表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自由に過ごしたい魔物使い  作者: 志位斗 茂家波
卒業へ向けてで章
121/162

辺境都市ヌッツーリ

本当は違う名前の予定だった。

だがしかし、こちらのほうが良いかなと思ったゆえにこうなった。

SIDEリュー


 ムーンナイトドラゴンの卵泥棒であった一味を全員捕縛し、一旦引き渡しと今夜の宿の確保のために、リューたちは近くにあった辺境都市へ立ち寄った。




 辺境の方では城塞都市のようになっており、都市の周囲は大きな城壁に囲まれている。


 今は拡張工事のためかあちこちに足場が組まれており、万が一のモンスターの襲撃のためなのか警備している|夢追い人たちや衛兵たちの姿がちらほらと見かけられた。







「こいつらは犯罪者で、引き渡し可能ですかね?」

「ああ、この一味は…‥ディクロンダイクか。ああ、もうそろそろ確実に逮捕されるだろうと巷で賭け事の対象になっていた奴らか」


 都市内に入るための城門前で、捕縛していた一味を引き渡すために門番に話しかけ、その事情から衛兵たちがやってきて、案外スムーズに引き渡しが出来た。


 というか、こいつら賭け事の対象になるほどもうそろそろ捕まるだろうと予測されていたのかよ。



 手続きを済ませ、都市内に入ると人でにぎわっていた。


 辺境という事もあり、そう人はいないかもしれないと思っていたが…‥‥どうやらその考えは間違っていたようだ。



 辺境ゆえに、国同士の境目に近くなり、その為各国を行き来する行商人などが一旦他国へ入るための休憩地点として利用していることが多いそうだ。



 とはいえ、辺境は辺境。


 場所によっては人が少ないところも当たり前にあり、この都市が一番人通りが多いだけらしい。





 引き渡しついでに衛兵たちに、この都市で何処がいい宿なのか尋ねげみた結果‥‥‥



「ここが全員一緒に泊まれそうな宿屋『デモドン』か」

【従魔も同室可能で、外の方に厩舎もあるのでどっちに従魔である私たちが泊まることができるのか選択可能な宿屋ですね】

【とはいえ、ここは全員同室という事もできないカナ】


 厩舎は嫌らしく、同室という事にしたかったのだが、生憎一部屋当たりの大きさが少々小さいようで、皆一緒というわけにはいかなかった。


 その為、ちょうど4部屋分だけ開いていたのでそれぞれで組み分けて本日は宿をとることにしたのであった。


 組み合わせは3人一組で、ちょうど2部屋分となった。


――――――――

SIDEリュー&ハクロ&ラン


「にしても、まだまだ体が動かしにくいな」

【魔力の使い過ぎですし、多分、完全に回復するまではだるいままですよ】

【主様はここで横になっているのだよ。うちらはこの宿屋にある風呂に入ってくるのだよ】

「本当はこっちも入りたいけど、動かしにくいし部屋で寝ているからな‥‥‥」


 ハクロたちが着替えを抱え、宿の風呂場へ向かうのを見送り、リューは先に敷いた布団に横になった。


 あの一味のリーダーの分でムカつき、そのせいでいろいろとやらかし、魔力を一気に消費したので、まだ完全に体が回復していないのだ。


「‥‥‥でも、そういえばあの力って何だったんだろうか」


 ふと、その時の事を思い出し、リューはそうつぶやく。


 体から一気に力が沸き上がり、魔力のようなものが黒色の衣のようなものに形成された。


 そして、それを自由自在に形を変えることができ、そして空も飛べる。


 以前にも、その力を使ったことがあるらしいが、はっきりと意識がありつつ、その力の使い道を自然と思い浮かんだのは今回が初めてなのである。


 かなり強い力であり、通常使う魔法以上の能力を発揮できる。


 ただし、その代償としては魔力の消費量が半端ないようで、膨大な魔力を持つリューでさえも長時間は保つことができない。


 けれども、コントロールをどうにかすればいざという時の切り札にもなり、消費も減らせるような方法もないかとリューは考える。


 この卒業試験のための鱗を提出した後、本格的にその力についても調べてみようかなと、リューは考える。


「でもかなり体がだるいな‥‥‥いっその事、全部使って気絶したほうが楽だったか?」


 そうつぶやき、リューは疲れたし、今はやることが無いので自然と目を閉じ、眠りに入るのであった。


――――――――――――――――――――――

ワゼ&ファイ&ピポ


【ピキ―ッツ!!風呂だー!!】


 部屋をセット終えた後、ファイたちは宿の風呂に入りに来ていた。


 この宿屋は男湯、女湯共にあり、従魔用の風呂もあるいい宿である。


 その分、宿泊費も少々かさむとはいえ…‥‥


『ま、学園に請求すればいいでしょウ』


 そうワゼが提案し、それに皆が賛成してこの際この宿をとったのである。


 ちなみに、ワゼは学園長や今回の試験を考案した人たちをすでに調査し終えており、もし経費として出すのを相手がしぶろうものならば、それをネタに色々とやってやろうと考えたりしていたのである。



