出撃!内閣府直轄対超常現象対策特別実働部隊第一班スイーツ隊 第一話 スイーツ隊出撃! Bパート
「では、状況を説明します」
上司のさらに上から送られてきた、今回の指令書をもとにムースが状況の説明をする。
「今回は街中に逃げ込んだウサギのような生物(?)の捕獲だそうだ」
なんだ、生物(?)って。全員そう思ったらしく、みんなの顔の上に?マークが浮かんでいる。
「えーと、ウサギの形をしているが、真っ黒で移動速度と機動性がとても高いそうだ」
なにそれ。口頭で言われても理解できないのを察したらしく、ムースがそれを撮った写真を見せてくれた。確かに、これはウサギっぽい何かとしか言えないな・・・。
「でも、こんな真っ黒だと探すのは大変そうですねぇ・・・」
写真は真昼間に撮ったらしく、そいつがはっきりと見えているが、間はもう日が暮れるくらいだ。しかも逃げ込まれたのは、昨日も行った廃ビル街。街灯はあるものの完全に機能しているわけではなく、ところどころ真っ暗な場所ができている。さすがに目視で探すのは無理だ。
「ふむ、今回は私とアイスで降りるか」
状況説明を聞きながら簡単に作戦を立てていく。まあ、きっちりとした作戦を立ててもいいんだけど、どうせその通りに進行することなんて全くと言っていいほど無いに等しいのだから簡単でちょうどいい。
「プリンはこのまま操縦。アズキはヘリから狙撃して目標を追い込んでくれ。んで、ムースはヘリから地上のスキャニングを頼む。それと、その結果をもとに私とアイスの誘導管制もな」
まあ、こんなとこだ。
「モナカー、あと数分で予定空域に到着しますよー」
よし、それじゃあ今日も頑張るか!
それから勢い良くヘリから飛び降りた(文字通り、15階立てのビルよりも高いところから直接地面にな)私とアイスだったが・・・やはり思った通り、奴の姿は見えなさそうだった。
「真っ暗ですねぇ・・・」
「そうだな・・・」
どういうわけかここら一帯の電気が付いていないのだ。おい、ここらの整備担当してる奴ら、何をやっている。
ぼやいてもすぐに復旧するわけでもないので、ため息をつきつつもムースの指示に従って移動を始める。
ビルの間をいったりきたり。結構暗くてお化けでも出そうな場所だが、怖がることなくどんどん進んでいく。いや、こんなのムースの怪談(幻術つき)に比べれば怖くもなんともない。
少しすると、目の前を何かが横切った気がした。ほとんど感というレベルだが、間違いない。何かは通った。
「アイス!」
「はいっ!」
アイスも同様に感じたらしく、一斉に駆け出す。すると、足音で追われているのに気付いたのか、その何かも速度を上げた。
「って、さすがに早くないか!?」
「私たちが追いつけないなんて・・・すごいですよぉ」
普通の人よりも私たちは早く走れる。比べ物にならないくらいには。でも奴との差が一向に縮まらない。というか、あいつの方がカーブで早いらしく、直線で追いついても奴が曲がるたびに差がついてしまう・・・。これ、間違いなく目標のウサギっぽい何かだよな。あー、なんかイライラするーっ!それに合わせてか、口調もだんだん荒くなる。
「おい、ムース、管制はどうした!」
予定ではキャラメルから管制が来るはずなのだが、一向に来ない。
「仕方ないだろっ! お前らが速すぎるし、目標の動きに規則性がないから管制したくてもできないんだよっ! スキャニングも追いついてないし、お前らの現在位置から予測で割り出すのが精一杯だ」
軽くキレているのかムースの口調も荒い。
「しゃあない、管制はいいからスキャニングだけはしとけ! 最低限私たちが振り切られても、目標の現在位置を見失わなければいい!」
「わかってる!」
わかっていると言いつつスキャニングができる範囲内にキャラメルはいない。まあ、これはムースよりもプリンに言うべきか。
「プリン、今どこにいる! 間違いなくスキャニング可能範囲にいないだろ」
「わかってますけどー、これ、小回りがきかないんで追えてないんですよー」
あー、ここで改造前の機体の悪いとこが出ちまったか・・・。キングスタリオン、搭載量が多い代わりにバカでっかいから小回り利かないんだよなー・・・。何を考えているのか、ウサギっぽい奴はよく曲がるからキャラメルじゃあ追えないのか・・・。
「わかった。スキャニングと管制は諦める。代わりにアズキ。狙撃体制に入っておいてくれ」
暗闇でもかろうじて気配で奴が見える。ならこのまま私たちは追いかけっこだ。
「なんとかしてそっちから狙いやすいところに追い込むから、ネット弾で捕まえてくれ。ムース、私たちの現在位置をもとに最適地点への管制を頼む!」
ネット弾だと普通はグレネード弾くらいのサイズになるだろうが、ここでアズキの能力が役にたつ。アンチマテリアルライフルの12.7mmサイズのネット弾。それを能力で作成することもできる。
さて、追いかけっこも大詰めにしよう。なんか疲れてきたし・・・。