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健全な短編集

食糧問題解決までの工程

作者: 海原 川崎

 とうもろこし。

 人類が肉体を製造するのを止め、記憶や人格をデータとして管理するという選択肢が追加されたこの世界で、とうもろこしは機械の燃料の役割を果たしており、肉体を手放すことを拒んでいる人の食料にもなっている。

 とうもろこし以外の食料は作れない。かつて地球で発生した大災害のせいで食料を生成できなくなってしまったのだ。

 だが、とうもろこしを作り出す。とうもろこしマシンが存在していたのでこの世界はなんとか周り続けている。

 発電所の様にとうもろこしを生成するマシンは、多大なエネルギーを使って空間にとうもろこしを生成する。

 何個も何個も作り機械の燃料となり、人間の食料となるのだ。

 食料もとうもろこしを使って別の食料を作る。とうもろこしから人参、とうもろこしから牛肉、色々な物である。


 ある日、とうもろこしマシンが異常をきたし機能がストップしてしまった。

 再稼働が行われたのが三秒後。だが再稼働をした際にとうもろこしが生成される空間が変わってしまった。

 それはとある人間の口内である。

 再稼働を何度行っても生成する空間は変化せず人間の口内に固定されてしまった。



一日目

 どうやら口からとうもろこしが出るようになってしまった。原因は知っての通り。

 拒否権は無い。拒否をすると全機械が停止をしてしまう。

 奴らが言うには空間を変える方法は別のとうもろこしマシンを作って、自分の口内に繋がっているマシンを停止されるしかないそうだ。

 いつ頃出来るのかはまだ、判明していない。

 とある部屋に隔離されてしまった私はとうもろこしを出す。


二日目

 辛い。こんな事が毎日続くのか。拒否権は無い。人類の為、機械の為私が犠牲にならないといけないのか?

 突然襲い掛かってくる吐き気のない苦しみを感じながら必死にとうもろこしを吐き出す。妊娠というものがあったらしいが、それよりは苦しくないのだそうだ。

 だが、苦しい。助けてくれ。それとこれとは別の話であり私にはこの苦痛が一番の痛みなのである。

 そうしてまた口からとうもろこしが出てくる。


三日目

 肉体を手放すことを拒んだからこんな事になってしまったのか?苦しみから開放されない。肉体を拒む宣言をしたのだが受理されず、口からあれが出てくるのだ。

 別のとうもろこしマシンの完成はいつになるのかも判らない。少なくとも数年はかかるだろう。

 もう嫌だ。明日も肉体を手放す事を許して貰おう。

 それが出来なかったら死のう。


 いつからか日にちを数えなくなった。今も出し続けている。聞いた事で教えてもらえる日にちが信用できなくなってしまった。

 今日が何日であれから何日経ったのかも判らない。

 ただ、自殺をしようとすると体の自由が効かなくなり口から固形物が出てくる。

 苦しい。痛い。

 もういやだ。誰か殺してくれ‥。



 それからこの人間は永遠に生かされている。とうもろこしマシンは何台も出来ているが、一台停止させることで発生する損失と1人の肉体の自由を比べた結果、彼の肉体を半永久的に使用する事が決まった。

思考を停止させた今でも彼は口からとうもろこしを出し続けているのである。



 『というように勇敢な彼は皆様の為に喜んでとうもろこしマシンの一部になったのでした。』こんな言葉で締めくくる事実を歪曲したお話を知らない者などいない程広まり、一部ではこの人間はとうもろこし様と崇められる程になった。



きっと世界は1人の人間が永遠の苦痛に襲われる代わりに、自分達の生活が壊れないならそれを容認するでしょう。

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