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玉響  作者: 遠井 符$
カナタとマナタ
13/13

再起

目が覚めると、見覚えのある黒髪が目に入った。


周りを見渡すと森、おそらく森人族の森だ。


背後から、元気な声が飛んできた。


???「あ!起きた!」


振り向くと、長い金髪をたなびかせるマナタが立っている。そして前を見ると、黒髪ボブのカナタも。


状況を理解できず、ただ唖然としていると、カナタが静かに説明を始めた。


カナタ「今まで、カナタとマナタは一つの肉体を共有していたでしょ?だから私の身体はマナタのウイルスだと感染できなかったの。」


言葉を追うだけで頭が混乱する。


カナタ「でも、君の進化したウイルスだと私自身も感染できたの。だから、マナタの身体に近い死体に、私からマナタの脳とウイルスを移植してマナタと分離することができたの。」


目の前で微笑むマナタとカナタ。信じられない理屈と現実が交錯する中、俺はただ言葉を失って立ち尽くした。


カナタ「だから君のおかげ、ありがと」


世界が変わり、身体も人格も再構築され、目の前にいる二人が、確かに生きている。


いつもの食堂に行くと、森人族だけでなく、様々な亜人族の姿があった。


どうやら俺はかなりの間、深く眠っていたらしい。人族が滅びた後、自然は自由に広がることができ、

今では森も街も、全てが緑に覆われているという。


だが、説明をしてくれているカナタは、なぜか俺に目を合わせようとしない。挙動も明らかに不自然で、何かを隠しているように見えた。


不思議に思い、俺が眉をひそめていると、マナタが大きくため息をつき、勢いよく口を開いた。


マナタ「カナタは!いい加減惚れてるのを隠そうとするの、やめなさい!」


その言葉に、カナタは目を丸くし、顔を真っ赤にして恥ずかしさから涙を流し始めた。


恥ずかしさで顔を両手で覆い、声も出せない。


俺は呆気に取られ、目の前の二人を交互に見つめるしかなかった。こんな展開、予想していなかった。


俺は、思わず口を開いた。


俺「……俺に惚れる要素、無いだろ?」


助け舟のつもりだったが、カナタにはそれが届かなかったらしい。


顔を伏せ、両手で頬を覆いながら、カナタは小さな声で答える。


カナタ「だって……危ない時、いつも私のこと最優先で……いつも前に立って、守ってくれたから……」


言葉を詰まらせ、目をうるませるカナタ。俺はただ、その小さな告白の余韻に立ち尽くすしかなかった。


マナタは少し微笑んで、だけど何も言わずに二人の様子を見守っている。


マナタがにやりと悪戯っぽく笑いながら口を開いた。


マナタ「早く結ばれなよー」


カナタは思わず小さく呻き、必死に抵抗しようとする。


カナタ「そ、それは……!」


しかし、悪あがきのようにカナタが口を滑らせた。


カナタ 「マナタも……大好きなくせに!」


マナタは一瞬、目を丸くした後、少し慌てて叫ぶ。


マナタ 「ぬぁ!言わないでよ!ってか大って程じゃないし!」


だが、否定することも、否定できる気配もなく、マナタは微笑んだままその場をやり過ごした。


三人の間に、ほんの少しだけ、ぎこちないけれど温かい空気が流れる。


俺は深く息をつき、口を開いた。


俺「とりあえず、また旅しようぜ。久々に体動かしたいし、世界がどう変わったか、見てみたい。」


カナタとマナタは一瞬、息を整え、互いに軽く視線を交わす。 そして、いつもの調子で揃って答えた。


カナタ「いいよ」


マナタ「うん!」


それだけで、空気は自然と和らぎ、森人族や亜人族たちの存在を背に、俺たちは再び旅立った。未知の世界、変わった世界、そして自分たちの新しい日常を確かめるために。


こうして、俺たちの旅は、また歩みを進め始めた。

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