ちょっと変わった移動手段
前々から検討していた方法を実践。
馬車での移動も、マンネリ化したしね。
「‥‥‥思った以上に順調にできてちょっと怖いな」
【いつもならこの辺りで何かありそうなものですけどね】
ランの過去話にて、ちょっと国王へ報告するためにリューたちはエルゼも連れて、王城へと向かっていた。
夏休みのような長期休暇ではないが、一応国王陛下へのご報告という事で休学届を出したので、問題はない。
だがしかし、以前にもあったように、道中で盗賊が出てきたりしてその対応にいちいち疲れるというのが問題であった。
そこで今回、初めてある移動手段を利用したのである。
その手段とは‥‥‥
『気圧、気温共に健康に対して影響が出る値ではありません。もう少しだけ上昇し、風に乗ってもいいでしょウ』
「わかった。ピポ、もう少しだけ燃えて上昇してくれ。ランは下から見えないようにごまかしを頼む」
【【了解!】】
そう元気に二人は返事して、リューの指示に従った。
『高度やや上昇、この辺りなら平気でしょうが‥‥‥‥最初はご主人様のこの奇想天外な発想に、さすがに驚きましたネ』
「そうですわよねぇ、まさか空中を移動する方法なんて考えませんでしたもの」
【この手段なら確かにそんじょそこいらの盗賊が襲えるわけもないカナ】
皆がそれぞれの感想を口にしつつ、リューがとった移動手段に関して感心していた。
‥‥‥盗賊が出たりするのなら、陸路じゃない方法で行けばいいんじゃないか?
ふと、リューが思いついてとった方法。
それは、馬車に気球を付けて空路で向かう方法であった。
重量などは、リューの魔法によって皆極限まで軽くして、風に吹かれてギリギリ飛ぶほどまでになっている。
馬車そのものは、ハクロにお願いして皆がゆったりと乗れるほどの大型サイズの物を作製してもらい、その中に入り込む。
あとは、ハクロの糸で作成した気球の大事なあの上の布の部分を取り付け、ピポが熱源代わりに発火することで、空気を温め、気球を上昇させたのである。
進行するには風が必要だが、それはファイの魔法で補って進みつつ、ワゼが周囲の風の流れを読んで、それに乗ってうまい事目的地へと気球を流すのだ。
あとは、下から見えたら色々と厄介ごとになる可能性もあったので、ランによって見えないように幻術というか、幻を見せる霧で全体を覆い、下から観測は不可能となった。
空路だから地上の盗賊たちも襲えないし、魔法とかで撃墜しようにも観測不可能。
そして風に乗れば馬車以上速さで進める上に、空に障害物なんてあまりないから陸路で行くよりも早く目的地へたどり着けるのである。
ちなみに、夜間飛行は流石に危険なので地上で泊まるのだが、下降する際には全員の重さを少しづつ戻していけば問題ない。
…‥‥絶対に口に出すつもりはないが、ハクロやファイは大型のモンスターでもあるから、ちょっと皆より重いので、率先して戻したほうが早く下降するんだよね。そもそも軽くしないと、この気球って飛ばないしなぁ‥‥‥
何にせよ、画期的な空中を利用する移動手段に、皆は空の旅を楽しめたのであった。
「ピポの位置が少々固定になるけど、休憩時に着陸して陸路を行けば問題ないしな」
『元々馬車での運用をすることが可能ですので、空陸両用ですね』
ちなみに、嵐や雨などの場合は空も荒れるので、その場合は陸路となり、馬が必要になりそうものだが、その時にはハクロたちがけん引してくれるようである。
馬以上に素早いし、ファイの地面を凍らせて進む方法にも対応できるようにスケート靴の刃のような仕掛けも施しているようだからね。
特に、移動するためのけん引する手段にはもう一つある。
それは、ワゼの持つミニワゼたちだ。
念のために、馬車に見せかけるように精巧な馬の模型を作製してもらっており、その内部にミニワゼたちが潜り込んで、通常の馬車のように引かせて偽装することも可能である。
