たけし
僕の名前はたけし。僕が住む町から外れた山の中には、誰も近寄らない廃屋があった。西洋風の豪邸であり、大きな窓から屋内がある程度覗き込めたが、周囲の人はその豪邸に近寄りたがらなかった。何年か前にそこで遊んでいた小学生達が行方不明になった為、立ち入りが禁止されて久しい。
夜にはよくわからない若い男女が集まって酒を飲んだり、廃屋にどこまで近寄れるか肝試しをしていたので僕は明るい時間帯に廃屋を見に行っていた。
僕の住む街には大して娯楽と呼べるものはなく、商店街にはいつも同じ服を着た年配の男女が歩いていた。子供の数が少なく、僕は同年代の友達より、大人達と話す機会が多かった。
僕には ふとし と言う親友がいて、中学の放課後に2人で鬼ごっこをして遊んだ。2人で捕まえる役を交代したので、かなりハードな鬼ごっこだった。一対一の真剣勝負であり、予期せぬ出来事が起こったり、思いも寄らないファインプレーにより腹が捩れるほど笑うこともあった。
ふとしは勉強が出来て、大人たちが言うにスマートなんだとか。ふとしは女子からの人気もあったので少し羨ましかった。
ある日、ふとしは廃屋で肝試しでもしてみないかと僕に持ちかけた。




