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吹雪を起こし、一夜明けて

中身としては少々短め?

SIDEリュー


 流石に粘液をだらだら流しまくるファイの状態から、長距離移動がしにくい状態であったので、未だに吹雪に見舞われている場所から少し離れた地で野宿した翌朝である。



「う~ん」


 目を覚まし、起きたリューはふと何か違和感を感じた。


 背後の方に何やらものすごくヌルっと…‥‥



「って、ファイの粘液があふれているじゃん!?」


 朝っぱらから、辺り一帯がファイの粘液まみれになっているという、とんでもない目に遭遇したのであった。


 どれだけの量が彼女の中から出ているんだよ‥‥‥





『あー、完全にあふれていますネ』


 ファイの垂れ流し対策のために、ワゼは昨夜、素早く棺おけのようなものを作製し、その中にファイを寝かせた。


 粘液があふれ出ていたので、このままだと寝ている間にも出る可能性が高い。


 朝になって粘液まみれの大惨事を避けるために、その中で寝かせることによってある程度の量まではその中に貯め、余分な粘液はミニワゼたちがあふれ出さないようにバケツリレーでちょうど近くに流れていた小川に流して、一晩それで持たせる予定であった。


 一晩ゆっくり眠れば、おそらく体の調子も治って何とかなるだろうと思っていたのだが…‥‥どうやら予想以上の量があふれ出たようで、ファイが寝ている棺おけのような寝床には、なみなみとたっぷりの粘液があふれていた。


 作業していたはずのミニワゼたちを見ると、全員ぐったりとしており、どうやら許容量オーバーでオーバーヒートしてしまったようである。


 ワゼがミニワゼたちを中に入れている間に、その粘液であふれた棺おけの様子をリューたちは見た。



「‥‥‥一応、もう流出は止まっているようだけどさ、あれってファイ生きているよね?」


 どう見ても、水没しており、粘液は流れ出ていた分とは異なって、透明性はなく、かなり濃い青色に変色していた。


 形を整えれば某RPGのスライムっぽい感じである。


【一応、あれでも水中で呼吸が出来るそうですけど…‥‥粘液の中ってどうなのでしょうか?】


 安否を確かめたいが、その中に手を突っ込むのは少々勇気がいる。


 あの粘液の中に水没しているのは間違いないのだが、取り出すにはあのヌルヌルヌメヌメの中に…‥‥うん、ちょっとぞわっとするほど寒気がしたな。


 というかそもそも、つかめるのだろうか?不透明過ぎて仲が見えないし、変な部分をつかんでも困る。



【ピキッツ?あれれ?】


 ふと、なにやらピポが気が付いたようで、そっとその粘液を触った。


【主、これ固まっているよー!】

「何っ!?」


 恐る恐る触れてみると、まるで寒天のようにプルンとした感触で、固まっていた。


 どうやら時間が経ち、近くで大吹雪が起きているので空気が冷えたから、そのせいでゆっくり固まったようである。


「って、それじゃあ液体から個体になっているから大丈夫なのかよ!?」

【急いで出しましょうよ!!】


 液体ならまだしも、完全に固体になっている中での呼吸は無理に近い。



 慌ててリューたちは棺おけを破壊し、中身を出し、


ずぼぅっつ!!

「うわっつ!?」


 まさかの手が付き出てきた。


 これ、地面とかだったら軽くホラーだが‥‥‥まぁ、生存しているみたいである。


 どうやら起きたようで、そのままもう片方の手も出て‥‥‥



【…‥‥!?】

「あ、これもしかして出られない状態か!?」


 じたばたと手を動かす様子を見て、リューはそう察した。


 ファイの手を握り、引っ張り上げようとしたが‥‥‥


「なにこれすっごい抜けないんだけど!」

【私も手伝います!!】


 ハクロが後ろにくっつき、一緒になって引っぱったが…‥抜けない。


【ピキッツ!!手伝うよ―!】


 ピポが一緒になってもまだまだ抜けない。



‥‥‥なんだろう、大きなカブという絵本を思い出すな。


 とりあえず、一人ずつ追加して引っ張っても埒が明かないので、この際全員で一気に引き抜くことにした。


「「「【【【『えええええええええええぃぃぃぃぃぃ!!』】】】」」」


 リュー、エルゼ、アルべリア、ハクロ、ピポ、ラン、ワゼの皆で協力し、引っ張り上げて‥‥‥


ズボッツ!!


