堕鬼
内容を差し替えました
僕はふとしだ。暖かい布団に入り、冷たかった布団が、少しずつ暖かくなリ始めの、ふわふわとした感覚を味わっていた。
ドスン。
僕は布団越しに背中に強い衝撃を感じたので、地震かもしれないと思ったが、枕元の携帯は微動だにしていなかった。僕は不審に思い、辺りを見渡すと、あからさまに僕の部屋ではなかった。土埃の匂いがするし、僕の枕元には、あるはずのない学校の机が横倒しになっていた。
僕は受け入れがたい出来事に再び直面し、激しい動悸と吐き気を感じた。携帯を開くと白い画面に、文字が浮かんできた。
私はこの屋敷の主だ
君をこの屋敷に飛ばす為に、我々にとっての脅威も一緒に招かなければなし得なかったが、君を生贄にすれば、我々は呪いから解放される
君に恨みはないが、もう私達には他に自分たちが救われる道がないのである…
丁寧な長文が表示されていたが、読み切る前にシュルシュル、シュルシュル…と不気味な衣擦れのような足音が聴こえてきた。
「ドロヅ…」とにかくたくさんの化け物たちは目を光らせて歯を剥き出しにしていたのがわかった。僕はもう疲れてクタクタである。それなのに、この仕打ちはないであろうと思うと、だんだん腹が立ってきた。
どうしようもないくらいに、化け物たちが憎たらしかったので、学校の机の椅子を掴み、近くに来た化け物に振り下ろした。
「うぉぉぉーっ」と気合を入れて、よってきた化け物を椅子で滅多打ちにしてやった。叫んでいないと頭がおかしくなりそうだったので、何でも思いついた言葉を大声で怒鳴った。
「我が生涯に、一片の悔い無し!!」と叫び、気合を入れて僕の背後から羽交い締めにしてきた化け物の足を踏みつけ、両手で突き飛ばした。
その時、右頬に冷たく硬い感触と衝撃がはしり、僕を吹き飛ばし、僕は反対側にいた化け物によりかかるように倒れた。すると、化け物たちは僕をサッカーボールのように集団で蹴ったり、踏みつけてきた。背中や脇腹に何度も衝撃が走り、痛みが後からどんどんと僕に襲ってきた。僕は見る余裕などないが、化け物たちがニタニタと愉しんでいるような気がした。
ドゴッ…
化け物が椅子を使って僕の体を激しく打ちつけると、僕の左の前腕にあたり、強い痛みが走った。なんとか手で防御できたが、化け物は再び椅子を持ち上げてから振り下ろしてきた。
ボゴッと僕の脇腹に椅子の角が食い込むように打ちつけられた。僕は今までにない激痛と嫌な感触が脇腹から頭につたわってきた。叫びたくても声が出ない。
その時、ガチャ、ガチャと大きな鈴が鳴るような金属の音が聴こえてきた。僕は痛みを堪えきれず、目を閉じて呼吸するだけで精一杯であった。時々、僕の体を化け物が踏みつけたり、躓いたりしていたが。やがて静かになった。
僕は恐る恐る目を開けると、そこには化け物太刀が黒い血のような物を流して倒れているだけだった。
僕はポケットから携帯を取り出して、110に連絡をしてみたが、携帯は圏外であった。
僕はゆっくりと這えば身体が動かせたので、痛みを堪えながら部屋の出入り口に向かって進んでいった。化け物の腕や血を踏んでしまったりした時は、腐敗したぬか床に足を突っ込んでしまったようなを嫌な感じがした。化け物たちをこのようにしたのは、どんな存在なのだろう、と思ったが僕には考える余地などなかった。