間だったり、もしくはその怨念が魔石を核にしてモンスターとして生を得たりなどして、ややこしいことになっているのである。
ワゼに推測してもらったデュラハンも、その分類はこの世界だとややこしい。
頭と体に分離、そもそも頭がない、セットとして首なしの馬が付いているなど、一口にデュラハンと言ってもいろいろあるのだ。
こういう時は、本人に直接聞いてみたほうが早いと思うのだが…‥
【いやぁ、拙者全然自分の種族話わからぬでござるよ。何しろ気が付いたらこうなっていたからでござるからな】
…‥ポンコツであった。これ、手を縛ってなかったら頭をかいていたのだろうか。
【なんかこう、創造していた怪物と違いますよね。なんか全体的にドアホですよ】
「それ、ハクロが言ったらお終いなんじゃ‥‥‥」
【どういう意味ですかリュー様!?】
ハクロのツッコミは受け流しておいて、とにもかくにも鉄橋の怪物はここに捕えた。
「…‥で、こうして捕えたのは良いけどさ、そもそも何でお前はこの鉄橋で人を襲って武器を奪っていたんだ?というか、お前は何者だ?」
とりあえず、放っておきそうになった本題へ移し、リューはその鎧のモンスターに尋ねた。
【‥‥‥さぁ?本能のままに拙者は動いていて、そうしているとなんとなく武器を奪い、そして破壊せよという感じがして、いつしかこの行為を繰り返していたのでござる。というか、何者かと言われても、気が付いたらこうなっていたという事で、過去のことなど覚えてないでござる!!】
兜をかぶっているせいで顔は見えないが、おそらくどや顔であろう。
うん、殴りたくなった。
「本能って‥‥‥アンデッドは確かに本能に最も忠実なモンスターらしいけどさ、武器を奪って破壊が本能としたら、お前本当に何なんだよ?」
アンデッドのモンスターは人間だったものがいるようで、死後にモンスターになると倫理観とかが吹き飛び、三大欲求やその他強く考えていたことなどに従う事があるらしい。
このござる口調の奴もどうやら元人間でもあったようで、生前の欲求故か武器の収集及び破壊をやらかしていたのだとか。
『武器の破壊…‥ああ、今ちょっと思い出しましたネ』
話を聞き、ふとワゼがそうつぶやいた。
「何かわかったのか?」
『ええ、おそらくなのですが…‥‥』
‥‥‥ワゼはこのメンバーの中で、いつも情報収集を行っている。
その情報の中で、引っかかる物があったようだ。
『数十年前、先ほどの鉄橋が作られるよりも前に、この鉄橋があった地の周辺には盗賊団が住み着いていたそうで‥‥‥』
…‥‥それはかなり大昔の話。
まだまだこの辺りが未開の地域だった頃、この地域一帯にはとある大規模な盗賊団がよく乱立していた。
誰かが頭領となり、まとめて盗賊団として人々を襲い、そして仲間の裏切りで殺されてなり替わられ、また同じことを繰り返し、何度も何度も盗賊団が出来ては潰れの繰り返しだったそうだ。
その事に対処しようと、その地域周辺にあった国々がこの際大規模な討伐を行うためにそれぞれの騎士たちを派遣し、一斉に襲撃をかけたそうである。
もちろん、盗賊団も黙ってはいない。
今まで襲撃をかけて奪ってきた武器もたくさん蓄えており、物凄い籠城戦となり、そのうち武器の奪い合い、破壊しあいとなったそうである。
『その中でも、一番目立ったのが「ポイズンナイトズ」という、武器に毒を塗った騎士団だったそうです』
その騎士団はとある国から派遣されて騎士団であり、持っている装備品がすべて猛毒でコーティングされ、毒殺をする一団としても敵味方から恐れられたそうだ。
まぁ、その騎士団を派遣した国は現在は既に滅び、別の国が栄えているそうだが…‥‥
とにもかくにも、それだけの毒を扱う騎士団は敵味方には恐れられ、孤独に近かった。
