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第一話 あたくし、行きます!

しまった。叔母のセアラの物語を短編にしなかった。もうっかい掲載誌直し? 面倒だ。ということでセアラの関係話2です。もともとヘブン・ロードという物語でしたが、題名を改題しました。ロマファン風に。未来の話なのでかしこまった説明にしなくてもいいんですが。とにかく眠れず、疲れた。一話だけいれてあとは設定にしよう。




ショートカットのブルーグレイの髪がささっと素早くゆれ、セアラは執務室に入った。というか突撃した。そこには伯母であり名付け親の伯爵にして宇宙艦長夫人スーザン・ステュアートが重厚な椅子に座っていた。セアラの名前はスーザンの愛称セアラからとったものだ。

「どうしたの。セアラ? あら、ショートカットにしたのね」

 やんわりとスーザンは微笑みながらセアラのいきまく顔を見つめた。

「これは伯母様の若いころ・・・じゃなくて、あたくし決めたんです!」

 セアラはショートカットにしたわけを話すことを取りやめ、決意を表明した。

「だから、何を決めたの?」

「宇宙軍予備科に入ります!」

 スーザンは一瞬黙っていたがすぐにいつものおだやかな表情をとりもどした。

「宇宙軍は14歳から入るのよ。18のあなたでは無理よ」

「だったら事件の起こりそうなところへ行って民間命令を受けます」

 民間命令とは宇宙艦の中で何かが起こったときに臨時として宇宙軍の軍人になることだ。さすがにスーザンも顔色を変えた。彼女自身経験があるからだ。コロニーの反乱と流行病の治療。スーザンの愛称セアラをとってセアラと名づけられた特効薬の花もある。だが、それは並大抵の努力で解決したわけではない。スーザンは博物学者としてフィールドワークをするために航宙中だった。予定外の出来事に同僚となった軍人たちと衝突しながら解決したのだ。その一人とその後、再会し、結婚したのではあるがそれは別の物語である。スーザンは夫のヴァクスが地上勤務に切り替えられたのを機に娘と一緒に領地に戻っていた。双子の一人、エミリーは順調に素直に育っている。相方ののリチャードは今、伯爵のあとを継がんとして寄宿学校でがんばっている。スーザンは甥のエセルバート、姪のセアラをも自分の子のように育ててきた。おかげでスーザンの無茶な行動振りがセアラに遺伝したらしい。スーザンは苦笑いを禁じえない。この間は自立するんだといってどこかの辺鄙な辺境の惑星に行っていた。どうやらそこで恋をして失恋したらしいのだがその件についてはスーザンも良く知らない。セアラも話すつもりはなかった。二年ぶりに帰ってきたかと思うといきなり宇宙軍に入るという。

「並大抵のことでは乗り切れないのよ?」

 スーザンは諭すように言う。そして向かいの椅子に座るように手で指示した。スーザンはめったに怒らない。大抵、静かに諭すだけである。そんなスーザンがまじめな顔をして座るように言う。セアラは言われるままに座った。

「周りはみな、優秀な人たちばかり。あなたの成績は優秀だけど適性は違うわ」

「適正が違うとだめなの? 適性って何?」

 セアラは敬語も忘れてくってかかった。

「人間できることとやりたいことは別なのよ」

 静かにスーザンは言う。それに、と付け加える。

「言う相手を間違えてなくて? ご両親をまず説得なさい。そこから始まるわ」

「はい」

スーザンはそう言って立ち上がるとセアラを抱きしめた。スーザンの髪から花の香りがセアラを包んだ。スーザンは反対も賛成もしないようだ。そんなスーザン伯母にセアラは感謝した。


 2


「だ・か・ら。宇宙軍の予備科に入りたいの!」

 何度繰り返したかわからぬ言葉をセアラは吐き出した。目の前には眉間にしわを寄せている両親がいる。兄もいる。

「どういうことかわかっているのかい? 戦うということは人を殺すということなのだよ」

 父親アベルが問いかける。アベルはかつていとこのスーザンを殺すことに加担したことがある。両親の計画だったがそれはアベルにとってつらい出来事のひとつだった。スーザンは許しを受け入れ今もなおアベルたちに優しい。だが、罪は消えるわけではないのだ。人を殺すことの恐ろしさを知っているアベルにはとうてい受け入れがたい話だった。

「人を殺すだけじゃないわ。守る力だって手に入れられる」

「で、誰を助けたいんだい?」

 兄、エセルバートが冷静に問いかける。同じブルーグレイの髪でセアラとよく似ている。背が違っていなければ双子と間違えられるであろう。

「それは・・・」

「答えられないのならだめだな」

 アベルはそう言って立ち上がった。

「待って。お父様! 私はもう18よ。自分の道は自分で決めたいの。宇宙は恐ろしいところだわ。でも綺麗。あの中に行きたいの。星を見ていたい。夢を見ているのかもしれないけれどあたくしは、あの中に飛び込んでいきたい!」

 セアラは熱弁をふるって立ち上がった。

「あなた」

 母親のリーナが言う。その瞳はしかたないでしょう、といっているようだった。アベルは考える。

 長いのか短いのかわからない時間がたった。

「まぁいい。願書を出してきなさい。ただし、入試に落ちたら花嫁修業だ」

「ありがとう。お父様!」

 セアラはアベルに抱きついた。



「本当に行くんだね?」

 ターミナルでエセルバートは念を押した。試験にはパスした。これからその学園に向う。宇宙軍の訓練施設は第一主星系主星の近くにあった。そこまでこれから旅をする。もう両親とは別れを済ませていた。スーザンの補佐をしているアベルとリーナは急に用事ができ、愛娘の見送りにはいけなかった。少々寂しかったがセアラはこれからの緊張でめいいっぱいだった。

