ラップバトル
放課後、緑の豊富な中庭には口喧嘩をする私とジャスティンの姿があった。
「何で私を売ったの?」と攻め寄る私にジャスティンは声を潜めて話した。
「悪かったよ、でもあれで打ち解けられただろ?」
「笑われただけじゃん」
「打ち解けられたから結果オーライ
皆が期待するお前の後来
インドベトナムシンガポールにタイ
世界中がお前のラップを聞きたい
なんて綺麗なお前の芳態
お前と戦えば相手は後退、全身包帯
お前は言うんだ『まるで老体』」
突然、ジャスティンがラップバトルを仕掛けてきた。目の前の様相が一変する。中庭にドープなビートが鳴り響く。人々も集まる。ここで逃げたら面目にかかわる。絶対に負けられない戦いがそこにある。例え声帯が切れようとも私はラップを続ける、そこにビートがある限り。
「ay yo, 貴様はホモ
自分の彼女を売るようなロコ
貴様のラップはまるでペリーコモ
毎日挑むこのフリースタイル
でも四方から聞こえてくるのはあのオールドスタイル
貴様のラップで皆の耳も腐る
私の出身はあのブラックプール
クリーンシート、人生のシード
圧倒的勝利でメダルはゴールド
気分はまさにクリスティアーノロナウド
要するに私は"随分の人"
一方予選敗退の貴様は今は亡き人」
勝ったと思った。スタンドのサポーターは私たちに盛大な拍手を送った。私たちはこうやって切磋琢磨してきた。バトルでお互いのスキルを上げていく特別な関係がここにはある。