けれども、一生懸命盗賊団の殲滅を目指し、武器をもう二度と使用されないように相手の武器を奪っては破壊し、自分たちの武器も奪われないように非常に強い猛毒を塗っていたそうだ。
「へぇ…‥なんというか、特殊な騎士団みたいなものだったという事で良いのか」
【なるほど…‥となれば、この鎧の方もその騎士団の人だったという事でしょうか?】
武器を奪い、破壊するのが本能というのは曽於楽そこでの行為を繰り返して、唯一覚えてしまったことなのであろう。
紫色の鎧も、毒を誇示するために塗っていたと擦れば納得である。
【なるほど…‥生前の拙者たちはすごい者だったのでござるか】
自分の事のはずなのに、わからなかったらしい鎧のモンスターは話を聞き入っていた。
『でも、そんなある日その騎士団の一人が‥‥‥』
‥‥ポイズンナイトズとやらは、毒を扱っていたとはいえ、たいそう優秀な騎士団だったそうだ。
だがしかし、そんなある日彼らに、いや、おそらくこの鎧の騎士のモンスターの生前の人だけに、悲劇のような喜劇が起きたらしい。
『ぶった切ろうとした際に、転んで、そして起き上ろうとして剣を地面に刺した時、くしゃみをして自分の足に刺したようデス。足も鎧で覆われていましたが、切れ味がよかったのかそのまま貫通し、しかもその武器は毒がたっぷり塗っていましたので‥‥‥』
そのうえ、盗賊たちを討伐とはいえあくまで捕縛に近いような事のために、すぐに死ねないようなものすごく辛い毒を塗っていて、痛みと毒にその騎士はその場を悶えて転がったそうだ。
『そのうえ想わぬことに、そのころがった先に偶然にも盗賊たちの頭領やその幹部たちがいましたようで、死角からぶつかって見事にストライクしたようなのデス』
かっこーんと言ったのかは定かではないが、そのおかげで盗賊たちは一気に統率が乱れ、騎士たちが優勢となって押し返しに行こうとしたところで‥‥‥
『神のいたずらか、はたまたは偶然か…‥‥騎士たちの大将格の方々が一斉に転んで剣を投げて、その先に悶え転がっていた騎士がいて、見事に全身剣山になったようなのデス』
そのあまりにも悲惨な死にざまに、敵味方双方唖然として憐れんだそうだ。
盗賊たちの討伐後、その死んだ騎士はせめて丁寧に埋葬される予定であったはずなのだが…‥‥
そこでまさかの大雨。
しかも、当時でもまれな非常に強い豪雨が突如として襲い掛かり、その遺体が流されて行方不明になってしまったようなのである。
『結果として、今では「踏んだり蹴ったりな騎士」として童話に乗せられるようになったのだとカ』
話が終わり、リューたちは何とも言えないような悼まれない空気となった。
【そ、その死体がモンスターとなったのが‥‥‥拙者でござると?】
『おそらくそうかと』
あまりにもな死にざまに、唖然とする騎士の鎧のモンスター。
ほぼ確実にこのモンスターの生前なのだろうけど、余りにもひどい死にざまである。
「・・・・・・まぁ、なんだ、あれだ。生きていればいいことがあるよ」
【拙者既に死んでいるのでござるが!?いや、モンスターとして生きて…‥アンデッドだし結局死んでいるようなものでござるよね!?】
ぽんっと肩をたたいてリューは慰めたが、たいした慰めにもならなかったようである。
とにもかくにも、悲しい過去とでもいうべきか、それとも喜劇のような過去とでも言うようなことをリューたちは学んだのであった。
【うううううううううううう、拙者の過去であってほしくないでござるよ‥‥‥騎士たるもの、せめて主君を守るために身代わりとなって死んだほうが良いのに、そんな情けない死にざまは知りたくなかったでござるよぉぉぉぉぉ】
約一名に、物凄い深い心の傷を負わせたが…‥‥どうしよう、こいつ。
「なぁ、こいつどうすればいいんだろうか?」
