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色々と変装準備

そのまま入国するのは愚策かな?

SIDEリュー


「‥‥‥いよいよ明日、神聖国エルモディアに到着する」


 学園から飛び立って数日後、夜間の飛行は危険故地上に降り立ち、野宿の用意をしながらリューはそう話を切り出した。


「国王の命令を大きく3つに分けるとこうなるだろう」


――――――

1:とりあえず潜入と国内情報収集。


2:戦争中に出されるとまずいので、エルモディア内の魔封印石の回収もしくは破壊。


3:ついでに、相手側の戦力の激減を狙え。

―――――――



「まずは国内にはいるのだが、その時に俺達の事で迂闊に目立つのはまずいだろうな」

【とはいっても、この大人数だとかなり目立ちますよね】

「というかそもそも、皆さんの場合人じゃないですからね‥‥‥その個所がどうしても目立ちますよ」


 リューたちにとっては普段から見慣れてはいるが、そもそもハクロたちの姿は…‥‥あまりいい表現ではないが、異形さが目立つ。


 美しい半面、白い蜘蛛の下半身や蒼いタコ足、妖精のような小さな体躯に、大きな翼と露出が高い踊り子のような衣服をまとっているなど、かなりバラバラである。


 

「今回の神聖国に入るのは、出来れば悟られたくないからなぁ‥‥‥」


 そもそも、今更だけど国王陛下、人選ミスじゃないか?



 思いっきり目立つ様なメンバーを、今まさに戦争前の敵国内に侵入させる点で相手側の警戒も最大級になるであろう。


変装し、それとなくごまかせるのが一番なのだが…‥‥


「ハクロ、ファイ、はっきり言ってお前たちが一番この中で目立つだろうし‥‥‥‥今回は馬車の中で待機してくれ」

【ううっ、分かっていましたけどちょっと辛いですね】

【ま、私たちがこの中で一番目立つ部類になるカナ】


 蜘蛛の下半身及びタコの足を持つハクロとファイがこの中で一番目立つので、今回は馬車の中で隠れて大気である。


 幸いなことに、この乗ってきた気球付き馬車は大型であり、彼女達が隠れてもそう見つからないであろう。外装を少々変えれば、不審な馬車には見えないはずである。多分。


…‥‥中に何か入っているとか考えて、盗人が来たとしても返り討ちに出来るだろうしね。


 あ、その場合馬車というよりも人喰い箱(ミミック)ならぬ人喰い馬車になるのかな?



 そんなわけで、国内に入って動くのはリュー、ヴィクトリア、ピポ、ワゼ、ファイの面子と決まった。


 残りのハクロたちは、とりあえず馬車内の方で待機。緊急時に動いてもらう。


『表向きの変装としては、とりあえず他国のどこかの貴族モドキで良いですかネ?偽装し、観光に来たとでもいう感じで入ればいいと思われマス』


 ついでに、ここ最近の国情勢から金が必要そうなので大金を払うかもしれない貴族が来るのは歓迎されるだろうし、万が一怪しまれそうになっても、戦争が起きたらここが一番安全そうだったからなど言って、ごまかすことはできるだろう。


 まぁ、全く安全ではないだろうけど。


『ご主人様たちがその変装で表に立っている間に、ミニワゼたちで内部調査を行えマス。どんなところに、どのような不味いネタだろうとたちどころに探り当てるでしょウ』

「それなら最初からワゼだけでも良かったような…‥‥」

『それは言わないお約束デス』




 とりあえず、入国に関しても注意点などがある。


「貴族に変装するとして、細かい設定だが‥‥‥」

『怪しまれないようにというのなら、ご主人様が当主、ヴィクトリア様がそのご婦人として、ピポは人形のふりを、私はおつきのメイド、そしてランは適当なサキュバスの妻公認娼婦とすればいいでしょう』

