突撃
僕は部屋の横にカーテンが見えたので、外を見てみることにした。カーテンをそっとめくると。見慣れた山の景色が見えた。
ここは廃屋の二階だというのがわかったので、僕は部屋を一個ずつ回らず廃屋の玄関の方角を目指す事にした。
できるだけ、見つからずに強行突破でいこう。
音を立てないようにドアノブを回して、廊下に出た。
ギシ…ギシ…と床が軋む音がする。
僕は早足で玄関のおおよその位置に向けて通路を進んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」息が上がる。
心臓の音が高鳴っている。助かるかもしれない。
通路を進んでいくと暗闇で見えなかった廊下の先から、シュルシュルと音が近寄ってくるのがわかった。
黒い人影がすごいスピードで飛んできた。
「ダッキ、だき、だ〜きっ!」
ガァァン!
僕は火かき棒で思い切り振り下ろした。
鈍い感触の後、黒い影の塊が僕を後ろに跳ね飛ばす。
「痛いって…」僕は仰向けになっていたが、体は動く。
化け物は僕にもたれかかり、息絶えていたようだった。僕は化け物をどかして先を目指した。
後ろからシュルシュルと足音がいくつも聴こえる。
僕は廊下を進み、階段を見つけた。
色々な方向からシュルシュルと音が聞こえる。立ち止まったら死ぬ。
階段への通路に人影が立ちはだかったので、僕は手に持った火かき棒を思いっきりぶん投げた。
ガィィン!
人影の頭に火かき棒がぶつかり、人影は壁の中に隠れた。
僕はドスドスと階段を降り螺旋階段を降りると見覚えのある玄関が見えた。
玄関には人影が二人両手を広げて立ち塞がっていたので、僕は階段の途中でジャンプして人影を踏みつけるように着地した。
ベチャベチャっ
不快な音がした。
二人の人影は僕に体の半分ほどを踏み潰され、苦しそうにバタバタと蠢いていた。
僕の靴やズボンには化け物の体液がべっとりとついていた。
僕はそのまま、玄関の扉を出て、建物の外に飛び出し、そのまま韋駄天のように山を駆け降りた。息が止まりそうになっても、足を止めずに走り抜けた。
山を抜け、とうとう見慣れたコンビニエンスストアまでやってきたので、中に避難することにした。
コンビニの駐車場には、ボロボロの軽自動車と新品のランドクルーザーが停めてあった。
中には見慣れた店員。
僕は自分の靴や服を見たが、化け物の体液等は付いていなかった。
なんとか逃げ切ることができた。
僕は携帯電話を開くと、いつもの待受画面と警察と父親からの着信履歴があった。
僕はコンビニでお茶と肉まんを買って、外に向かって歩き出すと。
自動ドアに黒い老人が張り付いているのが見えた。
(いい加減にしろや…)
僕はドア越しに蹴り飛ばすふりをすると、
化け物はびっくりして腰を抜かしたように尻餅をついた。
僕はまた追いかけられてはたまらないので、携帯電話タクシーを呼ぶことにした。
コンビニのイートインスペースで肉まんを食べながらタクシーを待った。20分程でタクシーがコンビニの前に停まったので、僕はタクシーに乗り込んだ。
「お客さん、どこまで?」
「とりあえず、車を出してください」
「わかりました」
コンビニの駐車場にいた化け物は何処かに行ってしまったのか、問題なく車は走り出した。




