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自由に過ごしたい魔物使い  作者: 志位斗 茂家波
夢追い人(ドリーマー)になり、そして魔王にもなるで章
131/162

蹂躙の方が簡単

けれども、きちんと手順を踏んだほうが効果的である。

SIDEリュー


 王城に来てから1週間後、決闘場には多くの観客が来ていた。


 というか、その大半が‥‥‥


『ほとんどあの馬鹿共、コホン、王子やその他今回決闘を受諾した王子たちなどの親ですネ。各国の国王、帝王、皇帝、大臣等、主要人物デス』

「もともとそういう類の例が出ていると知らされていても、全く聞かないような究極の馬鹿がいる可能性もあったからな。これで正面から堂々と言ってもらえれば、もう確実という事になるだろうよ」


 控室で、ワゼの説明を聞きリューはそうつぶやいた。



 世の中には往生際が悪いというか、脳内お花畑の中にはしつこい輩がいたりする。


 その為、変にごねられても大丈夫なように、今回の決闘を受ける相手の親たち‥‥‥他国の王や貴族などを呼び寄せ、観戦してもらうことにしたのである。


 その場でごねた瞬間、即判処分を言い渡してもらうためだけにね。手紙で内容が書いてあったけど、添えれを伝えるだけだと不十分だと思ったんだよ。


 ありとあらゆる手段を用いて、全員の親を呼び寄せるのに1週間もの時間がかかってしまったが、その分準備は万全である。


 ちなみに、呼び寄せる際に「面倒な輩を押しつけてきたなぁ」と暗に含む文章を送ったのは内緒である。




 決闘を受ける相手の方も、これだけの期間があれば準備できるのだろうけど、その準備した分を無駄と言い切ってしまうほどの差を見せつければ、心が折れるであろう。



【なかなか入念なとどめの刺し方まで準備できましたね】

「ま、相手の心を折るには丁寧にやってあげないといけないからな。例えるのであれば、相手の黒歴史を暴露する際に、恋文などがあればそれをその相手を呼んだ目の前で暴露させ、その場で返事としてフッてもらうみたいな、そういう事かな?」

【暴露された上にフラれるってそれはひどいのだよ!?】

【エグイ…‥それはもう、傷口に塩どころか辛子味噌、激辛の粉末を塗り付ける様なものカナ】

【内心、主、怒っていないピキッツ?】



 とにもかくにも、これで有象無象の者たちの心を折る準備が出来たところで、時間となった。



「お、そろそろ決闘に赴こうか」


 魔王の衣から出る手で素早く身だしなみを整え、決闘場の舞台へ向かうのであった。


 


――――――――――――

SIDEヴィクトリアに婚約を申し込みに来た有象無象共




 決闘場では、大勢の他国の王子や貴族の子息たちがそれぞれ武装し、決闘の時を待っていた。


 流石に相手の事を侮り過ぎないようにしたとはいえ、多人数でまとめてこいという条件が付きつけられ、それに乗ってこの際彼らは手を組んだのである。


 大勢で手を組んで、現ヴィクトリアの婚約者であるリューに勝利した後、自分たちの方でバトルロワイアルでもして決着を付けようと合意し、今は仲間同士としていた。



 決闘開始が近づく鐘の音と同時に、決闘場の舞台にリューがやってくる。


‥‥‥魔物使いだという話はあったが、その場に来たのはリュー一人だけである。


 黒い衣をまとい、手には何ももてちないように見えるその様はどこか違和感を彼らに感じさせた。





 魔物使いは本来、従魔に指示を出して後方にいる司令塔のような役割を持ち、従魔なしでの戦闘能力は低いはずだと全員思っていたのである。

 