「よし!抜け‥‥‥た?」


 手ごたえありと思って見たら、手だけが抜けていた。


「やべっ!?手だけが抜けちゃった!?」

【腕が取れてしまったのですか!?】

「なんでそうなるのですわ!?」

「うわぁ、見事に抜けておるのぅ…‥」

【って、よく見たらそれ中身が無いのだよ】


 よく見たら、物凄く皮の薄い手袋のようになっており、まだ手はそのゼリー状に固まったところから生えていたのであった。


 どうやら表面の部分だけが抜けたようで‥‥‥あれ?でも何か変じゃない?


「脱皮?」

【いやそれはたぶん違いますよリュー様。確かに脱皮をするモンスターもいますけど、ファイのようなスキュラはしませんって‥‥‥普通ならば】


 リューの言葉に、ハクロがそう返答する。


 だがしかし、この状況は普通ではないので‥‥‥あながち間違っていないようであった。



―――――――――――――

SIDE神聖国エルモディア



 ちょうどその頃、エルモディアにある神殿内では大騒ぎが起きていた。


「なんだと!?」

「魔封印石が全部なくなっていただって!?」

「はい、間違いありません!!」


 これまで甘い汁をすすって来た者たちは、その報告を受けて焦った。


 もうすぐ他国との戦争が始まりそうであり、間者とかに持たせて無差別的に封印を解かせ、各地で騒ぎを起こしている隙に一斉掃討などという夢物語を描いていたのだが、どうやらその肝心かなめの魔封印石がすべてなくなっているのだという。


 

 調べてみると、どうやら昨日のうちに誰かが盗みだしたようで、その人物はこの神殿内の中で、私腹を肥やしていた者の一人であることが判明した。


 無能というか、同じ穴の狢様なモノたちは、その者が何をしようとしたのかが容易に想像が付いた。


 おそらく、自分で盗み出した後にはそれで交渉して他国に亡命するか、もしくはそれらを操れるなどという傲慢な考えで世界征服を企んでいるだろうという事を。


 だがしかし、盗まれたことに気が付くまでに時間がかかってしまい、もうどこにいるのかもわからないのだ。


 このままでは、開戦した際に切り札もなく、己の手駒だけでやるしかないという危機的な状況にあるのだと、その場にいた無能な者たちでも理解できてしまった。


「預言者が行方不明、その上に魔封印石が盗み出されて、この国はもはや神にも見放されているというのかぁぁぁぁ!!」


 そのあまりの不運に嘆く者のその叫びはまさにその通りであっただろう。



 とにもかくにも、もう遅いのかもしれないが、急いで神殿内の者たちは動かせるだけの人員をフルに動かし、その行方を探り始めるのであった。


 このままでは、自分たちに未来がないことをいやでも理解していたのだから…‥‥

神聖国、とっくの昔に色々と終わっているような気がする。

崩壊が見えてきたけど、もうなすすべもないだろう。

一方、リューたちの方でもファイに何やら変化が起きたようで…‥‥

次回に続く!!


‥‥‥ちなみに、後で粘液成分をワゼが解析したところ美容効果もあったのだとか。

『これって搾り取れば、一儲けできそうな感じですよネ』

「そんなに価値がある粘液かこれ?」

「価値があると思いますわよ?つやつやお肌を保ちたいのは誰しもが思うのですわ」

【むしろ、なんか納得いきましたね。ファイは自らの粘液でお肌をつやつやに保っていたのですか】

【ピポならもっときれいになるかなー?】

【いや、ピポはフェアリースライム‥‥‥スライムのお肌がつやつやって今以上にどうなるのだよ?】

「神聖国内の肥え太った醜い豚共が目を付けそうなものじゃよな」


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