どこにいても同じ
「あぁ、、」
朝、目が覚めた瞬間から憂鬱な1日が始まる。
誰に見られるわけでもない寝起きの顔を鏡で確認する。
今日もブサイクだ。
用意されたご飯を食べ、慌てて着替える。
今日は一冊の本を手に持ちカフェに行くと決めている。
もちろん職業探しの旅の一環である。
美意識が強い私は、髪を整えブサイクに保護フィルムを貼るかのように化粧をしていく。
さあ家を出よう
とした瞬間また憂鬱な気持ちが襲ってきた。
「これから外出するのだから邪魔しないでよ」
憂鬱くんを跳ね除け、引っ張られてたまるもんかという気持ちだった。
音楽を聴きながら40分くらい歩き、目的地のカフェに到着した。
イヤフォンを外し、いい1日が始まる予感
完全にお気楽モードになっていた。
いつも家でwebの求人サイトを見ている自分とは少し違う気がしたが、家にいる自分が外に出たところで何も変わることはなかった。
本をしばらく読んでいると、周りの視線がイタイ。
ただ本を読んでいるだけなのに、傷口が広がっていくようで耐え切れなかった。
「若いのに、こんな時間にカフェにいるなんて」
「一体何してるのかしらね」
誰が言っているわけでもないのに、沢山の視線からそう読み取ってしまった。
本を閉じ、急いで携帯を開きweb求人サイトにまた目を通す。
応募する勇気もないのに仕事を探す。毎日見ても一緒だ。見れば見るほど、自分は世間から追放されている孤独感を味わった。
誰とも目を合わせないまま、駆け足でカフェを出た。
持病のせいで平衡感覚がわからなくなった。
しかし、歩き続けた。
苦悶の表情で、急いで家に帰ろうと思った。
競歩の選手並みのスピードで坂を登り、左に人がいたら右により、右に人がいたら左によりを繰り返しながら歩いていった。
雨が降ってきた。傘なんてもっていなかった私はさらに駆け足で坂を登る。
と思ったら、また太陽が見え一気に明るくなった。
お天気雨というものだろうか。苦悶な表情が戻ることはなかった。
しばらく会っていない姉と再会したら、
今の私はきっと睨みつけてしまうだろう。
どうしたのと怯える様子が目に浮かぶ。
なんでこんなことになってしまったのだろうか。
家に着くなり、鏡を見る。
怖かった。違う私が目の前に立っていた。
それがなぜか快楽でもあった。
表情は正直である。
心の中の自分をわかりやすく表にだしてくれる。
フラフラしながら、ご飯を食べ眠る。
起きると夕方の4時だ。
時間のスピードが本当に遅かった。
鏡を見なくても、あの苦悶の表情をした知らない私はいなくなっていたことがなんとなくわかった。