よく考えないと痛い目に見る
これは誰にでもいえることかな。
過去に誰もがこのサブタイトルの教訓を得る経験があったと思える。
‥‥‥王城へ着いて早々、リューたちはコメントに困っていた。
「さぁっ!!ヴィクトリア姫よ、どうかこの僕の下へきてほしい!!」
「いや、このわたしのほうに来てくれた方が、必ず幸せにして見せましょう!!」
「なんの!!こちらの方が一生大事にするんだ!!」
「‥‥‥これどういう状況だよ」
「なんというか‥‥‥うん、うざいですわね」
リューのつぶやきに、ヴィクトリアははっきりとそう答えた。
王城につき、城門をくぐってすぐに、様々な青年たちに囲まれたのである。
しかも、全員がヴィクトリア目当てのようであり、リューたちの事は眼中にない様子。
皆がそれぞれ異国の衣服を着用し、花束や指輪などを手渡そうとしたり、存在感をアピールしていた。
リューがヴィクトリアの婚約者になっていることは、数年前の貴族たちとの決闘で正式に公表されているのである。
その為、今になってこう押しかけてくるはずもないのだが…‥なぜ、こうなったのだろうか?
「‥‥‥はぁ、どうやら彼らはこの卒業したタイミングを狙っていたようでな、今ならば考え直して婚約破棄及び自分たちと婚姻してくれるだろうと考えた者たちのようだ」
「なるほど‥‥‥そういう事ですか」
とりあえず無視を決めてリューたちは城内に入っていき、ある程度進んだところで、彼らは許可されていないがゆえに入れなくなった。
そのあたりの分別を理解しているのは良いが…‥どこをどうすればそのような思考にいってしまったのだろうか?
「ヴィクトリアとの婚約破棄?無いですね。ずっと婚約していますし、何をいまさらそんな話をするのやら、彼らのお花畑な頭には驚きますよ」
「全くだ。しかも、ご丁寧にその国の国王からの書状も来たのだが‥‥‥これだ」
アレン国王が呆れたように出してきたのは、ヴィクトリアに言い寄ろうとしてきた他国の王子たちの親‥‥‥国王や皇帝と言った類の人達からの書状である。
どれもこれも似たような内容だが、要約すれば「勝手に対応しても構わないし、彼らに責任を取らせる」というものであった。
迷惑被るのを分かっていたようで、その彼らの出身国からはここしばらくは有利な条件での条約などを結べるようで、ついでに婚約不可能となった場合は、その場で廃嫡など処分決定済みだそうだ。
どうやら、あの者たちはとっくに祖国から見放されているに等しい者たちのようである。
お花畑っぽいというか、そういう思考回路のようだから納得はできる。
「そもそもそんな問題児どもを送り込んで来るなと言いたかったが‥‥‥この卒業のタイミングを狙って準備をしていた者が多く、一斉に出ていったために対応しきれなかったようだ。まぁ、誰もかれもが己の末路決定を送られてきているから、今こそ必死になってアピールしているのだろう」
「遅いというか、何というか‥‥‥そりゃ、国からも見放されますよね」
苦笑するアレン国王に対し、リューも苦笑する。
どこの世界に、もうとうの昔に婚約者が決まっている相手が婚約破棄になっているだろうと考え、卒業に合わせて押しかけてくるようなやつがいるのであろうか?
‥‥‥いや、思いっきり彼らが来ているから、ゼロではないな。
「国王陛下はどう考えてますか?」
「当たり前というか、リュー殿は婚約破棄などを全く考えていないだろうし、ヴィクトリアもそうだろう?」
アレン国王の問いかけに対して、リューとヴィクトリアはうなずく。
「そこでだ、少々負担となるというか、めんどくさいと思うかもしれないが…‥‥わざわざやって来たんだ。そのお花畑のような思考を完膚なきまでに叩きのめしてやりたくはないか?」
にやりとアレン国王が浮かべる笑みを見て、リューは理解した。
「…‥なるほど、彼らと決闘し、骨の髄まで理解させろと」
「そういう事だ」
その顔に続き、思わずリューは腹黒い笑みを浮かべた。
こういう時に手っ取り早いのは、真正面から相手をしてあげることである。
「…‥あ、そうだ国王陛下。この際ついでになのですが‥‥‥」
ここでふと、リューはその他の案件として魔王の衣についての話をすることを思い出し、ここで報告した。
「‥‥‥なるほど、魔王の衣、つまり魔王となったわけか‥‥‥うん、別に不自然でもないな」
「案外あっさり受け入れていますね」
「いやだってさ、余り不思議ではなかったというか、そうなるかもしれないなと考えていたというか‥‥‥」
その報告を聞き、案外アレン国王はあっさりと聞き流した。
別にリューが魔王だろうともどうでも良いのかもしれない。
だって…‥‥
「この機会にこそ、その力を振るえば恐怖もしみこませられるだろうしなぁ」
「おお、国王陛下も分かっていらっしゃるなぁ」
「「あっはっはっはっはっは!!」」
腹黒い笑みを互いに浮かべ、リューとアレン国王は笑いあうのであった。
こういう時にこそ、都合のいい力でもあるし、相手を徹底的に心から折るのには適しているのだろうから‥‥‥
「そもそも、リュー以外を選ぶなんてこともないから、この際、決闘後に見せつけてあげるのもありだともうのですわ!」
【…‥なんでしょうか。ものすっごいリュー様が悪の大魔王に見えてくるのですが。あとヴィクトリアさん、それ確実に相手の心にオーバーキルをしますよね?】
【同感カナ。ありゃ、あの求婚する王子たち終わったカナ】
【ピポたちも参戦するのーピキッツ?】
【別に参戦しなくとも、主様のみで大丈夫そうなのだよ。というか、これむしろ相手の命を心配してあげたほうが良さそうだと思うのだよ】
『ま、卑怯な手段をとるような相手がいないとも限らないし、私たちは私たちなりにサポートに徹したほうが良さそうだと思われますネ』
リューとアレン国王の腹黒い笑みの傍で、ヴィクトリアたちは少し距離を置いて、見守るのであった。
‥‥‥腹黒い国王と魔王が組んじゃった。
果たして、相手側の方は無事でいられうのだろうか?
いや、そもそも彼らの祖国から見捨てられているも同然のようなのですでに無事ではないか?
次回に続く!!
「この際、この魔王の衣で相手をまとめて叩きつけて‥‥」
「いやいやいや、それが変形できる代物であるならば、こういうのはどうだ?」
「おお!!さすが国王陛下、中々えぐいのを考えますねぇ」
「リュー殿こそ、いや魔王殿こそ面白いことを企みますなぁ」
「「あーはっはっはっはっはっはっは!!」」
【どっちが悪役なのか、はっきりしなくなったような‥‥‥】
【混ぜるな危険というか、王同士の反応で、まずいものを作ったような気がするカナ】
【ピキッツ、というか、二人とも密かに怒っていない?】
【当たり前というか、あの求婚者たちは、国王にとっては娘にたかる蛆虫、主様にとっては大事な伴侶というか、正妃へのちょっかいという事で深層心理ですごい怒りを持っているようなのだよ】
『彼らは触れてはいけないものに触れたようデス。そう、竜の逆鱗のごとく、ヴィクトリア様という、二人にとって大事な者に対してのちょっかいですからネ』
「心を折るなら、いっその事目の前で見せつけのキス?それともいちゃいちゃのほうが良いかしら?」
‥‥‥ヴィクトリアもだいぶ、この常識外れの面子というべき者達に毒されてきたような気がする。