【ふへぇ~~‥‥‥ああ、茹蛸になりそうカナ】

【ファイ、貴女の場合風呂に浸かると良い匂いがしてしまいますから、後できちんと消臭してくださいよ?】

【そうそう。この間の入浴の時に、猫が大量にやってきて大変だったのだよ】


 ゆったりと浸かるファイに対して、先に風呂に入りに来ていたハクロとランがそう注意する。


 タコ足のあるファイは、その部分が風呂でゆでられると、どうも食欲を漂わせるような匂いを出してしまうようで、猫が大量に襲撃しに来たりするのだ。


 その為、対策として風呂上りには消臭をしているのだが、それをこの間ついうっかり忘れ、騒動になったこともあるのである。


 スキュラに限らず、マーメイドやクラブ系モンスターなど、茹でたらいい匂いが漂うモンスターには共通の悩みでもあった。


【ふふん、大丈夫カナ。すでに特製の超消臭薬があるカナ!!それを軽く塗るだけであっという間にどのような匂いでも一瞬のうちに吸着し、細かな水滴に閉じ込めて流してしまうカナ!これがその薬品が混ざっている私特製ボディソープ『殲滅臭』カナ!】


 自信満々にファイが取り出したのは、明らかにやばそうな色の薬品が入ったフラスコである。


 常温なはずなのになぜかポコポコと沸騰しているようであり、消臭の道具だというのに危険な香りを漂わせているようにしか見えないのであった。



【‥‥‥それ、大丈夫なのですか?】

【まぁ、大丈夫カナ。とはいえ、全ての匂いを消し去ってしまうから、そのままにしておくと周囲の匂いに影響される可能性があるカナ。そこで、改良として後付けに花や草木などの自然の香りが漂うようにしてみたけど‥‥まだ実験していないカナ】


 本当に大丈夫なのかと、その場にいた全員は心の中でそうツッコミを入れた。


『成分を見る限り、人体にもモンスターにも特に害となるような影響を与えるものはないようですから、一応身の安全だけは保証しマス』


 後付けのようにワゼがそう言い、一同はなら安全かと安堵の息を吐いた。


『‥‥‥後付けした香りの効果までは(・・・・・)保証しませんガ』



 ぽつりとワゼがそうつぶやいたが、その声は誰にも聞こえなかった。



【ちなみに香りとしてはまだ種類は少ないが、薔薇、コスモス、マンドラゴラ、ハーブなど、色々といいにおいがするモノを用意しているカナ】

【あれ?なんか今一つだけ異彩を放つ香りがありませんでしたか?】

【結構あるのだよ…‥‥でもまぁ、試してみ良いのかなのだよ?】

【興味があればぜひどうカナ!】


 ぐっと指を立て、自信満々にそう言い切るファイ。


 せっかくなので、それぞれで適当な香りを選び、つけてみることにした。


【私はそうですね‥‥‥『カフェコヒィン』の香りにしてみましょうかね?なんかあまり聞いたことが無い名前のものですけど、流石に臭くはないでしょう】

【ピキッツ!ピポは真っ赤に燃えるから『灼熱草』のスパイシーなものに挑戦するピキッツ!】

【それじゃ、私は今回最高傑作と思える『マンドラゴラ』をするカナ!これは基本的に美容用の者にされているらしいけど、今回はふんだんに香料として使ったカナ!】

【それじゃぁ、うちは‥‥‥『ピンクメロン』の香りにするのだよ。甘そうな感じがするし、たまにはこういうのも良いのだよ】


 わきあいあいと盛り上がるハクロたち。


 その傍らでは、ワゼはミニワゼたちを出して念のためにより細かい成分検査に取り掛かっていた。


 一応、どれもこれも簡易的な検査では、生物には害が出ないことはきちんと把握している。


 だがしかし、ふとなにやら胸騒ぎというか、面白そうな予感がしたので細かい検査を実施してみることにしたのだ。



『…‥‥成分自体は、害を与えないのは分かりますネ。ですが、これ‥‥‥よく調べると、特定の抗体や性質を持つ人には何か効果が出てしまうのデハ?…‥あ、そう言えば従魔というか、モンスターって人間基準とは違うところもありますね…‥‥そこを計算に入れていなかったデス』



 そして、結果が出たときにワゼはその予感が的中してしまったことを確信した。


『‥‥‥よし、見なかったことにしましょウ』


 結果をデリートして忘却し、ワゼは知らぬ存ぜぬを通すことに決めた。


 主第一主義であり、その身の危機を出来るだけ防ぐのがワゼである。


 これはこれである意味危険が迫りそうなものだが、ハクロたちなら問題ないかもと思い、ワゼは見ないことにしたのだ。



 とはいえ、念のためにいつでも対応できるように用意だけはしておくのであった…‥‥

ファイお手製の消臭薬入り兼香料ボディソープ。

それは本当に消臭薬なのかよというツッコミは矛盾してしまうので勘弁してください。

…‥というか、ソレは本当に使っていい代物だったのだろうか?

次回に続く!!


‥‥‥お察しの方はいるでしょうけど、これ明かにフラグである。

ある意味危険でありつつ、命は奪わないような物といわれても物騒である。

果たして、一体どのようなことになるのだろうか‥‥‥‥

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