「うん。大丈夫」

 セアラはにっこりと笑う。

「これを。セアラ伯母様からの選別だよ」

「中をあけてもいい?」

「それは向こうについてのお楽しみだ」

「お兄様の意地悪」

 セアラがほほを膨らませるとはは、とエセルバートは笑った。

 楽しみを減らされてセアラはしぶしぶ了承した。そのときアナウンスがながれた。宇宙軍予備科船アトラスに行く船がもうすぐ出る。

「もう18なんだからしっかりするんだぞ」

 エセルバートはそう言って軽くセアラを抱きしめるとすぐに離して肩に手を添えた。じっとセアラの瞳を覗き見る。

「いっておいで。セアラ。僕たちはいつでも見守っているよ」

 エセルバートの手がゆっくりはなれた。セアラは餞別の小さな包みを持ってスーツケースをもった。

「行ってきます。お兄様。きっと立派な軍人になって帰ってくるから!」

 セアラはそう言って手を振ると歩き出した。

 家族とはなれることはなかなかない。伯爵家の娘として社交界にデビューする前は両親がいない間、スーザンや祖母と一緒だった。だが、これからはひとりになる。自立したいと勝手に家出したときとは違う。未来に向けて歩くのだ。少々遅い親離れだが・・・。


 緊張した気持ちで船の座席に座った。船が航宙に入る。星から旅立っていく。星から遠く離れていくのを感じてセアラは涙を流しそうになった。家族とはもう二度と会えないかもしれない。そんな気持ちがあったからだ。ホームシックが来るとは予想もしなかった。だが、これからいくアトラスではそうそう簡単に家族と連絡が取れない。だがそれを承知で選んだ道だ。セアラは自分を心の中で叱咤していた。

「大丈夫。大丈夫」

 セアラは独り言をぶつぶつ言って心を慰める。ふと思い立って餞別の包みを開ける。そこにはうっすらと発光する蒼い薔薇の苗があった。ブルーローズ。スーザンが発見し疫病の特効薬になった花だ。スーザンの薔薇、セアラ。不可能を可能にするといわれている花、た幻の花。

「伯母様・・・」

 スーザンが元気つけてくれている気がして苗を抱きしめてセアラは目に涙を浮かべた。

 そのとき船の画面に宇宙が写った。ガラス、ではない。映像だ。船が撮っている画像を直接疑似体験できるようにパネルを設置しているのだ。暗闇の中にぽつぽつと星が光っている。これだけの太陽があるということだ。

「綺麗・・・」

 セアラは薔薇を抱いたままつぶやいた。その横で嗚咽が聞こえた。見ると少女が泣いている。長い髪を頭のてっぺんでまとめて流している。ところどころ毛がとびちっているが気にならないらしい。亜麻色の髪が印象的だった。

 セアラはハンカチを取り出すとそっと差し出した。

「あ、ごめん。なんだか綺麗で泣いちゃった」

 後頭部をかりかり、とかきながらその少女は言った

「あたくし・・・いえ、あたしもそう思った。泣きたくなった」

 セアラはそう言ってにこっと笑った。相手もにこっと笑う。

「わたし、ルリ・サナダ。あなたは?」

 少女の言葉にセアラは詰まった。本来の名前は貴族の称号で長い。伯爵家の出だとすぐわかってしまう。特別扱いは無用だ。セアラは簡単に答えた。

「セアラ・ステュアートよ。よろしく」

 セアラはスカイブルーの瞳をきらめかせて手を差し出した。

 ルリはその手をぎゅっと握った。

「あなたも学園へ?」

「ええ」

「じゃぁ。これからはお友達ね」

 え?、とセアラは意外そうに答えた。友達とはそんなに簡単にできるものなのか。

「あなたはセアラ。私はルリ。名前がわかったらみな友達。なーんてね」

 にかっと少女は笑った。世の中そんなに簡単だといいのだが・・・。それでもセアラはこれから楽しく過ごせる友達ができたような気がしてうれしくなった。

「よろしく。あたしたち今日から友達ね」

 ノンノン、とルリは指を振る。

「親友よ。これからは親友。学園で最初に出会った友達を親友にすると決めてたの。あなたが第一号。おめでとー!」

 そういってセアラはルリに抱きしめられた。

 腕の中のブルーローズがつぶれそうであせったが片手だけでもルリの背中に回した。

「オーケー。オーケー」

 ルリはセアラの背中をばしばしたたく。

「ルリ。痛いですわ・・・じゃなくて痛いわ」

 お嬢様言葉を廃棄するために改めて言い直す。これからは普通のセアラ。伯爵家などの称号は関係ない。普通の少女として生きていける。セアラの心の中に自由がひろがっていた。これからの未来を切り開く自由が。

「よろしく。親友」

 セアラはそうルリに告げた。


今度は明日痛くなってきました。冷えているようで。でも布団に入っても相変わらずイライラとしてねむれないので掲載にやってきました。ここまで読んでくださってありがとうございました。

これもオマージュなんですが、クロスしてるのであえて原作を書きません。一話だけ置いてあとは設定しておきます。

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