‥‥‥朝を迎えて
後が怖いとは、こういう事なのだろうか。
SIDEリュー
…‥‥いろいろとあった深夜も時間が過ぎ、朝を迎えた。
日光が空き家の窓から入り、室内を照らす中、リューたちは満身創痍の状態でその場に倒れていた。
なお、身だしなみだけはワゼがぴんぴんしていたので、素早く整えきちんと衣服を着てはいるが‥‥‥
「ハクロ、ピポ、ファイ、ラン…‥大丈夫か?」
ふと、起き上ってみれば、未だに皆はぐったりと倒れていた。
【ぜ、全然大丈夫じゃないです‥‥‥力が抜けたというか、さんざんな目に遭ったせいで動けません‥‥‥】
【ピキ―ッツ‥‥‥燃え尽きた】
【あ、足腰絶たないカナ…‥‥まだ無理カナ】
【何だろう、サキュバス的に負けたというか、そっちのショックがあるのだよ…‥】
ぶっ倒れながら、ハクロたちはそう答えたのであった。
『ご主人様に主導権を完全にとられ、襲い掛かる側から襲われる側となり、見事に抵抗できませんでしたからネ。滋養強壮、疲労回復のためにそれなりに回復できる朝食をご用意いたしましタ』
ワゼがそう言いながら、皆に食パンに何かを塗った物を手渡しで渡してきた。
というか、ワゼも混じっていたはずだが‥‥‥体力が桁違いなのか、ぴんぴんしている。改めてすごいなこのメイドゴーレム。
「‥‥‥で、ワゼ、これ何を塗った?」
『「ルビーハニー」の蜂蜜とその他を混ぜたものデス。きちんと昨夜のようにならないように調べたうえで、調合した者ですから問題はありませン』
見る限り、物凄く毒々しい色をした物が塗られてはいるが、香りは甘そうな匂いがするので、多分大丈夫なはずである。
その他が気になるが、とりあえず腹も減ったので皆はその朝食を口にしつつ、意外にもおいしく、しかも体が回復したので起き上った。
『ちなみに、昨晩の私も含めた皆さまのあんな映像やこんな映像も記録していますので、後で投影してみましょうカ?』
「【【【【それはやめて!!】】】】』
流石に恥ずかしかったので、リューたちは全員でそうツッコミを入れるのであった。
朝食を終え、空き家だった場所を少々汚れたので清掃‥‥‥は、ワゼがしていたのでやることもなく、昨晩の事を思い出すと恥ずかしいのか空気がやや気まずく、リューたちは空き家を出て、ついでにいとっていた宿屋を引き払い、学園へ帰路を取った。
「‥‥‥なぁハクロたち、昨晩は本当にごめんな」
気まずい空気の中、その雰囲気を変えたいと空中を気球馬車で飛行中、リューは思い切ってそう告げた。
心にあるのは、ハクロたちに対してのあの夜の出来事である。
勢いと外れた箍と子孫を残す本能故にそれぞれ暴走したのだが、やはり止められなかった自分に対してリューは恥じているのだ。
【‥‥‥いえ、大丈夫ですよ。そんなことがなくとも私たちはリュー様の従魔。いつか、こういうことが起きる可能性も分かっていましたし、覚悟はできていたのです】
そんなリューに対して、ハクロははっきりとその目を見ながらそう告げた。
…‥‥魔物使いとその従魔との交わり。
それは、長い歴史の中で起こることがあり、子をなしたりすることがあるそうで、決してないわけではないのだ。
だからこそ、リューに対して従魔となった時に、皆は自然とその来るかもしれないその時に、覚悟が出来ており、決してリューの過ちではないし、恥じることではないと皆はそう告げ、優しい目でリューを見つめた。
『そもそも今回のすべてが、ファイのせいですけどね‥‥‥』
【うっ!!】
ぽつりとワゼがつぶやいたことに、ファイがどきりとしたかのように体を震わせた。
とはいえ、やはりいつしか互に求めることがあるというのは、理解していたのであろう。
