適当な終わり
「あら、遅かったわね」
別荘に戻った彼らを出迎えたのは、意外な人物だった。
「叔母さん……」
七海の呟きから察するに、彼女が件の叔母であろう。
「ていうか泳いでたの? だったら早く着替えてきなさい。風邪引くから」
「どうしてここが……?」
「女の勘で」
双子の叔母はエプロン着用で、台所に立っている。昼食の用意でもしているのだろうか。
「鍵も掛けておいたのに、どうやって……?」
「合鍵、空の植木鉢の下に置いてあったから」
七海といい、この叔母といい……。楠川の女、恐るべし。
「お腹空いたでしょ? ご飯作ったから食べなさい」
台所に立っていたのは、やはり昼食を用意していたためか。
会話もなく遅めの昼食を摂った後、この駆け落ち(と呼んで差し支えないだろう)について話し合いが行われた。
「いきなり飛び出して、全然戻ってこないから心配したのよ。連絡もないし」
「ごめんなさい……」
申し訳無さそうに頭を垂れる仁奈。七海と魔緒は、その様子を見守っている。
「まあいいわ、無事だったみたいだし。それに、私もちょっと反省してるの。突然転校しろなんて言っても、素直に応じるわけないのに。七海とだって離れたくないだろうし。その辺のこと、すっかり失念してたわ。ごめんなさい」
まさか許してもらえるとは、しかも謝られてしまうとは思っていなかったようで、まさしく鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする仁奈たち。
「それに、結構頼もしそうな彼氏もいるみたいだし」
「かかか彼氏って!」
「あら、違うの?」
頬を真っ赤にし、超高速で往復びんたでもされているように首を振って全力否定する仁奈。
「まだそこまで行ってないし!」
「「そこ」って、どこまで?」
「えっ!?」
「というか、「どこまで」行く気?」
「ええっ!?」
叔母にからかわれ、あたふたしている仁奈。魔緒はそんな彼女の様子を眺め、思わず口元を緩めた。
「何にやけてるのよ?」
「別に、にやけてるわけじゃないがな」
七海に指摘され、恥ずかしそうに顔を背ける魔緒。
「まったく、素直じゃないんだから」
「うるせえ」
これはまだ、この夏の序章に過ぎない。これからの時間も書き綴りたいのだが、長くなるのでこの辺で。
◇◆◇
これで、三つの道が全て揃った。そしてこの道は一つとなり、他の道をも巻き込んで、終焉へと続いていく。果たしてそれは、幸福なものになるのであろうか。
~THE END OF ROAD 2~