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1 変な男を連れてきてしまった。


「フレイヤ様。どうか、私もあなたのしもべに」

「ああ、わかった。わかった」


 二十代の美しい青年が、皺だらけのばばあに許しを請うようにひざまずく。

 このばばあ、ただのばばあではない。

 魔界に二百年君臨する魔王だった。

 魔物優しく、魔界を愛する魔王。魔物には見えない、ただの()()()にしか見えない魔王だが、魔物たちには好かれていた。

 そんな魔王、一つだけ欠点があった。

 それは無類の男好き。

 しかも若い人間の男である。

 今年百歳になり、外見は二十歳にしかみえない息子は、何度も嗜めていたが、まったく効き目はなかった。

 普通の人間は魔界の瘴気に耐性がなく、二年ほどで死んでしまう。

 すると数年後、魔王はまた若い男を攫ってくる。

 しかも、魔法をかけて。

 魔物、しかも若い美しい魔物ならまだ知らず、普通のばばあにしか見えない魔王を見目の良い青年が好きになるわけがない。なので、魔王は連れてきた男にはいつも魔法をかける。

 今日連れてきた男ももちろんそうだと魔王の息子ディランは思っていた。

 もちろん、魔王自身も男の態度から自分が魔法をかけた後だと思い込んでいた。


「フレイヤ様。あなたの皺だらけのお顔、とても個性があって大好きです。こうしてあなたのそばにはべるのをどれほど待っていたか」


 男の言葉に、魔王フレイヤが動きを止める。


「皺だらけ?」


 フレイヤは()()()だ。皺もたくさんで、それは欠点だ。魔法をかけられた男たちはフレイヤが若い美女に見えるようで、その容姿を讃えることが多い。こうして皺だらけの顔が個性的などと悪口にしか思えないことを言われたのは初めてだった。


「魔法の掛け方を間違ったか」


 魔王こと母がぼやいて、その言葉が引き金になり息子のディランが笑い出す。


「皺だらけ、はははは!」

「笑うな、ディラン!」

「なぜおかしいのです。素晴らしいではないですか。その皺はフレイヤ様の生きた証。皺一本一本にフレイヤ様の生き様が見えます。ああ、なんと尊い」

「……母上。おかしな魔法をかけましたな」

「どうも腕が鈍ったようだ」


 魔王フレイヤは首を傾げた後、再び魔法をかけようとした。


「フレイヤ様。お待ちください。私には魔法が効きません。私の体質は魔法を弾いてしまうです。どうか、魔法をかけないでいただきたい」

「は?ディラン。どうもわしの耳がおかしくなったようだ。この男が言ったことをもう一回繰り返してくれないか?」

「ええっと。母上」


 ディランも先ほど男が言った言葉が信じられなかった。しかし、魔王である母に嘘をつくことができない。


「なんでも、魔法が効かないとか。もし魔法をかけようとしたら、その魔法を弾くそうです」

「……やはり、そう言っておったか。それなら、この男、魔法にかからず、この状態なのか?」

「のようです」

「フレイヤ様。私めになんでもお命じください。私はこの日のために、炊事、洗濯、掃除、なんでも学んでおります。なんならマッサージをご所望いたしますか?」

「……ディラン。どうやら、わしは少し疲れているようだ。年は取りたくないものよ。しばらく休む」

「母上?!」

「ああ、フレイヤ様。私を寝室に連れて行ってくれませんか?極上のマッサージをいえ、それ以上のおもてなしをいたします」


 ディランは年取った母と若い男の何何を想像してしまい、口を抑えた。

 

「醜い」

「何かいったか?ディラン!」

「な、なんでもございません!」

「ならよい。その男、少し頭がおかしいようだ。様子をみたほうがいい。どこかに部屋を与えておけ。ああ、人間だから丁重にな」

「母上。正気ですか?!」

「わしは疲れた。寝るぞ。あとは任せたぞ」

「母上!」

「フライヤ様ああ」


 ディランは不満たらたらと、男は変態チックに魔王を呼ぶ。

 魔王はそれに耳を貸すことなく、自室へ戻って行った。





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