 調べたところでは、力魔法などという不思議な魔法を扱うようだが、それでも従魔なしで出てくるのは違和感しか感じられなかったのであった。



「‥‥‥さてと、それでお前たち全員が相手という事でいいんだよな?」


 口を開き、そう語りかけてきたリューの声を聴いたとき…‥‥一瞬、その場にいた全員の背筋に冷たい者が流れた。


 気軽に確かめる様な声であるはずなのに、どこか静かな怒りのような、嵐の前のような静けさの恐怖を本能的に感じ取った野田。


「あ、ああそうだ!!俺たち全員が、お前の婚約解消を狙い、そしてヴィクトリア第2王女様に婚約を申し込みたいのだ!!」


 一人が代表して声を上げ、威勢よく返答したが‥‥‥その足は何処か震えていた。


 本能的な恐怖というか、今まさに何か間違いを犯してしまったかのような感覚を味わっているのだろう。




「なるほど、で、仮に今聞くけどさ、お前たちはヴィクトリアと婚姻出来たら何がしたいのだ?」

「えっと、それは‥‥」

「婚姻によって国との関係性を強めたりしたいんだ!!」


 投げかけられた質問に言いよどんだものに代わり、他の者がそう答える。


 中には異なる目的として、その美しさや肉体とかを求めての者もいるが‥‥‥そこで声を上げようものなら、どこか嫌な予感がして声を上げられないのである。




「ふむ‥‥‥つまり、ヴィクトリアを、彼女をただの国同士の結びつきを深めるだけの道具(・・・・・)としか見ていないのだな?」

「そ、そんなことはない!!」


 リューの言葉にある、明らかに強めて言った指摘を受け、言いよどむ者たち。


 言葉から得られる感情が、徐々に嫌悪というか、怒りが混じっていることに気が付き始める。




「‥‥‥まぁ、婚約者がいる相手を今さら狙ってきた点というところから考えても、何かしらの企みがあるのは間違いないだろう。もしくは、婚約解消しているかもしれないという馬鹿な考えもあったのだろうか?」


 呆れたような声に代わり、そうリューがいうと、その場にいた者たちは言い返せなかった。


 ほぼ自分たちのためだけの行為であり、かと言って今さら後戻りが出来ないのである。





 そして彼らは気が付く。


 少しづつ、どこか身体が重くなってきたかのような、いや、物凄い相手からの威圧というべきものが強まっているということに。



「…‥さてと、そろそろ決闘始めるか。でも、あと2つほど言っておこうか」



 決闘開始が目前となり、リューは最後の言葉を投げかけた。


「まず一つ。魔物使いは従魔に守られる立場。けれども、従魔を突破されれば自身を守るための力がないといけないし、案外攻めるよりも、守る方が難しい。だからこそ、その守りが攻めに転じたら…‥‥どうなるだろうか?」



 その言葉を聞き、その場にいた全員がはっと気が付かされる。


 確かに、魔物使いと言えば従魔に守られるだけの存在とも彼らが思っていたのだが…‥‥その守られる立場が、逆に強いとどうなのだろうか?


 攻めるよりも守る方が難しい。


 なぜならば、守る方は攻める方よりも強くなければ意味をなさないのだ。


 そして、その攻守が逆転した時、守っていたほうが強いのであれば、攻めていたほうは…‥‥




 そこまで考え、なぜリューが従魔を引き連れず、一人だけで舞台に立ったのか、全員理解した。




「‥‥‥そして2つめだが、この俺がただの魔物使いだと思うか?ただの何もない魔物使いであれば、仕えている従魔はそれなりにしかいないはずなのに、俺が従えさせている従魔たちはどれも能力が高く、それなりに、いや、ほぼ確実に比べるもなくお前たち以上に強いだろう。それだけの従魔を従えている俺が…‥‥『魔王』と呼ばれる存在であるならば、果たして勝機を見出せるのか?」



…‥‥『魔王』、その言葉を耳にして、その決闘を受けた者たちは悟ってしまった。


 ここまで長々と語っていたのは、本当に相手が誰なのか、わざわざ気が付かせるためだけにいて血たという事を。


 そして彼らは目にする。


 リューの着ていた黒い衣が、まるで生き物のように動き出し、巨大な手や剣などに代わり、ドラゴンのような形も作っていたことを。



 その彼らも、観客席にいた者たちも悟った。


 今まさに、この場に魔王が自ら出向き、相手をしようという事に。



「さぁ、始めようじゃないか。この俺の婚約者、未来の伴侶とでもいうべきヴィクトリアをかけ、この場で己をかけて戦え!!」


 リューのその言葉と同時に、決闘の開始の鐘の音がなる。


 この決闘を受けた者たちは、この瞬間物凄い後悔に襲われた。


 自分たちは、やってはならないこと、魔王の婚約者を狙ってしまい、今まさにこの場で処刑されてしまうだろうと…‥‥‥


相手にしてはいけないものを、相手にしてしまった。

決闘場に来てしまった、そして婚約者を狙ってしまった、と後悔をしてももう遅い。

その場に魔王が自ら降臨してしまったのだから…‥‥

次回に続く!


…‥‥なんだろう、この相手側の方が可哀想になる感じは。というか、これ、勝ったとしても無謀に魔王に挑んだ勇者(笑)として言われ、負ければ魔王にわざわざ怒りを買わせたとして国に戻れなくなるのが目に見えている。

彼らの親たちもその場に来ているし、これもう後戻りが出来ないどころか、既にオーバーキルをやらあkしたような気がするなぁ。


『案の定というか、後で暗殺を狙ってとかいう人もいましたので、きちんと証拠も集めましたヨ』

「これでその証拠をたたきつけて、交渉材料なんかに利用できそうだな」

【もうやめてあげたほうが良いですよ!!相手の精神はもうKOされていますよ!!】

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