【なんかその扱い一番ひどくないかなのだよ!?】


 流石にそんな設定は嫌だったのか、ランがそう叫んだ。


 サキュバス・ファントムのランは正確に言えば少々サキュバスとは違うのだが、身体的特徴は似ているので、ごまかし方としては間違っていないような気もするけどね。


『でしたら、…‥‥(自主規制)な役でどうでしょうカ?』

【それを選ぶぐらいだったら、娼婦の方でいいのだよ…‥‥サキュバスって元々そういうことをする専門だし、おかしくないことはないけど…‥‥】


…‥‥ワゼの出した案に、速攻でランはその案を蹴ってさっきの案に賛同した。


 うん、そのほうが良いんだろうけど…‥‥ワゼ、お前何処でそんな言葉を入手したんだよ。


『そうそう、馬車内に待機してもらうハクロやファイには、念のために、あることを頼みたいのですガ』

【?】

【出られない身の私たちにも何かあるのカナ?】


 ワゼのその案に、ハクロたちは耳を傾け、了承する。


 話し合い、それぞれの役割を確認しつつ、夜が更けていく。


 そして翌朝、リューたちはその設定で神聖国内に入国するのであった…‥‥





――――――――――

SIDE神聖国エルモディア


「「「「「‥‥‥」」」」」


 エルモディアの首都、その中央にある大神殿の内部で、国内の政治を担っている者たちは皆渋い顔をしていた。


「‥‥‥周辺諸国からの同盟破棄、及びに貿易停止など、わが国はただいま物凄い窮地に立たされています」

「この窮地に付け入るのか、他の国々では兵力が集められているというぞ!!」

「ええいもぅ!!どうにもならんのか!!」


 いらだちを隠せず、うっぷん晴らしも兼ねて大声で叫ぶ者たち。



 現在、神聖国内の厳しい現状報告がずっと上がっており、その解決策が思いつかないのでイライラしているのである。


 このまま放っておけば、今後ますますこの国は窮地に立たされ、そして税収なども減ってしまい、甘い汁をすすっているような者たちにとっては死活問題である。


 かと言って、いまさら自分たちの生活や意識を改めようとする機など彼らはさらさらなく、第3者の目線で見れば、誰もがこの国の政治を担うところが腐敗しているというのが分かってしまう現状であった。



 それをどうにもできないのが、彼らがいかに無能なのかを示しまくっているのだが、生憎この場では責任のなすりつけあいばかりで、その事を指摘する者はいなかった。


「このままでは他国からこの国が攻められ、食いつぶされるぞ!!」

「だがしかし、兵力差が違い過ぎるなぁ」

「‥‥‥いっその事、前線にありったけの魔封印石を置いてしまうのはどうだ?」

「おお!!それなら中にいるモンスター共を出して、仕向けることが可能なはずだ!!」

「馬鹿を言え!!その中に封じられているのはどれもコントロール不可能な大災害を起こすレベルの奴らばかりだぞ!!他国の内部にて解放し無差別攻撃をさせる手段としては有効だが、最前線でそんなことをやればこちらにも被害が出るだろう!!」


 名案と思いついた者に対して、すぐさま飛ぶ非難。


 かと言って、これといった案もないので、その場の話し合いは平行線をたどる。


…‥‥戦争前に、他国で解放して暴れさせて兵力を減らすなどと言った案も出そうものなのだが、批判するばかりでその案を出すようなものはいなかった。



 そんなときである。


「た、大変大変大変変態大変ですみなさまぁぁ!!」


 突如として、その場に誰かが走って来た。


「どうした!」

「繋いでいた鎖にいたはずの逃げ出してしまったようです!!預言者様がどうやら壊れていることから奥の間に行方不明になりました!!」


 どうやら神殿内にいた騎士のようだが、その言動が支離滅裂であった。


「落ち着け、そしてきちんと話せ!」


 とりあえず何か大変な事なので、一旦その場にいた者たちは話し合いを止め、その報告を冷静に効くことにした。


「奥の間にいたはずの預言者様が行方不明になりました!!繋いでいた鎖が壊れていることからどうやら逃げ出してしまったようです!!」

「「「「「‥‥‥な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」」」


 冷静になって、落ち着いて告げられたその報告に、その場にいた全員は一気に焦った。



…‥‥神聖国エルモディアには、預言者と呼ばれる存在がいる。

 

 前任のヨルバァと言う者がいたのだが、その者は十数年前に亡くなり、そしてつい最近やっと新しい後任者ができて、その育成に彼らは心血を注いでいたのである。


 大事にするのではなく、自分たちに都合のいい預言をさせることで甘い汁を吸うためだけに。


 その為、教育のために神殿内で拘束・監禁をしていたのだが…‥‥どうやら、その拘束具が破壊されたようである。


「一体どうやってあの鎖を外したんだ!?それに隷属の首輪もつけていたはずだ!!」

「そ、それがその首輪も外されており‥‥‥まさに神の御業としか言いようがありません!!」


 とにもかくにも、この事は彼らにとって非常にまずい。


 外部にこの情報がばれたら、まず間違いなく非難や罵声が浴びせられるだろうし、隷属の首輪までバレたら他国からも責められ、ただでさえやばい状況に、火に油を注ぐ。


「急いで外部に漏れないように情報を封鎖しろ!!そして誰にもバレぬように、あの預言者の小娘をひっとらえて連れ戻しにいけぇぇぇぇぇ!!」


 そうその場にいた者たちは各所に命令し、慌てて預言者を連れ戻すために動き始めるのであった。


…‥‥そもそも、そんな大声で叫んでいる時点で、外部に漏れていそうなものだが、それに気が付かないのは焦っていたからか、それとも無能だったからか。


 どちらにせよ、遅かれ早かれ起きていたことであり、この国が危うくなるのは誰の目にも分かっていたはずの事であろう…‥‥。

愚者は慌て、賢者は状況を冷静に定める。

果たして、この逃亡がこの国滅亡のきっかけになるのだろうか?

というか、この国に賢者とかいなさそうなのは言うまでもない。

次回に続く!!


‥‥‥というか、同じ神殿内にいるのに、すぐに気が付かなかったというものどうなのだろうか。

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