表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはたしなみの範疇です!  作者: ptw
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/119

たしなみ32


功労賞の授賞式が終わり、優雅な音楽が流れ出したのを合図に、ダンスパーティが始まった。


今夜のファーストダンスは、功労者全員だ。


メイシーは、さも当然のごとく殿下に連れられてホール中央へ歩を進めた。


ラグナーラお姉様は………。


(ん?)


お姉様は、何故かグレン様にエスコートされてダンスフロアに向かっている。


(えっ、ヨゼフ様は??)


メイシーは、ヨゼフ様の姿をキョロキョロして探した。


すると、ヨゼフ様は、見たことのないご令嬢をパートナーにしていた。


(えっ?えっ??授賞の時は、ラグナーラお姉様はお父様と入場されていたし、ヨゼフ様はお一人だったわよね……。ヨゼフ様!?)


メイシーは、ヨゼフ様のことが気になりすぎて、チラチラそちらを見てしまった。


すると、メイシーの背中に添えられた手に力が込められた。



「……私の前でよそ見とはいい度胸だな、メイシー」


「え!それは、その……」


「言い訳は聞かない。其方は私だけを見ていればいい」


「で、殿下……」


メイシーは殿下のその言葉に顔を赤くして俯いた。



「顔を上げて」


曲が変わり、踊り始めるタイミングだ。

観衆が、ダンスフロアに注目している。



「……皆が其方を見ている」



殿下は、開始直後にメイシーを高く抱き上げ、くるくると回りながらメイシーを着地させた。


メイシーのエメラルドグリーンのドレスが花のように揺れて広がり、観衆が『ワッ!』と湧いた。


「殿下……!」


「よそ見などするからだ」


殿下が楽しそうに目を細めて、再びメイシーの背に右手を添え、左手でメイシーの手をグッと引いて動いた。


メイシーは、殿下のリードになされるがままだ。

二人はフロアの中央から観衆の近くまで颯爽と移動し、観衆の手前で、殿下がメイシーの上半身を大きく反らせて、まるで見せつけるかのように留まり、ゆっくりと体を起こしてまた背中を引き寄せた。


二人のパフォーマンスに、観衆は拍手と歓声で答えた。



「……やりすぎです、殿下!」


「これでも自重しているが?」


「どこがです!私を見世物にするおつもりですか?」


「何を言う。其方は自分の価値を全く分かっていないな」


「……どういう意味です?」


「今宵は其方の姿を見にやって来た者たちだらけだ。せっかくなのだから『花の妖精』でも『癒やしの女神』でも『光の女神』でも、好きな呼び名を増やしておけ。信奉者が増えれば、其方が後々王妃になった時に良い手駒となる」


「で、殿下……!」


メイシーは、呼び名についてはよく分からなかったものの、殿下が将来的にもメイシーを望んでいることを告げられた気がして、顔が熱くなった。


ダンスはそろそろ終盤に差し掛かっている。


曲がフェードアウトした時、殿下がメイシーの耳元で囁いた。



「メイシー。其方に祝福を」



殿下がそう告げると、メイシーの頭上からはキラキラと光の粒が舞い降り、メイシーに触れると、溶けるように吸い込まれた。

観衆は、その様子にうっとりとしていた。



「きれい……」


「其方の明るい未来に」



殿下はメイシーに微笑んだ。

メイシーは嬉しくなり、殿下にも同じ祝福を贈りたくなった。


殿下の手を取り、そっと目を閉じた。



「……殿下に全ての祝福を。どうか、陛下と殿下の平和な治世が続きますように」




メイシーの祈りは光の奔流となり、ホールの天井高くまで昇り、やがて最も高いところで弾け、会場中に、まるで流星のように勢いよく降り注いだ。



壇上の皇帝陛下は驚きに目を見張っている。


会場中の人々が一斉に天井を見上げ、美しく幻想的な、降り注ぐ光のきらめきを、驚きや感動や、ワクワクした気持ちで見つめていた。






「……其方はいつでも、誰の予想をも上回ってくる。流石、メイシーだ」


殿下が、呆れたような表情で、口元には笑みをたたえてメイシーを見つめた。


メイシーは、やりすぎて失敗したと思い、肩をすくめたが、目の前の殿下も、周りの観衆たちも、実験室の仲間たちも、皆が驚き、笑い、楽しそうにしていたので、身をすくませるのを止めた。


そして、いたずらっぽい笑みを浮かべてこう言った。












「………これはたしなみの範疇です!」










おしまい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