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第五話 源水

 ヤハクは毛がふわふわした大きな生物で、立派な角が雄にも雌にもある。草食だが岩陰に住むので足の力は強い。蹴られれば簡単に骨が折れる。

「山を降りる前に放してくれればいい。自分達で勝手に戻ってくる。」

 アテルイ族の娘に言われ、オウビはヤハクを撫でた。つぶらな眼が愛らしい。

「ありがとう。この子達がいればずっと楽に旅ができます。」

 オウビはヤハクを借りて、ヘイジの所に向かった。ヘイジはまだ頭痛がするのか、後頭部を押さえていた。

「ヘイジ、荷物まとまった? 」

「……貴方、いつ起きたんです? 」

「ヘイジより早く。」

 けろりとした顔で分かりきった答えを言い、オウビは自分の荷物をヤハクに乗せた。具合が悪いのかヘイジは昨日以上に黙っていた。オウビが時々珍しい薬草を見つけると立ち止まり、摘むのも黙っていた。磁石に反応はまったくと言っていいほどない。川を渡るときもヤハクのおかげで濡れずに済み、具合の悪そうなヘイジは歩かなくて済んだ。

 夜、火を起こしているとヘイジが磁石をじっと見ていた。オウビは山の中で磁石を見て行動しないので、何がどう違うのか分からなかった。ヤハクに水と干草を食べさせ、頭を撫でてやった。そしてその日も過ぎ、朝になった。

「飛行艇操縦したことありますか? 」

 ヘイジに尋ねられ、オウビは顔を洗いながら首を横に振った。

「私浮遊石を扱えない。」

 ヘイジが磁石を振った。

「飛行艇の発着場の近くで、磁石が小刻みに震えることが多いんです。」

 オウビは焚き火の中に薪を放り込んだ。

「でも山に発着場はないでしょう? 」

 オウビが言った瞬間、頭上を巨大なものが駆け抜けた。鳥にしては大きく、飛行艇にしては小さく速い。ヘイジの手の上で磁石がカタカタ震えた。

「飛行艇の軽量化に成功したんだ……。」

ヘイジが頭上を見上げて呟いた。

「誰が? 」

「陽の民ですよ。うちにはあんな技術まだない。」

 オウビは本当に自分の一族に無頓着だ。

「たまには上に帰ったほうがいいですよ。娑原に留まりすぎです。」

 ヘイジは、恐らく追いかけたいのだろう。オウビは荷物をちらっと見て言った。

「奥までいかないでよ。危ないから。」

 ヘイジが子供のように走り出した。

 追いかけながらヘイジはふっと嫌な予感がした。山奥に飛行艇を飛ばし、建物を建てる。そんなことできるのは帝か国くらいなものだ。ヘイジが進んでいると、ヤハクが立ち止まった。ここから先には行きたくないらしく、足踏みをして迂回しようとする。

 ヘイジはヤハクから降りた。歩いて帰れる距離なので、そのまま進む。怪しげなものを見れば引き返したほうが良いだろう。

 ただ、それに自分が気づくことが出来るだろうか。

 草が茂り、道はないに等しい。足元も危うい山の中を、磁石を見ながらひたすら歩き続ける。しばらくすると、誰かがこっちに向かってくる音がした。走っているのだろう、かきわけまっすぐにこっちに来る。

 草から飛び出したものがヘイジにぶつかった。ヘイジはひっくり返らず、木にぶつかった。

 青い服を着た男だった。髪は金色で、面立ちで陽の民だと分かる。相手はヘイジを見てぎょっとした。ヘイジも殆ど同じ反応だった。

「なんで、月の民が? 」

 ヘイジはさりげなく磁石を隠した。男は背後を見てまた走り始めた。彼がやってきた方向を見ると、不気味な面が木の間にたくさん並んでいた。眼と口が細長い楕円で、三方向に不気味に並んでいる。それがずらりと木の間に並んでいる光景は、攻撃してくる様子がなくとも逃げ出すには充分だった。

 ヘイジも男を追いかける。草や木でよく見えないが、面には土色に塗った腕や草木でできたような服を着ている身体がついていた。男を追いかけているのだが、直線状にいるヘイジも危ない。

「なにやったんだ。」

 ヘイジが後ろから叫んだ。男は答えず走った。草木が突然割れ、男とヘイジは落ちた。小さな崖から二人は転がり落ち、川沿いで止まった。

 ヘイジは何が起きたのかさっぱりだったが、男は土を払って歩き出す。川を渡っていく。面は追いかけてくる様子はなかった。ヘイジは男の後を追った。浅くてくるぶしまで浸かる。長靴を履いていたため、濡れずに済んだ。

