閑話 ちょっとだけ大昔の話
短いかな?
ギコギコギコ‥‥‥
‥‥‥チュィィィィィィィン
…‥‥ギシィ、バキッツ‥‥‥
…‥‥大小さまざまな道具が扱われる中、小さな試験官の中でソレはその光景を見ていた。
『‥‥‥機械魔王ヴュリュヴャミビュ様。それが私の身体となる物ですカ』
「ん?ああそうだぞ。お前の動かすべき身体…‥‥正式名称『The strongest mechanic made』となる重要なボディだ。‥‥‥とはいっても、これはまだ内部部分だけどな」
だいぶ年を取りつつ、それでも未だに健在な機械魔王のそのへらへらとした笑いをみて、The strongest mechanic made‥‥‥後にTSMMと略称される彼女は、その試験官の中で溜息を吐いた。
ねじが飛び交い、様々な機械の腕が飛び交い、多種多様な部品が構成され、はめられていき、計算通りにいかなかった部分や、思い付きで追加されていくパーツなどを見て少しTSMMは不安になった。
『それ本当に動かせますかネ?さっきから行き当たりばったりでしか作成されていないような‥‥‥』
「何を言うか!?これこそこの機械魔王様が生涯の最高傑作として作り上げる最高の逸品!!行き当たりばったりではなく、この最高の頭脳をもってしてこそ、どれだけ限界以上にそのポテンシャルを引き出せるのかつねに計算しているのであーる!!落ち着いて見ているのがいいぞThe strongest mechanic made!!かの有名な戦国武将を例える中に、『吐かぬなら、えぐり取ってさらけ出してしまえ、黒歴史』とあるぐらいだからな!!」
『…‥アレ?それは『鳴かぬなら、鳴くまで待とう、時鳥』とデータにあるのですガ』
「甘いなThe strongest mechanic madeよ‥‥‥この黒歴史をえぐり出す作業こそ、すべてをなんやかんやでうまくいかせる真理。このおかげで、昔あの嫌だったブラック企業のくそったれ共を一斉に処分し、なおかつ社会的に抹殺できたのだ。‥‥‥にしても、もうかなり大昔の事とは言え、あの豚共が自作のポエムや日記などを全国の支店や商社に一斉放送されて、真っ白になっていく様は面白かったなぁ」
『‥‥‥なるほど』
「ついでに、トドメとして丁寧に過去の恋人たちも呼びだしてあげて、皆にフラれ、ビンタされ、これまでやって来た悪事なども全部さらけ出させたしなぁ」
どのような事なのかは、TSMMは受け取っていたデータで大体把握できていた。
ただ、性格が悪そうだなぁと印象も付いたが。
この機械魔王、どうやらこの世界ではないどこか異世界の知識があるようで、それを活かしてありとあらゆるオーパーツレベルとも言えるような代物も作っているようであり、この居城も彼の作った作品で、ごみ屋敷のごとく埋もれていることも理解していた。
その解決も兼ねて、そしてさすがに不老不死ではなく、もうじき寿命が来ることも理解していたようで、TSMMを心血を注いで、死ぬ気で作っているのも理解しているのである。
‥‥‥ふざけているように見えて、計算上もう寿命は尽きていてもおかしくはなかった。
だがしかし、それでも絶対に終えて見せるという強い意志を目に見て取れ、ただそのふざけに付き合う位しかTSMMはやることが無かった。
重要な最後の頭脳部品として、今はデータを受け取り、その様子を見ることしかできない自分を、どこか歯がゆく想いつつも‥‥‥‥
それから月日は流れ、ついにThe strongest mechanic madeは完成した。
いや、完成したと言っても、当初の予定通りの名前ではなく「10」という形式番号が付いてしまったが…‥‥
『なんでこれが付いたのですカ?』
「いやぁ、コピーというか、劣化版のゆるーいやつをついでに作ってさぁ、そっちの方が先に出来ちゃって、結果として10番機となってしまったんだよねぇ。ごめんね☆」
‥‥‥殴ろうか、この寿命がとうの前に尽きているはずなのに、ぴんぴんしている機械魔王。
その時、初めてTSMMは怒りという感情を理解したのであった。
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『…‥‥懐かしい夢を見ましたね』
ふと、ワゼは目を覚まし、そうつぶやいた。
彼女が起きてみれば、朝日が昇り、まだ皆は寝ている早朝である。
昨夜は久しぶりの全身メンテナンスという事で、ワゼは己の身体を一時的にシャットダウンし、ミニワゼたちに任せてオーバーホールを行い、寝ていたのである。
そして、珍しいことに彼女は昔の夢を見たのだ。
自分の製造したての当初、機械魔王が現存していた時代の事を。
結局、あの機械魔王は最終的に寿命を大幅にぶっちぎり、その後に死を迎えた。
すべての作品と共に、盛大な自爆という死を迎え、そして最高傑作であったワゼは眠らされ、後世に託された。
いつの日か、新たな主の下について働けるようにと…‥‥。
その主を見てみれば、今はぐっすりとベッドの中で寝ているようだった。
周りを見渡せば、他の皆もそれぞれの寝床で思い思いの寝相でくつろぎ、まだ夢の世界にいる。
‥‥‥ランの姿だけが見えないが、彼女の場合はおそらく夢の中の方に潜っているのだろう。
誰の夢の中かと思い、見てみれば‥‥‥
『ふむ、吹っ切れているのが原因か、それともすでに羞恥心を捨てたのか‥‥‥とにもかくにも引きずり出して、少々お灸をすえましょうカ』
ごそごそとハリセンを取り出し、最近追加した夢に干渉できる機能を作動させ、夢の中にランはお仕置きしに向かった。
その数分後、夢の中でランが悲鳴を上げたが‥‥‥‥現実ではないので、誰もその声を聴かなかったのであった。
【あふあぁぁぁぁぁぁ!?すいませんすいませんすいませんなのだよ!】
『種族的部分が薄いのが貴女のアイデンティティーでしたよネ?主に対してとはいえ、欲求不満ならばここで全部吐き出させマス!!』
【いやそれ違った物が胃から出てしまうのだよぉぉぉぉぉ!!】
さてと、次回から新章というか、厄介事を力づくでふっとばすかな。