なかなか画期的な、皆で移動できる移動手段。
だがしかし、唯一欠点を上げるとすれば護衛を使えないことであろう。
エルゼも同乗しているが、本来彼女は王族であり、馬車での移動にも護衛が付きものであった。
とはいえ、空中を移動する護衛がおらず、その為、今は無防備に近いのだが…‥‥
「そもそも、このメンバーに襲撃をかけるような阿保っていますの?」
「うーん…‥‥見た目に騙されるような馬鹿ならいるかも」
【ただの人間相手ならば楽に撃退できますけどね】
【ピキッツ、急所一撃で撃沈だよー】
【襲い掛かって来たとしても、変なポーズで凍らせてやるのも面白そうカナ】
【幻を見せて迷わせたり、一生抜け出せない夢に捕えることも可能なのだよ】
『ま、戦力差が分かる人なら逃亡するでしょウ』
…‥‥護衛いるか?考えてみればとんでもない実力を持つ面子しかいないぞ。
「ま、空を飛んで攻撃するような輩がいないとも限らないけどな」
【縄張りがありますしね。‥‥‥でも、そういえば飛行可能でなおかつ襲撃するようなモンスターって何がいるんでしょうか?】
ふと、ハクロがその疑問を口にした。
言われてみれば、空に出るモンスターというのをあまり考えていなかったのである。
「空で襲ってくるとすれば…‥‥一般的にはワイバーンとか?」
――――――
『ワイバーン』
ドラゴンのようだが、全くの別物。どちらかといえばトカゲに羽が生えたものに近く、凶暴性が高い。牙や爪に猛毒を持っているものもおり、大変危険。
ただし、卵の頃から育てた場合は懐きやすく、騎乗可能になったりする。
――――――
「でも、山奥とかに生息していますし、滅多に出くわすこともないそうですわね」
【グリフォンとか、ハーピーとかならまだ出会う可能性はありそうカナ?】
――――――
『グリフォン』
頭と翼と後ろ脚は猛禽類、胴体と尻尾と前足は肉食獣のモンスター。
「大空を統べる悪魔」として恐れられることもあるのだが、知能が髙く基本的には攻撃を仕掛けてきた相手のみにしか攻撃を加えない。
雛時代が可愛らしいようで、その羽毛は多額の金で取引されるほど高品質でもある。
『ハーピー』
人間の女性に似たモンスター。手が翼であり、大半が羽毛に覆われて、足は鳥そのものである。
雌しかいないので繁殖には他種族の雄が必要となり、若いうちに攫って生涯の伴侶にしてしまう事もあるが、大抵うまくいっているので問題は特にない。群れを成して集団で各地を渡っていたりもする。
――――――
他にも色々いるだろうけど、出くわしたくはない。
何にせよ、空の旅はなかなか快適な状態で、特に問題もなく、王城がある首都までリューたちはたどり着けたのであった。
「何も起こらない道中って、平和で良かったなぁ…‥‥」
【なんか、リュー様がいながら何もなく無事に到着できたことから、後でツケがきそうですけどね】
「ハクロ、余計な一言を言うなよ…‥‥」
なにやらフラグが建った気もしなくはないリューたち。
王城にて、アレン国王にランの話であった隷属の首輪などの話を報告する。
国際的な問題に発展しそうなのだが、こういう時に限って本当に馬鹿が出るというか…‥‥
次回に続く!!
‥‥‥ちなみに、ランとピポは炎や翼で飛行可能なので、いざとなれば空中戦を担当。他の皆だと援護射撃ぐらいかな。
【でも、戦闘していると熱せないから気球落ちるピキッツ】
『大丈夫デス。私の腕が超強力火炎放射器になるように改良を加えましたので、いざとなればある程度持ちこたえることが可能になっていマス』
「改良って‥‥‥材料とか大丈夫なのか?」
『そのあたりは秘密デス。ま、いざとなれば私も空中戦に参戦しますネ』
…‥‥参戦できるのかこのメイド。もう何でもありじゃないか?