リューは重く考えていたが、皆は全く気にせず、その重しを取り除く。
【大丈夫ですよリュー様。私たちはこれからもリュー様の傍にいるので、今後同じような事があってもすべて受け入れます。それだけ、皆リュー様の事が抱き好きですからね】
そうハクロが微笑みながら言い、リューが皆を見渡すと、全員微笑んで肯定して頷く。
その様子に、ほっとしつつ、どこか暖かい物をリューは感じるのであった…‥‥
「って、良い感じになりそうだったけど‥‥‥この件ヴィクトリアにどう説明し、謝罪しようか…‥」
【あ】
‥‥‥感じている暇はなかった。
思わず思い出してリューのつぶやいたその言葉に、ハクロたちは顔をひきつらせた。
リューはヴィクトリアの婚約者でもあり、彼女は第2王女。
婚姻の時まで純潔なのが望ましいとされているのに・・・・・・その相手であるリューが、既にハクロたちと交わってしまっているのはどう説明したものか。
「聞いたら彼女、怒るかな?」
【多分激怒されますね】
【私たちが原因とは言え、確実に殺しに来るカナ?】
その可能性を考え、その場にいた皆は背筋に冷や汗が流れた。
…‥‥とりあえず、その事はあまり考えたくないので、話を切り替えることにリューたちは決めた。
「そ、そう言えばさ‥‥‥これもどうしようか」
リューが指さしたのは…‥‥彼が身にまとっている黒い衣。
そう、あの極端に魔力を消費し、思い通りの変幻自在な不思議な衣である。
だがしかし、なぜか今は昨晩のまま顕現し、しかも魔力の消費量が極端に少なくなっているのだ。
「なんというか、物凄くしっくりなじんでいるし…‥ほら、こんな感じで変化させても魔力がほとんど消費されないんだよな」
剣や斧、ドリルや電動チェーンソーのような形にも自由自在になり、手を覆ってガントレットのような形状にも変形可能である。
【それはそれで謎ですよね‥‥‥そもそも私たちを完全に押さえつけて身動きが取れないようにもできていましたし、一体どれだけの力があるのでしょうか?】
昨晩の行為を思い出して顔を赤らめつつも、ハクロが言った言葉に皆は考える。
「意のままに動き、形をかえ、魔力を動力源として、しかも…‥‥」
リューが目配せをして、ちょっと軽めにピポに突撃してもらうと、自動的にその頃も空手が出て、ピポを受け止めた。
「…‥自動防御付きなこれってなんだ?」
今までにないというか、本当になんだこれ?
「ワゼ、お前もわからないか?」
困ったときには、超人メイドであるワゼに尋ねてみるのが良いだろう。
『‥‥‥該当データはありマス。ですが、立証にはしばし時間がかかります』
「データがあるのか…‥というか、立証できなくても推測は可能なのか?」
『ハイ』
「じゃ、その推測だとこれは何になるんだ?」
リューはその衣を指さし、ワゼに尋ねた。
『‥‥‥「魔王の衣」デスネ』
「‥‥‥え?」
【ま、『魔王』の‥‥‥!?】
ワゼのその予測に対して、リューたちは驚愕するのであった‥‥‥‥
「魔王の衣」‥‥‥その答えに驚愕するリューたち。
まさかのその回答に続けて、ワゼはその詳細について語りだす。
果たして、どのような内容であり、どのような代物なのだろうか‥‥‥
次回に続く!!
‥‥‥後、現実逃避のための話でもあったりする。
「ヴィクトリアが怖いからなぁ・・・・」
【腹パンで済めば良いですけど、半殺しにされる可能性もありますよね…‥私たちにも責任ありますし、こちらにも被害が来るのでしょうか?】
【あ、だから主殿にその衣が発現したのではないのカナ!?】
「【【【なるほど!!】】】」
この場において、もっともな説得力であった。