天泣
僕の名前はたけし。
親友のふとしが休んでいる間、彼からメールが送られてきた。丁度、国語の授業で退屈だったので、携帯電話を開いた。
「たけし、あれから何変わったことはないか?」
彼は絵文字を使わない奴だ。
僕も絵文字をいちいち考えなくて良いので気楽だ。
何も無い、ふとしは大丈夫か?
と僕は返信をした。
「少しだけ、化け物に呪われたけど、だいぶ良くなってきた」
呪いだって?
俺はなんともないけど、自分も何かしら呪われているのか不安になった。
「時々、周りの人間の顔が廃屋で見たような化け物に見える時がある、日に日に症状は治まってきている」との事だった。
僕はあの廃屋には近寄らないほうが良いな、と思った。
「たけし、助けてくれてありがとう、お前を巻き込んですまなかった、許してほしい」
僕は気にするな、と彼に返信をして、授業に意識を向けた。曇り空の昼下がり、閑散とした教室に黒板と教科書しか見ない教師。
退屈だ。
もう、昼寝でもしたくなってしまったので、僕はほんの少しだけ机に顔を伏して目を閉じてみた。
外では少しだけ雨が降り始めた。
意識が遠のいていく。
「この小説の作者は、ここの段落で主人公の生い立ちと、性格を、たった一つの文章で表現している…」
つまらない授業だ。
そんなの読めばわかるよ。
僕は眠ってしまっていたらしい。
机から顔を上げると、周りは薄暗くなっていて、教師も他の生徒もいなかった。
……うそ、だろ?!
僕は悪夢でも見ているのだろうと思ったが、感覚がしっかりしているし、焦燥感や不安をしっかりと感じていた。
僕が座っているのは教室の自分の席であり、携帯や鞄もそのままである。
僕は携帯を開くと青白い光とパチッとプラスチックの携帯が開く音が響いた。
待ち受け画面はなく、白い画面には
ようこそ、
と文字が浮かんでいた。
僕は自分の身体が汗ばみ、呼吸が早くなっていた。
形態の電波は通っていたので、110番に連絡をして助けを求めることにした。
僕はとにかく、素早くダイヤルを押して、警察が電話に出るのを待った。
はやく、はやく出てくれ…
「はい、××警察です」
「今、気づいたら知らない場所に閉じ込められているから助けてください」
「はぁ、知らない場所ですか? どのあたりにいるか検討はつきますか?」
「わかりません、とにかく古くて暗い建物なんです
「うーん、君は今○×山からこっちに電話してるみたいだね、名前は?声が若いけど学生?」
僕の後ろからシュル、シュルと着物が擦れる音がする。
「もうだめかもしれません、とにかく助けてください」と言って僕は電話切った。
僕は後ろを向くと例の老人のような化け物がニタニタと笑いながら両手を広げて襲いかかろうとしていた。