卵は‥‥‥
本日2話目!!
「ぐぅっ‥‥‥体がすごくだるい・・・・・・」
『急激な魔力の消費が原因デス。気絶しない分ある程度の魔力は残ってはいたようですが、完全に魔力が回復しなければ、動けないと思ってくだサイ』
【リュー様ほら、そう動かずに背中におとなしく乗っていてください】
ワゼの診察を受けたあと、ハクロの蜘蛛の部分の背中に乗せられ、リューは体をぐったりと脱力させた。
「‥‥‥にしても、これが以前皆が言っていたやつか」
【高威力だけど、反動もかなりあるように思われるカナ】
リューがそうつぶやくと、ファイがその意見を口にした。
…‥‥先ほど、ディクロンダイクの一味のリーダーであろう奴の残した置手紙の内容にリューがキレた。
その瞬間、何かが一気に沸き上がり、黒い衣のようなものがリューを包み込んだのである。
全身の感覚がどこか鋭くなったようであり、逃亡したその人物の居場所がわかり、怒りに任せてリューはその者のところへ、黒い衣の力なのか飛行して、そして見事に叩き潰したのであった。
その人物が抱えていた、ムーンナイトドラゴンの卵も巻き添えにして。
「なんでこういう力が出たのかはわからないけど‥‥‥‥とりあえず、卵が無事でよかった」
【下手したら一緒に潰していましたけど‥‥‥潰し分けできていましたからね】
どういう原理なのかは不明だが、その潰した相手のみを狙えたようであり、卵は通過し、無事に奪還できたのである。
この力も同時に消え、何なのかは不明だが、まぁ後で検証すればいい話だ。
【でも主、それ本当に無事なのピキッツ?】
‥‥‥中身の方だけがつぶれている可能性をピポに指摘され、その場の空気が重くなる。
『あ、それは大丈夫のようです。検診してみたところ、無事に成長中デス』
いつのまにか聴診器をワゼが持っており、検診しながらそう言った。
とにもかくにも、無事にムーンナイトドラゴンの卵を奪還できたのだ。
とりあえず、その卵をムーンナイトドラゴンにリューたちは渡した。
「これで依頼完了。無事に卵を奪還できたぞ」
ハクロの背中に背負われながら、リューはそう言った。
【ああよかった、ついに卵が戻ってきてくれた!!】
涙を流し、喜ぶムーンナイトドラゴン。
ちなみに、魔力の供給が途絶えたから卵の命の危機が危惧されていたのだが、そちらもどういうわけか大丈夫なようだ。
どうもあの潰す魔法を使った瞬間、卵を素通りしつつ、適切な魔力が流れ、命がつながったようなのだ。
‥‥‥一歩間違えれば、過剰供給で卵爆散の危機もあったけどね。
【これでようやく巣へと戻れる。また悪しき人間が来たら困るので場所を変えるが、あなたたちのおかげという事は忘れないだろう】
そう言いながら、ムーンナイトドラゴンは首を曲げ、そっと自分の体の鱗を一枚ちぎって加え、そしてリューたちの前に置いた。
【これはその礼も兼ねた心からの品だ。ぜひ受け取ってくれ。そして、さらばだ】
そう言い残し、卵を抱えてムーンナイトドラゴンは飛び立ち、その場を去って遠くへ行くのであった。
姿が見えなくなるまで見送った後、その鱗をリューたちは回収した。
「なぁ、これで卒業試験の条件を満たしたよな?」
【ええ、間違いないですね。ドラゴンの素材ですからね!】
【これで後は帰ればいいのピキッツ?】
【そういう事になるカナ。何はともあれ、何とかなってよかったカナ!】
皆それぞれ、ようやくこれで学園の方に戻れるという事で喜んでいたところで、ランが口を開いた。
【ところで主様、あの者たちはどうするのだよ?】
ランが指さした先には、縛られて気絶中のディクロンダイクの一味に加え、まだ怠けて動かないシーホース2頭がいた。
リーダーの人は残念な末路を迎えたとはいえ、こいつらをどうするのかリューたちは忘れていた。
「そういえばどうしようか?てっきりあのムーンナイトドラゴンが処分するかと思っていて、忘れていたよ」
【そもそもこの人たちってどうさばけばいいんでしょうかね?分かっているだけでもかなり罪が重いですもん】
このディクロンダイク一味はどうやら数多くの犯罪にも加担していたようで、ミニワゼたちから集めた証拠をワゼが取り出した。
それに、今回の件でもしドラゴンが卵を探し、街を襲っていたらなどという最悪のケースなどもあったので、彼らの罪は非常に重いであろう。
『そのあたりは、まぁ私たちの管轄外でショウ。しかるべきところに引き渡し、それらの罪を述べさせ、証拠品をすべて引き渡せば、あとは関係ありませン。弁護する声もないでしょうし、軽くて強制労働での鉱山送り、重くてコレでしょウ』
そう言い放ち、ワゼは自分の首を斬るような動作をして、何を言いたいのかを皆に伝えた。
「まぁ、しかるべきところに引き渡しに行けばいいか‥‥‥一番近いのはどこだ?」
『ゆったりとした馬車の速度で2時間かけたところに、辺境都市があるようです。そこで宿をとりつつ、引き渡しをしたほうが良いデス』
そのワゼの提案に皆がうなずき、馬車を進め始めた。
なお、ディクロンダイク一味は全員なにかしらの重犯罪を行っていたようでもあり、超・きつい態勢に固定して、先ほどまでドラゴンが寝かされていた荷馬車の方に乗せられ、シーホースたちは仮契約だったようで、その主だった人物を叩き起こしたのちに契約を解除させ、野山に解き放つのであった。
「‥‥‥って、仮契約を破棄してモンスターを解き放っても良かったかな?」
『大丈夫でしょウ。人を襲わなければ、攻撃されないでしょうシ。‥‥‥まぁ、変な性癖もあるようですので、野に変態を2頭解き放ったと思えばいいでしょウ』
【それ大丈夫じゃないですよね!?言葉にしてみたらかなりやばいのですが!?】
思わずそのワゼの言葉に、ハクロが勢いよくツッコミを入れるのであった。
うん、まあ何もなかった事にしよう。そんな言い方をされると不安しかないけど、気にしたら負けだよね?
ムーンナイトドラゴンの卵を奪還し終え、罪人のディクロンダイク一味の引き渡しと宿を得るために、リューたちは辺境都市へと向かう。
そこは小さな辺境都市だが、きちんと手入れが行き届いていることを願いたい。
‥‥‥そして、今回再び出たリューのあの黒い衣のようなもののとはいったい何だろうか?
次回に続く!!
‥‥‥ディクロンダイクのリーダーの人?実はまだ死んでいなかったりするんだよ。
「とはいえ、地面にめり込んで地上絵状態の奴をどうやって運べと」
【めり込んでというよりも、人間がこうも薄く引き伸ばされ、色々と噴き出ているのが気持ち悪いのですが‥‥‥】
【R18クラスのグロさカナ。これはお見せできないカナ】
【ぺらっぺらピキッツ】
【悲惨な末路だと思うのだよ】
『辛うじて生きているようですが、もはや時間の問題デス。明日の朝辺りには息絶えているでしょウ』