ありふれた夜
◇
……夜。仁奈の寝床を整えることに。
「じゃあ、布団はこれね」
「はーい」
「ちょっとまて」
魔緒の声に、仁奈と魔緒の母が振り向く。
「何故こいつが、俺の部屋で寝ることになってるんだ?」
仁奈は、魔緒の部屋で布団を受け取り、そのまま床に敷こうとしている。
「だって、あなたのお客さんじゃない」
「そういう問題じゃない」
年頃の、しかも親族でもなんでもない男女が同じ部屋で寝泊りするのはどうなのかと、母親に進言するが。
「あら、年頃ならいいじゃない」
一体どこから、そんな結論が出てくるのだろうか。
「てかお前も、何か言え」
「何か」
「おい」
そういう意味ではないと思う。
「だって……、ねえ?」
「ねえ? じゃねえよ」
とは言ったものの、現在陰陽家で最大権力を持つ魔緒の母と、実際に泊まる仁奈が了承している以上、どうしようもない。
という訳で、仁奈の「どきどき☆二人っきりのお泊り会」がスタートした。
……と思ったのも束の間、あっという間に消灯となった。
「ねえ、まおちん」
「何だ?」
「寝るの早くない?」
現在時刻は午後九時半。寝るには少々早いかもしれない。
「夜更かしは美容の敵だぞ」
「そうだけど……」
因みに仁奈の、高校生になってからの平均就寝時刻は、零時前後である。
「魔術師は脳を疲弊するから、睡眠時間が必要なんだ」
「へー」
なら仕方ないと、仁奈も眠ることにした。
(もうちょっと、色々期待したんだけどな……)
とは言うが、魔緒が相手では仕方ないだろう。隣(仁奈は床で、魔緒はベッドの上だが)で異性が寝ているというのに、もう寝息を立てているのだから。