トゥルーエンド
「終わったか…もう少し虐めて上げようと思ったのに」と言って彼女はジャージを床から拾い、埃を手で払った。
彼女は1人部屋に佇み、電子タバコを口をくちに咥えると、うっとりとした表情で大きく深呼吸するように煙を肺に取り入れてからゆっくり吐き出した。そして「帰ろ」と独り言を呟いてから机の上の秤をウエストポーチから取り出したビニール袋に入れて、振り回しながら部屋から出ていった。
部屋は月明かりに照らされ、微かに舞う埃がキラキラと輝いている。部屋に取り残された男の衣服がゆっくりと塵になっていった。
〜〜
たけしと太郎はこれからどうしようかと途方に暮れていた。とりあえずここから出ようと言うことで話がまとまったので、入口まで歩く事にした。
歩きながら、太郎はたけしにエナジードリンクの造り方、蒙古襲来について聴いてきたので、たけしは知っている限りのことを伝えた。太郎は蒙古襲来が2回も続いたが、いずれも嵐が蒙古を退ける事が聴けて大いに喜んでいた。
エナジードリンクの造り方は知っている範囲で蜂蜜、カフェイン(茶葉にも含まれている)、果糖、香料、炭酸水を混ぜて作ることを伝えた。
たけしは携帯を開くと電波が再び通っていたので、炭酸水の造り方を調べて、竹炭を使う方法を太郎に伝えた。
太郎は携帯電話に驚きを隠せない様子で、とても珍しそうに見ていた。
廃屋の玄関に着くと、玄関が開いているのが見えた。玄関に近づくと徐々に太郎の身体が金色の霧のような物に包まれていった。
「たけし、仲間の声が聴こえてきた、どうやらここでお別れのようだ」と太郎は不慣れながらも現代語で告げたので、たけしは感謝の意を込めて硬く握手を交わした。
たけしは太郎と一緒に行動して、言葉よりも想いと行動があれば、言葉は不要になると実感していた。太郎はたけしの手を力強く握り返し、笑いながら消えていった。
たけしは清々しい気持ちで屋敷から出ていった。彼の頭上には綺麗な満月と透き通った夜空が広がっている。