「あんたは何をしに来たんだ? 」

 男はヘイジに尋ねた。

「薬草を探しに。そっちは? 」

 ヘイジはとっさに嘘をついた。

「花を取りに行ったんだ。」

 男は青い花弁の花を見せた。

「苦労した。樹海の民に追われて殺されるかと思った。」

「それは、とってはいけないものだったんじゃ? 」

「仕方ないだろ。命の源水のそばにしか咲かないんだ。」

「なんですかそれ。」

「知らないのか? 肋骨の君を作る泉だ。」

 肋骨の君、御伽噺に出てくる娘のことだ。はぐらかされたとヘイジは思った。

「貴方の名前をうかがってもいいですか? 」

 ヘイジが尋ねると男は答えた。

「リツだ。」

「ヘイジと申します。」

 男は家名を名乗らなかったが、高貴な出には間違いないようだった。彼の服を見てヘイジはそれを感じた。

「どんな薬草を探しているんだ? 熱さまし、痛み止め、腹痛、傷薬、どれでも教えてやるよ。」

 ヘイジは、とっさに出てこなかった。リツは気にせずドンドン歩く。そして、道は開いた。

 泉の傍に出た。黒い髪をした娘が、傍に座っている。

「シズク。」

 リツが呼びかけると、娘が振り返った。

 真っ黒な髪に真っ黒な眼をした娘だった。肌は青白く、唇は薄い。首から水晶でできた首飾りを下げ、髪には花の形をした木のかざりをさしている。

「青い花だ。好きだろ。」

 犬のように走っていったリツよりも、その背後にいるヘイジをじっと見つめる。闇のように黒い髪と目は、アテルイ族に良く似ていた。娘は青い花を差し出され、受け取った。花をじっと見つめ、匂いをかぐ。それは花に口付けをしているように見えた。

 地人の娘に対し、初めて美しいとヘイジは感じた。娘が媚びた笑いをしないことも、好ましく思えた。

 なんとなく磁石に眼をやると、磁石はぐるぐると回り出していた。壊れたのだろうか、ふると磁石は娘にひきつけられるように針を向けた後、くるくると回る。娘の耳、首、腕に付いた美しい石の数々を見て、まさかと思いながら持ってきた浮遊石に力をこめた。透き通った音と供に、娘の身体中につけている石が震え出した。

 娘は不思議そうに自分の石を見てから、ヘイジを見た。大きな黒い穴のような眼が、瞬きしてヘイジを見る。

 全部浮遊石だ。ヘイジはぞっとした。この娘の身体につけている浮遊石を全部かき集めれば大型の飛行艇が作れる。

 向こうから地人がやってきた。娘の仲間なのだろう、ヘイジとリツを見て、武器を持って駆け寄る。

「シズク、また持って来てやるからな。」

 リツが逃げ出したので、ヘイジも追いかけた。振り返ったとき、娘は青い花を手にして大きな黒い眼でこっちを見ていた。

 今日は走りっぱなしだ。ヘイジは息を切らしながら、リツを見た。

「綺麗な娘だろ。このあたりに住んでいる一族の巫女なんだ。」

「詳しいんですね。」

 ヘイジは息を切らしながら、リツと供に上流に向かって歩く。

「彼女のために花を? 」

まさか、と思いながらヘイジが尋ねると、リツは笑った。

「シズクは俺が見た中で一番美しい娘だ。」

 陽の民がそんなことを言うなんて、今まで聞いたことのない言葉だ。

 地人を月の民よりも嫌い、侮蔑し、虫の様に扱ってきた。それを、美しい娘だと言い、危険を冒してまで花を贈る。こんな男が陽の民にいたなんて、誰かに話しても信じてもらえないだろう。

 ヘイジは懐の中の磁石を探った。だが磁石はない。落としたのかと焦って周りを見ると、いつの間にかリツが手の中でくるくると回していた。

「浮遊石を探しにきたのか。」

 何故持っているのか、いつの間にくすねたのか、問おうとした口からはなにも言葉が出ない。

 リツは投げて返したので、ヘイジは両手で取った。

「ここの浮遊石は全てシズクの物だ。天人が好きにしていいもんじゃない。」

 変な奴だ。ヘイジは心からそう思ってリツを見た。天人なのに、地人を同等と見てる。オウビのようだ。

 ふっとオウビの安否が気になった。さっきの仮面たちは、オウビを襲ってはいないか。ヘイジは磁石を見た。なんとか元に戻っている。

 慌てて走り去るヘイジを、男はきょとんとしてみていた。

 走っていくうちに、争っている音がした。ヤハクの悲鳴のようなものも聞こえた。嫌な予感が一斉にした瞬間、しげみの中からオウビが飛び出し、ヘイジと眼が合った瞬間平手で頬をはたいた。

