若気の至り
「立直、一発、平和に断公九、赤ドラ二枚に裏ドラ二枚。倍満だから二万四千点な」
「ま、まただ……」
何故か魔緒は、仁奈と二人麻雀に興じていた。しかし、先程から魔緒が和了り続け、仁奈は得点がなくなった。因みに、仁奈の点がなくなるのはこれで三回目である。
「まおちん、イカサマしてない?」
「失礼な。俺は最低でも満貫で和了ってるだけだ。因みに、俺の自慢は家族でやった麻雀大会で四槓子と九蓮宝燈と緑一色を叩き出したことだ」
それはどれも、難易度の高い役ばかりだ。てかこいつ何者?
「さすがに天和や地和、人和はないがな。得意なのは海底摸月、それも最低ドラ二枚と適当に二役付けてな」
「……」
唖然呆然。あまりの格の違いに、声も出ない様子。麻雀に詳しくない読者は、「魔緒は相当の手練れ」という風に解釈して欲しい。それにしても、何故麻雀に興じているだろうか。
「ま、練習すれば嶺上開花連打くらいはできるさ」
いや、普通無理だ。というか、フォローが大変なので麻雀ネタはやめてくれ。
「それはそれとして、そろそろ別のことでもしようぜ。いい加減、二人麻雀にも飽きてきた」
「うん」
そうしてくれると助かる。と思ったのも束の間。
「五光」
「……」
花札で敗れ。
「ロイヤルストレートフラッシュ」
「……」
ポーカーではボロ負け。
「チェックメイト」
「……」
チェスで負かされ。
「王手」
「……」
将棋でも勝てず。
「ジャンケンポン」
「……」
挙句、じゃんけんですら勝てない仁奈。
「こりゃ、運や知略が絡むゲームはできないな」
というか、魔緒の運が異様に良すぎる気がする。将棋やチェスは仕方ないにしても、ギャンブルがここまで極端に強いのは明らかにおかしい。
「……」
本日、後半からテンション駄々下がりの仁奈。何をしてもまったく勝ち目がないのでは、幾らなんでも酷すぎる。
「やっぱ、ゲームじゃなくてDVD鑑賞にしよう」
そう言って、テレビの横の棚からDVDを選ぶ魔緒。因みに、そこにあるのはアニメのDVD(魔法少女もの)とドラマのDVD(時代劇)、そして映画のDVD(主にSF)等だ。ジャンルが散りすぎて、非常に混沌としている。
「んじゃ、これ行っとくか」
魔緒が持ってきたのは、大河ドラマのDVD(数年前に放送した、前田利家が主役)だった。どういう意図で、そんなのを選んだのだろうか。