久し振りの王城へ
新章開始
と言うか、ようやく魔物使いとして、夢追い人として活動開始!!魔王としてもね。
SIDEリュー
「‥‥‥よし!!卒業できたぁぁぁぁ!!」
夢追い人育成学園の卒業式当日。
式を終え、校門から出たところでリューはそう叫んだ。
【ついに卒業出来ましたねリュー様!】
ハクロも、他の皆もにこにこと笑顔でそう答え、皆で笑いあう。
これで晴れてリューたちは学園から卒業し、学生の身分から夢追い人になることが出来るのだ。
ただ、その前にギルドとかいう独立機関にて正式な登録を行う必要性がある。
卒業証明書やその他書類などを持って手続きを行い、そこできちんとなれるのだ。
いわば、卒業したての状態は車で言うところの仮免許状態とでもいうのだろうか?
「…‥まぁ、その前にまずはアレン国王陛下への謁見及び報告が先だけどな」
「そこは避けては通れぬ道ですわよ‥‥‥」
気球設置から改良し、飛行船に近い機能を持った馬車に乗りながら、リューがつぶやいた言葉にヴィクトリアは苦笑した。
リューの纏っている黒い衣‥‥‥魔王の衣。
それすなわち、魔王の証であり、リューがこの時代に出た魔王という事になるのだ。
で、ここで問題になるのがその魔王という立場。
歴代の魔王の中には国を持ったり、人々を導いたりするのがいるのだが、リューの場合はそうではない。
国を持っているわけでもないし、人を導くこともするつもりは特にない。
かと言って、悪の魔王のように世界征服や滅びを求めたりなどもするつもりもないのだ。
気ままな夢追い人として過ごしたいし、問題をできるだけ避けたい。
その為、これからどうすればいいのかという事で、王違いだけどザウター王国の国王であるアレン国王に助言を求め、ついでに魔王になったことも報告するために向かっているのであった。
「‥‥‥そういえば、考えてみるとヴィクトリアって第2王女でもあったよな?それって公爵家にもなる可能性があるのか?」
「いえ、それはないですわね。夢追い人は死と隣り合わせでもある職業‥‥‥その為、領地を治める人がぽっくり逝かれても困るので、公爵家になるかならないかの判断をすることができますもの。リューはどうしたいですの?」
「ならないの判断だな。領地経営なんてガラでもないし、普通に気ままに生きたい」
「そうおっしゃると思っていますわよ。だからこそ、ついでにわたくしも王籍にありながらも王位継承権を外すつもりですわ」
リューの返答を分かっていたというように、ヴィクトリアはワゼから渡された茶を飲みながらそう決意を告げた。
‥‥‥一応、ザウター王国の王女でもある彼女には王位継承権がある。
上には第1,2王子もいるので低いのだが、万が一という事もあって回ってくる可能性もある。
けれども、めんどくさいというか、こうやってリューたちと一緒にいるほうが良いので、この際、完全に王位継承権を放棄することを宣言するようだ。
まぁ、数年前の婚約騒動の際に、実はそのことについて話していたこともあったが、実は未だに底をはっきりさせていなかったのであった。
『とはいえ、少々面倒ごとの情報がありますね‥‥‥ウワァ』
その会話を聞きながら、ワゼがそう言葉を漏らした。
どこか、物凄くめんどくさそうというか、明らかに嫌そうな顔である。
‥‥‥魔王の衣が完全に出たあの夜の出来事以来、なんとなく彼女の感情表現が豊かになったように思えるのは気のせいだろうか。
「って、面倒事って何だよ?」
『ついで見ればわかりますが、まぁいい機会にもなりますヨ』
リューの質問に対して、ワゼはそう返事した。
どうやらそこまで深刻そうな問題でもなさそうだが…‥‥イヤな予感しかしないなぁ。
【案外、他国からの王子が婚約を求めに来ていたりしているかもなのだよ】
「いやいや、それはないだろうよ。大体、数年前にヴィクトリアとの婚約の時に、反対する貴族を決闘で力を見せつけて黙らせているんだぞ?その話が届いていないわけないよな?」
ランの言葉に、リューは笑いながら答えを確かめるようにワゼに向けて言ったところ…‥
『‥‥‥ビンゴデス』
「‥‥‥まじか」
物凄くめんどくさそうな顔でワゼは肯定したのであった。
いや、数年前とは言っても、その事を聞いていない人が来るってどうなのだろうか。
というか、他国の王子とかって誰だよ。
その疑問を抱きつつ、リューたちは王城へ向けて進路を向けるのであった‥‥‥
―――――――――
SIDEアレン国王
「…‥はぁ、何で今さらながら来るんだろうか。他国の若造どもめ」
憎々しげに、そしてめんどくさそうに、王城の執務室にてアレン国王はそうつぶやいた。
他国からの書状を整理していたのだが、その中にヴィクトリアと婚姻を結びたいという他国からのものがあったのである。
数年前に、リューが貴族たちを相手取って決闘し、その力を知らしめて黙らせたことはあったのだが‥‥‥そのことを信じられないのか、それともまったく調べもせずにただ他国とのつながりを求めたい馬鹿か。
そう思うと、アレン国王は頭を抱えたくなった。
もうそろそろ自身が年なのだというのも自覚しており、実は近々退位も予定していたりもするのだ。
第1、2王子ともに成長し、もうどちらも王太子としてなってもおかしくはないし、王位を譲り渡し、隠居しようと考えてもいるのだ。
「ま、こんな面倒ごとを長くも考えておきたくないし、ちょっと気分転換に城下街へ遊びに行くか」
そうつぶやき、気分を変えるためにこっそりと執務室を出ようとアレン国王が立ちあがった時であった。
カチッ
「ん?」
ふと、足で何かスイッチを踏んでしまったような音が聞こえた。
次の瞬間…‥‥アレン国王の司会はさかさまになっていた。
「‥‥‥宙づりトラップ!?」
見事に片足だけを吊るされてしまったのである。
一体誰がと思い、何とか逃げようとしたところで、執務室の扉が勢いよく開き‥‥‥宰相が怒りの形相で睨んでいた。
「やはりいま逃げようとしましたね国王陛下!!」
「げっつ!?宰相!?」
…‥‥しょっちゅう逃亡するアレン国王。
その国王の対策として、実は宰相はこの部屋に仕掛けを施し、アレン国王が逃げないようにしていたのである。
そして、罠にかかればすぐさま連絡がきて、迎えるようにしてたのであった。
長年、歴代の宰相たちがアレン国王の逃亡癖によって悩まされてきたのだが…‥‥ついに、その解決方法をこの宰相は見つけ出し、そして本日その成果が出たのである。
これにより、アレン国王は逃亡が不可能となった。
そして、絶望した顔で仕事を行うのであった…‥‥
王城へ向かい、その面倒ごとに嫌な顔をするリューたち。
とはいえ、面倒事はさっさとすっ飛ばして解決するに限る。
今回ばかりは国王も面倒くさそうなので、ここで結託するのもありかも。
次回に続く!!
‥‥‥面倒事というか、まぁ他国からの厄介事を押しつけられたような気もする。
これが夢追い人(まだ仮)として初めての面倒事かな。