「なにしたの。」

「とばっちりです。」

 ヘイジは一言で返し、飛んでくる矢を飛び避けた。黒髪の男達で、さっきリツが花を渡した娘のそばにいた男達だった。

 二人は走った。水音が大きくなる。ヘイジは崖に出るまで自分達が袋小路に追い詰められていることに気づかなかった。

「あなたの交渉術で誤魔化せないですか? 」

「無理。彼らの領域を侵し、怒らせるようなことをやった。万死に値する。」

「巫女に花を渡しただけですよ。俺じゃないですけど。」

 オウビが、ヘイジを信じられない破廉恥なものでも見るような、嫌な眼で見た。

「信じられない。」

「俺じゃないですよ。」

「巫女に男が会うなんて。」

「俺じゃないですよ。」

大切なことなので三回ヘイジは繰り返した。オウビは顔を手でおっていたが、腰から太刀を抜いた。

「ヘイジ、崖をつたってゆっくり降りて。流れはそんなに早くないから、あなたなら行ける。」

何の冗談か、オウビは真面目に言う。

「なんでそんな馬鹿なこと考えるんですか。」

 ヘイジはオウビの腕を掴む。

「ここで私が死んでも、ロサ家の終わりを嘆くものもない。私の任務は浮遊石を見つけて、あなたを無事ここから帰すこと。私が帰ることはいつも任務には含まれてない。」

 仮面の男達は迫って来ている。花を渡すことが、陵辱するほどの大罪のように感じているらしい。

 ヘイジはオウビの腕を掴むと、目の前を轟々と流れる川に飛び込んだ。それ以外何もできなかったし、それ以上に素晴らしい案があるとは思えなかった。



 気がついたとき、ヘイジはまずオウビがどこにいるか確認した。彼女が腕の中にいるのに気づいてほっとしたが、自分の頭を何かが食べていることに気づくのが遅くなった。

 起き上がったときには、少年達がこっちを見ていた。大きなヤハクと一緒に、こっちをじっと見ている。太刀を下げているので、アテルイ族の少年なのだろう。ヘイジが立ち上がった。

「この前来た人達だろ。山を降りるなら案内するよ。」

 天人の言葉で喋った。

 ヘイジは、夢かと思いながらも彼らについていった。オウビが目覚めないのが不安だったが、彼らの案内に従って降りると、山を降りることができた。

 少年達の去り際に、ヘイジは気になったことがありたずねた。

「貴方達はこんな麓まで降りてくるのか? 」

 少年の一人が言った。

「麓にも仲間が住んでる。もうだいぶ少なくなったけど。」

 少年の一人がこづいた。余計なことは言うな、と言う様に。

「その、貴方の太刀を見せてくれないだろうか。」

 ヘイジが背の高い少年に言った。少年は警戒しながらも、ヘイジに差し出した。ヘイジは太刀に入った印を見た。

「この印は? 貴方の名前か? 」

「昔娑原に住むことを決めた一族の名だ。この印を見せ合えば、会ったことがない顔でも仲間だと分かる。」

 ヘイジは礼を言って、太刀を離した。




 白い布に包まれ、父は帰ってきた。母はしばらくその亡骸の前で座っていたが、やがて立ち上がると部屋に戻ってしまった。オウビはその後ろをとことことついて行った。母は何かを口に入れた。オウビは母から差し出され、握らされた。紅い血がべったりと絡みついた小さな瓶の中身は一口分もなかったが、小さなオウビが死ぬには充分の量だった。

 気がついた大人が無理やり吐かせ、オウビは死ななかった。両親の葬儀のときは、大人しく椅子に座り込んでいた。

「母親もろとも死ねばよかったのに。」

 誰かが言った。知らない大人が大勢来たので、誰だかわからなかった。悲しいとも悔しいとも思わない。オウビの身体は心だけ死んでしまったように、何も感じずぼんやりとしていた。

 ふと、目の前をひらひらと蝶が過ぎった。窓から入ってきたのに、廊下を出て行き玄関を通っていく。オウビはふらふらと、そのあとをついて行った。

 白い花が咲いていた。美しい花だった。父が庭師を呼んで、母の好きな白い花を植えた。何種類も植えた。蝶は花の中に消えていった。母の大好きな花だ。この花の名は忘れたが、母は月を降ろす花だと言っていた。月が人の形を成して地上に降りてくるとき、この花を目印に降りてくると。

 母が好きだった花。父も好きだった花。二人共花の様に儚く去ってしまった。

 どうして、なぜ、自分はここにいるのだろう。何が自分を生かしたのだろう。

「花は好きか? 」

 オウビはゆっくり顔を上げる。少年が立っている。白い顔にそっとかかった、銀の絹のような髪。高貴な身なりと人にない、神秘的な空気を漂わせている。月の化身だろうか、オウビはそう思った。

