第五話 好きになっていいですか?
この前書きと後書きが苦手で全部更新出来ない、という所なんですが、前もって原稿だけは用意しておくと楽ですね。テンプレ化したいけれどリアルな前書きも面白いしなぁと思うし。う~んです。あ。水替えが。ランプアイが一匹お星様に。明日二匹迎えようかと思うところです。
さて、オリジナルはランプアイちゃんの水替え済ませてしようっと。ではずずいっとどうぞ。
「明日だね」
ルリがぽつんと言う。
「そだね」
なれてきた言葉でセアラも答える。
「大丈夫かな~。あたし」
ベッドにごろんところがってルリが言う。
「あら。ルリらしくないわ。ルリならこう・・・どーんとつきすすんでねー」
「それはセアラでしょ」
講義を進めていくうちになれたのかセアラはどんどん知識を吸収しだした。学内順位のトップ軍にいることは間違いない。それにひきかえルリはまったくだめだった。後ろから数えたほうが早い。いくら補習の手伝いをさせられたことか。
くす、とセアラは笑う。
「明日成績がびりだったほうがランチをおごるってどう?」
やる気を失っているルリに声をかける。その言葉で単純というか純粋なルリはすぐに元気になった。
「乗る。乗る乗る! あたしの大好きなBランチのためなら何でもするわ!」
天井に向かってびしっと右手を伸ばしてルリが宣言する。元気いっぱいになったルリを見てセアラは微笑む。
「そうそう。その調子」
そう言ってセアラは窓の片隅においてあるブルーローズの小さな鉢をそっと横目で見た。
伯母様。あたくし、明日宇宙です。がんばります。
ブルーローズに約束してセアラはベッドの中にもぐりこんだ。
翌日、とうとう宇宙訓練がやってきた。パイロットコースにつき物の練習機への搭乗だ。そしてこの目でようやく宇宙をみるのだ。セアラは緊張していた。一方ルリは昨日のランチおごる発言で元気いっぱいだった。
練習機、ライヘンへ乗る。
搭乗すると同時に入り口がすっと降りる。中は一人きり。さまざまな計器がある。そのひとつひとつを確かめる。
外にいるルークの声がヘッドホンから聞こえてくる。
「これから諸君は宇宙へ出る。だが、勝手に動かすな。定位置に収まるよう努力しろ。それでは第一班から投下はじめ!」
数機のライヘンが投下される。
さまざまな叫び声がヘッドホンから聞こえる。セアラの緊張はとどまることを知らない。
“教官~。定まりません~~~”
「気合で定めろ!」
さまざまにうろうろとするライヘン。
“そんな~~~”
泣き言が一斉に始まる。それを無視してルークはまた掛け声をかける。
「第二班、投下!」
「きゃぁ~~~!!」
ルリの盛大な叫び声が聞こえてくる。ジェットコースターがまっすぐ降りていく感じだといえばいいだろうか。とてつもないスピードで落とされてセアラはぎゅっと目をつぶった。
「ステュアート。目を閉じていれば何も見えないぞ!」
面白がっているような声でルークはセアラに声をかけた。
「わかってます!」
セアラはそう言ってまぶたを開けた。ウィンドウには星々が写っている。
「きれい・・・」
セアラはそう言って操縦かんから手を離してしまった。そして身を乗り出す。画面に写る世界を見ようと必死になる。それがあだになった。セアラのライヘンはいきなり猛スピードで宇宙を回り始めた。
「きゃぁ~~~!!!」
セアラは出さないと決めていた叫び声をあげる。そして知らず知らずのうちにタッチパネルを操作し始めていた。だが、それも逆効果になる。機体はみんながいる空間から飛び出て突き進んでいく。
「ステュアート。何をしている。早くとめろ」
くそっと悪態をそっとついてルークはセアラの機体を止めようとした。だが、止まらない。
「お前、何をした!!」
セアラにがなるが意味がない。セアラの機体は行くだけ行って停止した。
燃料終わり・・・・。
「はぁ・・・」
セアラは意地悪なルークのお仕置きに覚悟を決めてため息をついた。
「やった。やった。あたしの勝ちね。おばさーん。Bランチ!」
食堂でルリは嬉々としてBランチを注文していた。
「あ、支払いはこの人もちで」
ばしっとセアラの肩をたたく。
「もう・・・。調子いいんだから」
セアラはそう言ってほんの少しほほを膨らませた。
「やるわね」
「きゃ」
「何も驚くことないでしょ。あたしも食べないといけないんだから」
そこにいたのはモトコ・モーガンだった。
「さっそくやったわね。ルーク教官の制御プログラムを取り払うだなんて。なかなかできることではないわ。そうでないとあたしのライバルじゃないわね」
そう言ってモトコはCランチを手にして立ち去った。
「なにあれ?」
ルリがにらみながら言う。
「ライバル宣言。何回する気かしら?」
セアラも困ったものだと肩をすくめる。そして適当にランチを選んでルリとテーブルに着く。そこにはケイティたちが待っていた。
「ぽんぽん飛んでいたわね」
笑いをこらえながらケイティは言う。
「レディからぽんぽんに変えようか?」
サイガが付け足す。
「どっちもお断りします。私はセ・ア・ラ」
丁寧にも区切って発音するがみんなには意味はない。相変わらずレディと呼ばれるのだろう。
「モトコも大変ね。とび級だから同じ年のお友達もいないし。私たちのグループに入れてあげない?」
