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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~バンドー叛乱編~

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七十二話 浦島太郎か三年寝太郎か?

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 俺が目覚めてから2週間が過ぎた。

 声の方はもうすっかりと戻っていて普通に話す事が出来るまで回復した。

 身体も雷身(ライシン)で身体強化を掛けて無理やり脳と一致する動きをさせることで徐々に毒に倒れる前のような動きを取り戻しつつある。


 幸運だったのは七歩蛇の毒が筋収縮系の神経毒だったことだな。

 3年間も寝たきりだったにもかかわらず身体の筋肉は落ちてはいないようだ。

 むしろ身体中がずっと力を入れたまま鍛えられたような状態だったので肉体強度が上がっている気がする。

 それなのに関節が固まっていないのはセンシャ様の薬のおかげだろう。

 身長が伸びていないのだけはショックだったが。


 まあ俺としては寝ている間の時間感覚が無いので、寝て起きたら3年経って9歳になっていたという浦島太郎みたいな状態だ。


 目を覚ました日以来、家族全員で見舞いに来ることは無くなったが、暇を見つけては個別で会いに来てくれている。


 屋敷の主で毎日顔を合わせるルアキラ殿を除けば、一番見舞いの頻度が高いのはエタケだ。

 俺の前世について質問することに遠慮が必要なくなったからなのか、最近は前世世界の格闘技や舞踊、音楽など色々なことを聞いてくる。

 なんでも我流の武術を生み出すことを目指しているのだそうだ。

 ニートだった期間に見ていた格闘技系動画配信者の解説などの記憶を手繰り寄せて、ジークンドーの開祖の話などを聞かせてあげると目をキラキラとさせて喜んでいた。


 お花が大好きだった可憐なエタケは変わってしまったのか......。

 などとちょっぴり悲しくなりそうだったが、見舞いに来るときは絶対に俺が贈った蝶の髪飾りを付けているので根本は変わっていないのかもしれない。

 なによりも3年でより一層可愛くなった。

 笑顔などまるで花が咲いているかのようだ。

 将来がとても楽しみである。


 キント兄とサダ姉は兵部の訓練が忙しいらしく、休みが一緒なのか見舞いに来るときは大体同じ日だ。

 ただし時間は被らないので何か二人で打ち合わせしてるのかな?

 俺としては一緒に来てくれても一向に構わないのだが。


 そんな二人もこの3年でかなり大人っぽくなった。

 キント兄は今年の初めに14歳で元服して烏帽子(えぼし)を被るようになっていた。

 去年の御前相撲で3度目の優勝を果たしたそうで殿堂入りとなったから次は大人の部へ挑みたいのだそうだ。

 うちの長男は相撲の為に元服した相撲バカと呼べるのかもしれない。

 喋り出すと変わらないヤンチャ坊主なのだが、黙っていれば金髪のイケメン青年だ。

 元服したという事はずっと憧れているシウ姉さんとかいう方に婚儀を申し込んだりするのかな?

 上手くいったら盛大に祝ってあげよう。


 サダ姉も俺と話している間は昔のワガママ少女の一面があるのだが、見た目の麗しさは兵部でも一目置かれるほどの人気があるそうだ。

 つい先日キント兄から聞いたというか口を滑らせた話だが、1年前に縁談の話が持ち上がってサダ姉もその方に満更では無かったそうなのだが、なんとお相手が亡くなってしまって破談になったらしい。可哀想に......。


 非常に気になるが流石に本人に聞く程デリカシーに欠けた性格ではないので母様が来た時にでもこっそり聞いてみようかな。

 サダ姉には幸せになってもらいたいものだ。


 ヨリツ父上はクスベ一族捕縛の功績から恩賞として右大史に任官されたようで、兵部権大輔(ひょうぶごんたいふ)と兼任らしく以前にも増して忙しいようだ。

 サキ母様は相変らず近衛として内裏で主上の警護に当たっている。

 ただ美容について後宮の姫たちに人気が出ているようで、ルアキラ殿に頼んで美容品を卸してもらい、献上や販売の形でやんごとなき血縁の姫たちとの縁を繋いでいるようだ。つよい。


 サイカは俺が眠っている間は週の何日かをツチミカド邸で過ごしてルアキラ殿たちと共に俺が自室に書き溜めておいたあんなものやこんなもののアイデア表から新たな品々を生み出してくれていたようだ。


 てか自室上がり込まれて色々見られたのめっちゃ恥ずかしいんですが......。

 まぁ、前世と違って見られて恥ずかしいものや偃息図(おそくず)......前世で言う春画やエロ本なんかを隠したりはして無いけども。

 爺ちゃんの書物棚の医学書欄に房中術のものが混じっていて読んでしまったことがあったけれど、アレじゃ興奮出来そうにはなかったしな......。

 プライバシーなんて言葉は無いし子供の部屋を漁られただけだから気にする事じゃないさ。


 生み出された品々のおかげで俺が居ない間も色々な方面から新たなモノが世に出ていたようでなによりだ。

 皇京の庶民も含めて酒と調味料理の食文化が一気に普及してるみたいだからね。


 少しずつムクロジの木や下水道と公衆厠(こうしゅうかわや)が増えてきて、その近くでは衛生環境の改善が見られるようになってきたようだ。

 下水道は開渠型(かいきょがた)を採用したようで上部は分厚い木の板で塞いであるという。

 地下トンネル型も一度着手してみたようだがやはり時間と費用が掛かり過ぎるので頓挫したらしい。


 周りの人物が命素量も多く魔法に優れている者ばかりのため麻痺してしまっていたが、いつぞやのテミス家三つ子姉妹のように簡単に土壁を出せるような人物はそうそう居ないという事か。


 皇京の南西はまだまだ湿地帯が残ってるままらしいが、人が多く居るところからやるべきだし仕方ないな。


 そろそろ外出許可も出てクラマにも行けるようになるのでその時に街を見るのが楽しみだ。


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