テンションが上がった後に下がると、後悔することが多い。
寒くなってきた今日この頃。
朝起きるのが辛くなってくる事が悩みである。
SIDEリュー
さてと、決闘の開始の合図と共に、必死の形相で決闘を受けた者たちが襲い掛かって来た。
何しろ、相手が魔王となればとんでもないのかもしれない。
というか、この時点でようやく自分たちがどれだけド阿呆なことをしたのか理解出来たようで、かと言って降参したとしてももう後戻りが出来ないような状況だと思ったのであろう。
となれば、何としてでも俺を、魔王を倒さなければ確実に明るい未来は見えないので、ほぼ死に物狂いである。
「ふふふふふ、全力を出してかかってこい!!」
なんとなく魔王の衣の力を解放しているせいか、少々テンションが上がり、リューはそう叫んだのだが…‥‥
5分後。
…‥‥綺麗に全滅させました。
というか、大半が普通に気絶。数名ほどあぶくを拭いて痙攣して気絶。下半身が緩かったのか、色々と悲惨な気絶者もわずかながらにおり、無事に立っているものはリューしかいなかった。
「‥‥‥いや、ちょっと脆すぎるだろ!?こっちのやる気とさっきまでのテンションがすごい恥ずかしいんだが!!」
あまりの相手の手ごたえのなさすぎさと、あっけなさ、情けなさに思わずリューはそう叫んだ。
冷静になってみれば、先ほどまでの高揚がかなり恥ずかしい。
というか、本気でかかって来たのであろうかこいつらは?
そのリューの叫びを聞き、観客席にいた相手の親たちは顔を引きつらせた。
それぞれ各国の王族や貴族であり、一応そこそこの判断能力は持っている。
そして、その判断能力がまともだったがゆえに、今のリューがどれほどの実力者なのかよく理解してしまったのである。
ヴィクトリアに婚約を申し込んできて、決闘を受けた者たちはそこそこ戦える方であった。
そして、死に物狂いの超必死な感じで戦ったにもかかわらず、リューによってあっという間に全滅させられてしまったのである。
…‥‥本気で、敵に回してはいけない人を回してしまったのだという結論になり、飛び火が来ないように素早く切り捨てを決断するのはそう時間がかからないのであった。
全滅させたので、決闘終了の鐘の音がなり、続けて気絶から起こすために救護班とかいう人たちが出てきて、それぞれ気絶した一人一人に気付けをしたり、たたき起こしたりして、目を覚まさせていた。
中にはいろいろ漏れ出た人もいたのだが、まぁその人には誰も近寄らなかったので放置という決定になったのであろう。
ちなみに、事前にワゼに頼んでそれぞれの素行などを調査してもらった結果、日常的に阿保・馬鹿・まぬけ・屑な事をしている人ほど、悲惨な気絶になっているようである。
あれか、精神的にダメダメな人ほど悲惨な状態になるという事なのだろうか?
そして、気絶から覚めさせた後は、各自の親からの処分の言い渡しである。
「ここまでのバカ息子とは思わなんだ!!温情でまだ貴族籍は抜かないが、一生生きるギリギリの飼い殺しだ!!」
「はぁぁぁぁぁあ、本気で残念な子になってしまいましたね。明日から平民生活をどうぞ」
「この馬鹿たれがぁぁあ!領民たちから苦情が来ている分、今すぐに根性を叩き直させるために、一番厳しい部隊の一兵士として投げ込んでやるわぁ!!」
「よし、廃嫡決定。王太子の座?それはもう兄がついていたでしょうよ?」
「これでやっと、お前に対して苦情を入れてきた者たちの前に引き渡せるな。貴族の面目と言う物があるが、お前はもう一族の者からも排除したし、そんなものを気にせずに、しっかりとギッタギタにされて来い」
あちこちで罵声や怒号なども聞こえるが、どこか邪魔者を排除できてよかったというような空気もあるな。
「‥‥‥ワゼ、彼らってそんなにダメダメ集団だったのか?」
『調査によるとそのようデスネ。そもそも、婚約者がいる相手に対して、そんなことも考えずに押しかけてきている時点で十分その証明をしていマス』
言われてみればそうである。
とにもかくにも、少々物足りないような気もするが、これで何とか収まったであろう。
でも、処分を下したとはいえ、この国にそのまま残してもらうのはあまりヨロシクはないので、それぞれの国に帰還させてから、きちんと公の場でもう一度やってもらうようにリューたちはそう告げた。
そしたらあっさりとそれぞれ了承してくれたので、ついでにワゼが調査してくれたとある報告書もセットで渡しておいた。
「ん?・・・・・こ、これは!?」
「なんと!?あの馬鹿めこんなことをやらかしていたのかよ!?」
「ふははははは!!馬鹿を排除し、なおかつ手土産ももらえるとは来てよかった!!」
【リュー様、一体何を彼らに渡したのでしょうか?】
