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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~毒と影編~

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六十八話 死因の解明と暗殺者の影

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 ミナ殿の許しを得て、ナガ殿の亡骸を見分することになった。

 まず死者へのことわりをいれるために、亡骸の顔の横にしゃがんで両手を合わせて拝んだ。


「死してなお辱める無礼をお許しください」


 改めて亡骸を見るとその死に様は壮絶だった。

 爺ちゃんから聞いた死亡時の様子のまま、右手は胸を、左手は喉を掴む様にして固まっている。

 そして肌は石のように硬く、皮膚の色も青みがかった灰色で、死後硬直というよりは本当に石になったように見えるのだ。


 だが実際に石になったわけではない。

 竹筒の水で手を濡らして触れると内部に電気が通る。

 冷たくなり神経や心肺機能も完全に停止しているが、それは普通の死体と変わりない。


「あの、失礼でなければこの姿から寝ているような恰好へ腕とお顔を動かしても大丈夫でしょうか? ずっと苦しそうなままというのは可哀想で......」

「石のようになって誰も指の一本さえ動かせなかったというのに、そんなことが可能なのですか!? 是非お願いします!」


 前世創作物の推理モノでもこの世界であっても、恐らく死体を無暗に動かさないというのは正道なのだが、死後も苦しそうな姿を見ていると、どうにもこのままで居させるのは可哀想に思ってしまった。

 石になったわけではないことは確かめたし、こっそり電気を流せば小指を少し動かすことも出来た。


 俺はミナ殿に許可を取るとナガ殿の身体に電気を流して収縮していた筋肉を弛緩させ、少しずつ寝ているような状態へと腕を動かした。

 同じように顔の表情筋も弛緩させると、皮膚の色は変えようがないが先ほどよりは穏やかな眠りについているように見える。


「ありがとう......。ありがとう......」


 処置を終えるとミナ殿が両手で俺の両手を掴み涙を流して礼を言ってくれた。

 傍らに立っていた爺ちゃんも頭を撫でてくれる。

 少しは役に立ててよかった。


 引き続き、ナガ殿の身体を見分していく。

 暗いので松明を寄せるが暑くて仕方ないので、爺ちゃんに雷玉を浮かせてもらい灯りにした。

 うん。これなら明るいね。位置の調節も爺ちゃんがしてくれるし楽だ。


 そうして首や腕、肌着をはだけさせて胸など上半身を見たが以上は無かった。

 下半身の見分に移り、足を見ると右脚の襪と呼ばれる足袋の親指側に黒い汚れが見えた。


 これは乾いた血痕だな。

 前世でアトピー症状が酷く引っ搔いた時にはシャツによく付けてしまっていたので見覚えがある。


 右足の襪を脱がせると親指の横に2つの点があった。

 2つってことは牙の痕? 咬傷か?

 何らかの生き物に咬まれた?

 

「ミナ殿、これをご覧ください。咬傷に見えるのですが、クジョウ家では毒牙を持った生き物など飼育されておられますか?」

「そう見えますね......。いえ、我が家では主に騎獣となる魔獣の世話だけなので毒のある生き物は居ません。そういった毒の生き物を扱うのは昔取り潰されたロキ家、今残っているのは典薬寮(てんやくりょう)に薬にもなる毒を卸しているクスベ家?」

「クスベ家と言えば今年の正月の貢物はまさに国外の珍獣たちじゃったな......。まさかその中に毒を持ったモノが紛れ込んでおったということか!?」


 生き物の傷に詳しいであろうミナ殿が確認し、咬傷であることが確定した。

 毒を持つ生き物に詳しい者達の心当たりもあるようだ。


 どうやったのか。(Howdunit)その手掛かりを見つけたら、誰がやったのか。(Whodunit)に結びついた気がする。

 次は凶器の確保に動くべきか。


「爺ちゃんクスベ家の献上品の目録を取り寄せて、あとその珍獣たちは今ど————」

「これは......。囲まれておるな」


 どこから湧いて出たのかいつの間にか俺たちは囲まれていた。

 元々次はミナ殿も消すつもりだったのか、それともどこからか監視していて気付かれたことに反応したのかは分からないが、雷神眼で見ると周囲の暗闇には5名の人間と多数の獣の反応がある。


 数匹蛇のようなものも居るが、これのどれかが凶器となったやつかな。


 ここで仕掛けて来たってことは奴らにとって最上が俺たち全員の口封じ、ミナ殿が死ぬのが次点の目標ってとこかな。 


 困ったな。丸腰は辛い。

 俺の武器は近場の松明くらいしかないぞ。

 後は御守り代わりに付けてる白竜の指輪くらいだ。

 流石に鉄棍持って参内は出来なかったからなぁ。

 こういう時の為に今度からは暗器も用意しておこう。


 爺ちゃんの雷の網は目視出来ている範囲しか出せないらしいから、周囲全方位を囲まれてるのは厄介だな。


「爺ちゃん。デカイの空に1発撃って援軍が駆けつけるまでどれくらい掛かる?」

「んーむ。見回りしとる者が笛を吹いてから5分というところかの」


 5分かそれまで俺たち五人でなんとか————


「ぐうっ......!!」

「おっと、動くなよ? オレだって同僚の命を奪いたくないんだ。大人しく三人纏めて死んでくれよ」


 見張りをしていた衛士の一人がもう一人の脇腹に短刀を突き刺した。

 コイツが犯人とグルだったようだ。

 戦力が三人に減り、人質を一人取られた。



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