【聞いているだけで、情けないというか、悲しい死にざまですよね】
【正直言って、このまま討伐はできないと思うピキッツ】
ハクロたちに聞いてみたが、良い解決方法はない、
この際討伐をしてやって、いっその事楽にと思ったが、既に一度死んでいる相手から、再び命を奪うのはどうなのだろうか、。
「‥‥‥お前はどうしたいんだ?」
とりあえず、生きるも死ぬもこの鎧のモンスター次第である。
一旦、リューは尋ねてみた。
【うううう‥‥‥ならばせめて、拙者は自ら首を斬り落とす自害を選ぶでござる。介錯を頼めないでござ、】
『あ、デュラハン系にあるモンスターならば、頭部をこれでもかという位潰さないと死なないそうデス』
【知りたくなかった拙者の自害方法!!その死に方は嫌でござる!】
ワゼの言葉に、西洋の騎鎧のような見た目なのにどこか日本の侍のようなモンスターが嘆く。
自分の死にざまにどうもこだわりがあるようだが、流石に潰されるのは嫌らしい。
【‥‥‥ならばお主、拙者の主へとなってほしいでござる!!】
自害が無理ならばせめて騎士らしくいこうと思ったのだろうか。
こちらに方向転換し、土下座のような体制で頼みこまれた。
「‥‥‥えっと、でも他の人々から武器を奪ったのは事実だよね?しかも、本能的とはいえ襲い、その上破壊もしたやつを従魔にしたら俺に批難が飛んでこないか?」
こういう場合、従魔にしたところで八百長を疑われたり、最悪の場合その責任を取って損害賠償を被害者たちから訴えられるような気がするのだが…‥‥
【それは大丈夫でござる。拙者の他にも同様の事をしていた奴がいたし、そっちをつき出せばいい話でござるよ!!】
「‥‥‥え?」
まさかのその発言に、リューたちは驚く。
どうやら鉄橋の怪物騒ぎに乗じて、この土地のどこにそんな惹きつけるものがあるのかは不明だが、同様の行為を行っている盗賊たちがいるそうなのだ。
つまり、鉄橋の怪物は2体、いや、片方は複数犯による犯行だったことが明らかになった。
「えっと、お前はそれを討伐しようとか考えなかったのか?」
【考えたことはあったでござるが、拙者は止められるまで本能のままに動き、別に気にしてもいなかったので放っていたでござるよ。あーはっはっはっはっはっ】
「笑っている場合かこのへっぽこ騎士はぁぁぁぁぁ!!『超重力弾』!!」
ズゥン!!
【ぐべもんがっつ!?】
‥‥‥馬鹿は死んでも治らないというが、まさにこいつがその証人となった。
とにもかくにも、このへっぽこを魔法で再度叩きのめした後、改めてその盗賊たちの下へリューたちは案内してもらうのであった。
「というか、何でその居場所とかが分かるんだ?」
【アンデッド故か、どうも生者の位置が分かるのでござるよ‥‥‥というか、先ほどからそちらの白い方が怖いでござる】
【え?なんで私が怖いんですか?】
「‥‥あ、ハクロはホーリアラクネ、つまり聖属性を持っているからか」
アンデッドが聖なる力に弱いのはテンプレとでもいうべきか。
というか、意外な能力をこのへっぽこは持っていたようである。
‥‥‥従魔にしてもいいかもしれないけど、名前はそのへっぽこさを表すものにしてやろうかな。
オマケの盗賊たちの下までの会話
【そういえば、その鎧の下どうなっているのでしょうか?あと素顔も気になりますね】
【あー‥‥いや、別に大したものではないでござる。生前の拙者の身体があって、靄のような服を着て、鎧をその上から着ている構造なのでござるよ】
『中身が腐っているわけではなさそうですが、どうもその鎧を洗浄したくなりますネ』
【これ脱いだら拙者のアイデンティティが無くなるでござるよ!!】
「大丈夫だ、お前のそのへっぽこさは誰にも負けていないからな」
【全然大丈夫に思えないのでござるが!?】
次回に続く!!




