泉川リコ 2話
「寮生活、ねえ」
どうにも独り言が出てしまう。
家の都合で両親が地元を離れることになった私は、この学校の寮で暮らしていた。
かばんを勉強机の上に置いて、そのまま真っすぐ。ベッドに腰かけて、制服のまま後ろに倒れ込む。しわになってもお構いなし。
二段ベッドの床の裏側が、どこか視界に圧迫感を与えていた。
家族がいないと、こんなにも静かなのか、と新鮮な驚き。ある意味、一人暮しの予行練習になっているかもしれない。
本来は、もうひとりルームメイトがいるはずだけど、この部屋の住人はいまだ私だけだ。
そんなに大きくない寮だから、いずれ誰かが入ってくることは簡単に予想がつく。
はたして、人見知りの私が対応できるだろうか。
まあ、心配したってしょうがない。あいさつだけ忘れなければ、仲よくなることはないけれど、仲が悪くなることもないだろう。
……たぶん。
食堂でご飯を食べて、友達とLINEをやって、比較的仲のいいクラスメイトとロビーでおしゃべり。ごく普通の日常だ。
高校生になって、何かが変わると思っていた。
でも、中学と変わらず、ありのまま。
……でもさ、人生ってそんなものじゃない?
「ねえねえ、どんな子だと思う?」
ユウが目の前で、友達グループと談笑している。
話題の主役は、きょうやってくる転校生についてだった。
申し訳ないけれど、どんな子がこようが、同じ部屋にはなってほしくないなぁ、と正直に思う。ひとりのほうが気楽だ。
ちら、と斜め後ろに視線をやる。空いている席が、教室の最後尾にある。おそらく、あれが転校生とやらの指定席だろう。
興味なし。
それがいまの私の正直な気持ちだった。