一人食べているモトコをセアラは見つけた。さびしげな背中に何かわからないものがこみあげた。
「そうね。仲間に入ってくれるかわからないけれど声をかけるのはいいかと思うわ。ルリお願いね」
そう言ってセアラはにっこり笑った。ここぞとばかりに効果的な華のある微笑だ。社交界を魅了したこの微笑を見るもの誰しもセアラのとりこになったものだ。ルリはしばらく思案していたがセアラが望んだこともあり、ルリは席を立ってモトコのところへ言った。内容は聞こえないがなにやらちゃんと話しているらしい。次第に二人とも険しい顔になっていく。あわててケイティが飛んでいく。
「この~。陰険がきめ!」
「何よ。このぼんくら!」
「やめて。やめなさいよ。周りの人に迷惑よ」
ケイティの言葉でなんとか二人は喧嘩をやめた。ルリがもどってくる。戻ってくるなりランチをばくばく平らげる。ケイティはしばらくモトコのところでなにやら話してから戻ってきた。
「モトコはどうしたの?」
「一人で十分だって。寂しいよね。そういうの」
ケイティはそう言って飲み物に手を付けた。
ライバルか・・・。程遠いんだけどな・・・。
セアラは学園を出てまたムービングロードに乗っていた。そしていつしかあの青年に出会った公園に来ていた。そこにはなんとあの青年、コールが待っていた。
「よかった。ずっと来ないかと思ったよ。あれから一日も出てこないから」
「あなたはずっと私を待っていたというの?」
驚いてセアラは問いかけた。コールは顔を赤らめながらうなずく。
「これを渡したくて」
コールの手のひらには小さな小箱があった。セアラはそれを受け取って中を開ける。
「ペンダントだわ。どうして私に?」
「この間・・・といっても大分前になるけれど君に怒られたから。何か悪いことしたんだと思って。お詫びにこれを・・・」
「前って・・・あれは私は気が立っていてそれでレディというのが一般的な女性への言葉だとは思わなくて・・・八つ当たりなのに」
「それでも受け取ってほしいんだ」
はにかみながらコールは言う。
「ありがとう。いただくわ。これ今、つけてもいい?」
セアラもはにかみながらコールに言う。コールはこくん、とうなずく。
首につけられたペンダントは夕日の光を浴びてきらりと輝いた。
「綺麗・・・。ありがとう」
恥じらいながら礼を言うセアラにコールはにっこりと微笑む。そして空を見上げる。
「綺麗な空ね。紅く染まって・・・。夕日って大好き」
「ボクもだよ・・・」
コールもつぶやくように言う。二人でしばらく空を見上げている。しかし、いつしかコールは空を見上げているセアラの顔を見つめていた。ふっと視線を回すとコールが自分を見ている。セアラはどうしたのかといぶかしげな表情をした。
「何かついてますか?」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「じゃぁ・・・?」
コールは深呼吸を一回するとセアラの瞳をまっすぐ見た。
「いきなりなんだけど・・・好きになっていいですか? ボクの一目ぼれなんだ」
セアラは驚きで瞳を大きくした。コールの誠実そうな顔をじっと見る。
「いろいろ問題あるかもしれませんよ? 私・・・」
「それでもいい。ボクは君がすきなんだ」
コールの熱い想いにセアラはうなずいた。うれしかった。以前捨てられたときのことがよみがえる。だが、今度は違う。好きになってもらえたのだ。こんなにうれしいことはない。セアラもこんな誠実そうな人になら気持ちを預けてもいいと思った。
静かな時間が過ぎる。
「だめ、かな?」
コールの気弱な声にセアラはぶんぶん首を横に振った。
「ちがいます。うれしいんです。私、いろいろあって嫌われたから。好きになってもらいのうれしくて」
「じゃぁ、オーケーなんだ?」
ええ、とセアラが答える。
「ありがとう。また明日、ここで会えるかな? そろそろ行かないと・・・仕事もあるし」
名残惜しそうにコールが言う。
「毎日来ます。コールさんに会いに」
顔をほてらせてセアラは言う。
「さんはよけいだよ。コールでいいよ。セアラ、って呼んでいいかい?」
「もちろん!」
セアラは抱きつきたいと思うほどだった。さすがに告白されたばかりで抱きつくほど度胸はないが。
「じゃ、また明日」
「ええ。明日」
コールは公園の入り口で大きく手を振るとムービングロードに乗って去っていった。残ったセアラは胸にあるペンダントをおしあてて幸せな気持ちをかみ締めていた。
ここに来てよかった・・・。
まるであのブルーローズが幸せを運んできてくれたようにセアラには思えた。これでパイロットになれたら言うことはない。いろんな人とかかわって狭い世界から広大な世界へと出てきたセアラには今の生活が何よりも大切に思えた。
これからコールとも思い出を作っていける。
「嬉しい・・・」
ぽつんと夕日が落ちた公園にセアラの言葉が落ちた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
この辺のストーリーはステルヴィアと展開が同じですが、途中でまったく別の道になります。
そこがオマージュたるところ。楽しみにしてください。10話で終わるので早いです。




