無言の鑑賞会
◇
……三十分後。
「……」
「……」
二人は特に会話もなく、前田利家(幼少期)を眺めていた。
「……」
「……」
何か喋って貰わないと、間が持たないのだが……。
「……」
「……」
そこまで見入らんでも。
◇
……更に三十分後。
「……」
「……」
更に会話もなく、賤ヶ岳の戦いの場面を眺めている。たった一時間で、どんだけ進むんだこのドラマ。
◇
……また更に三十分後。
「……」
「……」
二人は、泣いていた。ただ静かに、泣いていた。前田利家が死去した場面で、それはもう泣いていた。
「……」
「……」
いやいや、このドラマ一時間半で終わるのか。早過ぎるにも程があるだろ。しかも内容が薄すぎて、特筆するほど感動する要素なかったぞ。
「……利家」
「……あんた、最高だぜ」
一体、どっからそんな感想が?
◇
……感動の余韻が消えた頃。
「ほら」
戸棚からクッキー缶を取り出す魔緒。
「わーい」
「ア二×○トで見つけた特製クッキーだ。好きなだけ食え。ただし、晩飯食える程度にしろよ」
「はーい」
まあ、缶に描かれている絵に関してはノーコメントで。
「紅茶はアッサムしかないが、それでいいか?」
「うん」
紅茶とクッキーで優雅に談笑。
「これおいしー。ばくばく」
「そんなにがっつくな。それから、ばくばくとか実際に言わんでいい」
とは、言えないようだ。