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夢幻
桜の花と一緒に風にさらわれて
幻みたいに消えてしまいそうな
淡くはかない そんな存在───
桜吹雪の中 佇む姿は
あまりにも繊細で神秘的で
凜華は息をするのも忘れて
その姿に目を奪われてしまっていた。
「───はっ! だっ、誰!?」
我にかえった凜華は彼に尋ねた。
「………………」
彼は少し驚いたような
困ったようなそんな顔をしていた。
でも彼は無言のままで答えてはくれなかった。
そしてそのまま現れた時と同じように
桜に紛れて立ち去っていった。
(一体今のは何だったんだろう?
まさか ゆ、幽霊だったのかなぁ?)
「また会える、よね……?」
ーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーーー*ーー
凜華はまだ知らなかった。
彼との出会いが
ある時以来人を信じれなくなっていた彼女を
大きく変えていくという事を
そしてまた彼女も彼を変えていく事を───
2人の出会いは周囲の世界をも巻き込みながら
狭い鳥籠の中だけで生きてきた2人を
大空へと飛び立たせるのだった