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Prologue

 乱れていた、何もかも。僕の呼吸も、痛いほどの鼓動も、翻るカーテンも、整えられていたこのアトリエも。


 筆や絵具のチューブが散らばる床をゆっくりと進んでいく。誤って踏んだチューブが嫌な音を立てても、爪先に当たったペッティングナイフが甲高い音で飛んでいっても、背を向けたロッキングチェアは微動だにしない。まるで主のために息を潜めているようだ――もう二度と動かない、主のために。



 乱されたアトリエの中で凉原奏(すずはらかなで)、もとい北川廉太郎きたがわれんたろうは、その顔色とは裏腹に信じられないくらい静かな表情で息を引き取っていた。




 こうなる事は知っていたのに。こんな依頼、黙って聞かなければ良かった。

 そう何度後悔したとしても、ある意味でこれは彼の望んだことだった。こうして彼の死をもって依頼が始まってしまった以上、僕はそれを打ち切りにする事はできない。彼の思いを遂げなければ、僕のこの気持ちはいつまで経っても報われない。

 彼の死に様を見ながら、失った二つの存在を思って天を仰いだ。



 足音が聞こえる。もうすぐやって来る。害のない友人のふりをした、殺人犯が。


「嘘、だろ……何で」

「北川君が、死んだ?」

「どうして、そんな、どういうことですの?」


 動揺する三人を振り返る。その戸惑いと苦痛の表情は、嘘か真か--。



 僕は“探し物探偵”だ。北川廉太郎さんの依頼を受けてここにいる。

 だから、僕はこれから捜索しなくてはならない。


 “探し物探偵”の名に賭けて、この事件の犯人を自首させるための”証拠”を。


 

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