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カシカ1 歪んだ真実  作者: 丸三角死角
3/8

コンプレックス

春休み中ずっと、こんな調子だった。街を歩いて案内してはくれなかったけど、それなりに充実した日々だった。


そして遂に迎えた登校日。いつもなら緊張しすぎて正露丸の持参が必須だったけど、ジャスティンが傍にいたから安心できた。


真っ黒の髪に真っ黒の瞳に真っ黒の制服。何かが足りない。私は小さな脳で熟考した。しばらくするとあることに気がついた。抜け感が足りないのだ。だから私は片手に持ったバナナで抜け感を演出して家を出た。


するとちょうどその時、ジャスティンが私の家のドアの前に立っていた。私は慌てて「びっくりー!」と言った。するとジャスティンは冷めた声で言った。


「カシカ、メイクしてるだろ?」


「うん、してるけど...」


「やめておけ、日本じゃ清潔感が大事なんだ、それじゃ浮いてしまう」


「メイクしなくても浮くし、それに...」


少し沈黙が続いたあと、ジャスティンが言った。


「それに?それに何?」


私は言いたくなかったが、意を決して言った。


「恥ずかしいの!本当の自分を見せるのが嫌なの!」


ジャスティンは冷淡に言った。


「何で?」


「だって...顔がコンプレックスだから。絶対馬鹿にされるもん」


私は言うのが怖くて、せっかくの化粧した真っ白の肌に涙を流した。


「塗りすぎだよ。俺はありのままのお前が好きだ。誰がなんて言おうと、お前は綺麗だ、俺が保障する」


それでも私は不安だった。すると彼は、そんな私の姿を見て大声で歌い出した。


「分厚いファンデーションは肌色消して

真っ白な世界に一人のあなた

ハリが心にささやくの

このままじゃダメなんだと

角質傷つき誰にも打ち明けずに

悩んでたそれももう止めよう」


私は思った。何処かで聞いたことある。でも思い出せない。ジャスティンは歌い続ける。


「ありのままの素顔見せるのよ

ありのままの自分になるの

何も怖くない 汗よ吹け

少しも恥ずくないわ」


それは将来の自分が聞いてそうな歌だった。この時はまだ知らなかった。この曲がのちに松たかこ的に有名になるなんて。


気がつくと私は、雪のようなファンデーションを無心で洗い流してた。


「何やってたんだろう私。そうよ、ありのままの自分になるの!」


私は急いでジャスティンの元に戻り笑顔で「遅れてごめんね」と言った。

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