「ワゼに頼んで調べてもらってさ、あの親たちの周囲の人たちの不正やその他犯罪の証拠を渡したんだよ。これで恩も売りつけられるし、そのうちここまで情報を調べられるという収集能力とかに気が付いて、今後俺たちを敵に回そうとする考えを徹底的に浮かばないようにしたんだよね」
【なるほど、いわゆる保険というやつカナ】
「そういうこと。万が一にでもやらかそうとしたら、各自の細かい調査もしているから、一気にばらまくなんてこともできるからね」
これで相手側はいらない勢力とかを排除できるだろうし、こちら側は恩を売れるうえに、今後の保険ともなるので互いに利益を得ただろう。
決闘をただで受けるつもりはなかった。ここで決定的な証拠なども握れるという事を誇示しておいて、今後の憂いを無くすためにきちんとやっておきたかったのだ。
リューの真の狙いは、これであった。
決闘も終わり、これで完全にヴィクトリアがリューの婚約者であると他の国々の人達にも認めさせた。
処分を下された者たちは皆、土気色を通り越して真っ白に燃え尽きているけど、まぁ今後の生活は彼ら次第である。
まともになって生きようとするならば、何とかなるのかもしれない。
でも、一生変わらないまま愚者ならば、あっという間に悲惨な末路を辿ってしまうであろう。
「これでやっと認めさせたし、ようやく夢追い人として活動できるぞ!!」
「魔王という事が知れ渡りましたけど、今後どのような呼ばれ方になりますの?」
リューがガッツポーズを決めて喜んでいるところで、ヴィクトリアがそう尋ねる。
考えてみれば、機械魔王やら健康魔王など「○○魔王」とつくのだが、リューの場合はどうなるのであろうか。
【全滅させ、トドメとして親を呼んでいたりしましたので、「徹底魔王」はどうでしょうか?】
【ピキッツ?「とにかくすごいよー魔王」かなー?】
【今後の憂いが無いようにしているし、「殲滅魔王」の方があっていそうな気がするカナ】
【単純明快に「裏の魔王」のほうが良いのだよ。なんかこう、既に手中に収めたという感じがするのだよ】
「‥‥‥お前らは俺をどう思っているんだよ?」
なんというか、物騒な感じがする案が出てきたりしたのでリューはじっと皆を見る。
「リューはリューよね?魔王になったとしても同じですわ」
【ええそうですとも、リュー様はずっとリュー様であり、無二唯一の存在です!】
【主は主だよー】
【時々鬼畜というか、腹黒いところが垣間見えるカナ】
【この中で一番浅い方だけど、その衣以上に真っ黒な面もあるように思えるのだよ】
『ご主人様である認識は変わりません」
「…‥よし、ファイとランは後でちょーーっと話し合う必要がありそうだよね。口は禍の元という言葉があるし、しっかりと学んでもらうことにしようか。…‥ヴィクトリア、ちょっとまだ落ち着くようなことが無さそうだし、結婚式はもう少し後になりそうだけどいいよね?」
「‥‥ああ、なるほど。何をするつもりなのかよくわかりましたわ。きちんと変わらぬ心で愛して下さるのであれば、しっかりと今日の欲求不満分を発散してください」
【‥‥‥まさか!?】
【し、しまったのだよ!?】
リューとヴィクトリアの会話から、何をされるのか悟ったファイとラン。
だがしかし、時すでに遅くしっかりとリューの魔王の衣から伸びた手が二人をつかみ、その時が来るまで離す気がないのを理解し、諦めてこの際徹底的に身構えることにした。
…‥‥しかし翌日、以前は他の皆も混ざっていたが、今回はお仕置きという事と2人に絞られて一気にやられたために、ファイとランは体を動かせなくなるのであった。
【…‥ぐふぅ、激しかったし、いろいろすごかったけど出来ればもっとお手柔らかにしてほしかった…‥カナ】
【しゅ、種族的な方で考えれば‥‥‥こっちの方が上なはずなのに、魔王の衣も使用して‥‥‥ずるいのだよ】
そうつぶやき、二人はガクッと倒れたのであった‥‥‥‥
さてさて、ようやくこれで正式に認められ、邪魔者がいないであろうと思うルースたち。
魔王としてのデビュー戦のような物でもあったが、これで敵対しようと考える輩を減らせるはずである。
まぁ、絡んで来るであろう馬鹿者はいるだろうけど、そこはきちんとお話すればいいだろう。
次回に続く!!
‥‥‥というか、そろそろ年月を少々進ませる予定。なんというか、学園時代に焦点を当てていたからいざ書こうとしたらやりにくくなったんだよね。
後、ついでにリューの血縁者でもあるオーラ辺境伯爵家についても出す予定あり。現在は長男が次期当主、次男が補佐、3男はリューより早く夢追い人としてデビュー済み。
リューがこれから夢追い人兼魔王として活動し始めるのであれば、きちんと家族にも会わせないとね。