「花は嫌いです。枯れるから。」

 オウビが言うと、少年は少しだけ困ったように眉根を寄せた。

「なら、オウビは何が好きだ? 」

 自分の名前を少年が呼んだ。 

 オウビは顔を上げて、空を指した。薄い月がぽっかりうかんでいる。オウビはそれを見つめた。

「お月さまは夜でも昼でもいます。太陽は沈むけれど、お月さまは沈まない。」

 少年が微笑んだ。手にした花をオウビの髪にさした。

 オウビはぼろぼろと涙をこぼして泣き出した。少年が抱きしめてくれた。大声を出して泣いたのは、それが最後だった。

 その日世界は変わったのだ。

 誰がいなくても、誰もいなくても、それは孤独ではなかった。自分が生きている意味は、たった一つだけで充分だった。

 目覚めた時真っ黒な天井が見えた。武器を手探りで探すが、水の入った木の椀しかなかった。寝台に寝かされているということは、山から降りれたのだろうか。起き上がり部屋を出ようとした。

 引き戸がついていたので開けると、何かにぶつかった。扉の端が、誰かに当たったと思ったら、ヘイジがいた。椅子に座って壁にもたれて眠っていたのか。

「……なにしてるの? 」

「……何してるのか、自分にもよくわかりません。」

 自分を見張っていたのだろう。

「ここは? 」

「医務局です。身体は大丈夫ですか? 」

 オウビはうなづいた。

「貴方は? 」

「大丈夫です。貴方を抱えてここまで戻れました。」

 オウビは隣に座った。

 長い椅子に腰掛け、オウビは頭の中を整理する。任務はどうなってしまったのだろう。オウビがなんと言っていいか迷っていると、ヘイジが言った。

「貴方は、いつもそうやって落ち着いているんですね。」

 ヘイジは溜息をついた。

「どこにでも飛んで行ってしまいそうだ。」

 ヘイジの手が、オウビの手をとる。

「貴方はどこへ行こうとしているんですか? 」

 オウビは戸惑って、見つめ返した。

 でしゃばるなと言われたことはある。大人しくしてろと言われたことは何度もある。けれど、その意味を誰かに問いかけられたのは初めてだ。

 何故、どうして、どこを目指しているのか。

 どう答えれば分かってもらえるのか、考えたことがなかった。分かってもらおうとも思ったことはなかった。

「私は……。」

 ヘイジの望んでいる答えを考える必要はないのに、戸惑った。

「私は、帝の命に従ってここまできた。これから先も、そうやっていくのだと思う。」

 オウビはヘイジを見つめた。

「貴方はどこに行くの? 」

 ヘイジは答えかけて黙った。

「貴方の前だと、自分は、何の覚悟もしていないような気がします。これまでの努力は、貴方の前では砂の粒ほども価値のないように思えます。」

 人と比べることに意味があるのだろうか。オウビはヘイジを見た。

「帝のためなら、他の仕事でもできるでしょう? 貴方は、死ぬほどの事態に慣れている。次は本当に殺されてしまうかもしれない。」

 オウビは笑った。

「私は戦えるなら戦いたい。その時できる一番帝にとって望まれる事をしたい。その機会を与えられたなら、それをしたい。」

 ヘイジは笑った。奇妙に歪んでいたが、笑っていた。

「貴方は、帝よりも皇子の命に従いたいのではないのですか? 」

 オウビは不思議そうに微笑んだ。

「だって、あの方が帝になるのだから。同じことだもの。」

 その眼には疑いも迷いもなかった。オウビは、彼が帝になるということが、成長するのと同じように、自然なことだと信じて疑わない。

 恐ろしいほどに、彼女の眼はまっすぐだった。

「……聞いたんですか? 」

 そんなはずはないと思いながら、ヘイジは尋ねた。

「帝が病床のため退位され、カツキ皇子が帝になられます。」

 オウビの眼から一筋涙が落ちた。そして大きく口をあけて、笑った。

「あの方は約束を守ってくれた。」

 震えて涙を流すオウビは、妖艶な笑みを浮かべていた。オウビの蜜色の眼は、あの仄暗い地下で見た娘達に似ていた。ヘイジはオウビの手をとって立ち上がった。

「貴方は疲れてるんです。今はゆっくり眠ってください。」

 オウビが少女のように笑った。

「私、嬉しくて眠れない。」

「眠ってください。明日、浮遊石のことを報告しないといけません。飛行艇で酔いますよ。」

 オウビは首を横に振った。

「私は行けない。」

 ふらりと立ち上がると、オウビの手がヘイジの掌をすり落ちた。

「貴方は、部屋に戻って。明日の朝はちゃんと起きるから。」

 ぴたりと扉は閉まった。

 ヘイジは扉に額を突いた。彼女の眼が、あんなにも妖艶に光るなんて、あんなにも深い色をするなんて、想像したこともなかった。陽の下で見るオウビは、無邪気な少女のように微笑むのに、月の下の彼女は別の生物のようだ。

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