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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~百足蜈蚣編~

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六十一話 妖魔大蜈蚣

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「まったく。お主の運はどうなっておるんじゃ?」

「俺に言われても困るよ!」

「総員警戒せよ! 足元に違和感を感じたら直ぐにそこから飛び退け! 奴は下からも来るぞ!」


 討伐隊の出陣を見送ろうとしたその時、周囲に妖魔の気配が立ち込めたのだ。

 

 以前対峙した時とは違う? なんだこの違和感......。


 俺が妙な違和感を感じた時、隊員達の足元の地面が複数個所で同時に動いた。


「散開!!」


 デサート殿の掛け声で隊員達が一斉に動き出すと、先ほどまで人が居た箇所に13匹の子蜈蚣が飛び出してきた。


「攻撃開始! 動き続けろ!」

「おぉ!! -火玉(カギョク)-」

「くらえ! -槍炎(ソウエン)-」


 討伐隊の面々が火属性の魔法で子蜈蚣たちを焼いていく。

 地下からの奇襲を躱されて地上に姿を晒した蜈蚣たちは恰好の的だ。

 次々に炎に巻かれていくが、蜈蚣もそのままやられるだけでなく、炎を纏ったまま隊員たちに突撃をかけようとする。

 そこに「放て」の一言で次々と矢が襲い掛かり、蜈蚣たちは針鼠になって沈黙していく。


 その見事な手際に、おぉー! っと歓声があげかけた時、地面が大きく揺れた。


「来るぞ! 大蜈蚣(オオムカデ)だ!」


 地震がやや続いたかと思うと一瞬静かになった。

 そして次の瞬間、ドゴォ! という大きな音と共に地面から大きな蜈蚣が現れた。


「出たぞ! 今が好機だ!総攻撃をかけよ! 放てぇええ!!」


 隊員たちが飛び出した大蜈蚣に一斉攻撃を仕掛ける。

 ......しかし様子がおかしい。


「え? 頭じゃ......ない?」


 攻撃の煙が収まると地面から出ていた部位は頭部ではなく尾節だった。

 それに気付いた時、隊員達の足元から再び子蜈蚣たちが飛び出て来た。

 飛び出した子蜈蚣は近場に居た隊員達に噛み付き、その大きく鋭利な双牙から痛みの毒を流し込む。

 

「うわぁ!!」

「きゃぁああ!!!!」

「怯むな! 近くの者が援護せよ! 刀を持つ者は抜刀! 噛み付く蜈蚣の頭を落とせ! 槍使いは眉間を突け! 弓の者もだ!」


 奇襲に怯まず動けた者は多くはいなかったが、それでも立て直しまでの時間はかなり早かった。

 だが、そちらに気を取られている間に大蜈蚣の尻尾のようになっている2本の曳航肢が尾節を中心にして横薙ぎに180度ずつ振り回された。


「びゃっ」

「ぎゃ」


 一瞬の出来事で本人たちには恐らく何が起きたか分らなかったであろう。

 ビュオッと太いものが風を切る音と共に一度の攻撃で十人以上の隊員が弾き飛ばされ、あまりの衝撃に四肢や頭は千切れ、胴体がおかしな方向に折れ曲がったりしている。

 おそらく今の攻撃に巻き込まれたものに生者は居まい......。


「くそぉ!!!!!! ≪祓い給え 清め給え≫ -破魔之矢(ハマノヤ)-」

「悪いがこれ以上は見ておれん! -雷槍(ライソウ)-」


 デサート殿と爺ちゃんが大蜈蚣へと攻撃を仕掛けようと動いた時、デサート殿の後方の地面が揺れて土が盛り上がった。


「デサート殿! 後ろだ!」

「なっ!?」

「むぅんっ!!!!」


 俺が呼びかけると爺ちゃんが即座に反応して腕を振る。

 すると飛んでいた雷の槍が盛り上がった地面へと方向転換して突き立った。

 その瞬間、飛び出そうとした大蜈蚣の頭部に直撃し大蜈蚣は悲鳴をあげた。


「ギェーーー!!!!」

「ワシの雷槍で貫けぬじゃと!?」


 爺ちゃんが放つ雷の槍は、普段であれば鉄の鎧を貫く程の威力を持っている。

 だが大蜈蚣の鳶色をした頭部は多少傷ついているだけで凹みすらしていなかった。

 

 奇襲を諦めたのか大蜈蚣はそのまま地面から這い出ると蛇のように蜷局を巻いてその全身を露わにした。

 

「以前よりデカくなってる......」

「なんという......」


 蜷局を巻いているので詳しく目測出来ないが、その全長は50mはあるだろうか。

 もしかしたらもっとあるのかもしれない。

 鳶色の頭と無数の足と鞭のようにしなる曳航肢。漆黒の背面に灰色の腹面。

 左右に4つずつある真っ赤な目。

 右側の目の1つは潰れ、先ほど露出していた尾節には多少傷があるが、それ以外は無傷のようだ。


「目以外は先日の傷が完全に癒えていたか……」

「脱皮したのかもしれませんね......そして雷に対して耐性を得た可能性もあります」

「バカな!?」


 蜈蚣は成長すると蛇のように脱皮をする生き物だ。

 前回の傷が癒えていることも身体が大きくなったこともそれで説明がつく。

 その際に前回受けた雷魔法への耐性を得た可能性がある......。

 目の傷が治っていないところを見るに、妖魔だからか陽属性は耐性が得られないのであろう。

 デサート殿が討伐隊の編成を火属性に入れ替えた判断は大正解だったようだ。

 俺は自身の推測を交えて二人にそう告げた。


「ならばワシは足止め役じゃな」

「者ども! 大蜈蚣の周囲を燃やせ! やつが地面に潜る場を与えるな!」


 爺ちゃんは両手を胸の前で指を交差させて組むと以前巳砦(みのとりで)で大量の魔獣の動きを封じた魔法を使った。


「≪天網恢恢(てんもうかいかい)疏而不失(そにしてうしなわず)≫ ‐雷網(ライモウ)‐」

「おぉ、これが音に聞く天雷の独自魔法......」


 雷で編まれた網が、蜷局を巻く大蜈蚣の巨体を地面に押さえつける。

 大蜈蚣は穴を掘って回避しようとするが、辺り一面が炎によって焼かれていて逃れる事が出来ない。


「今じゃ!」

「とっておきの矢を使わせていただく! ≪祓い給え 清め給え 南無八幡大菩薩 我に力を与え給え 天翔ける一筋の星辰≫ 剛力必中! -破邪流星(ハジャリュウセイ)-!!!!」


 デサート殿が詠唱と共に陽属性の魔力が籠った特製矢にさらに陽属性の魔法を重ねた必殺の矢を放つ。

 煌めく軌跡が夜空を駆ける流星のように光り、大蜈蚣の眉間へと吸い込まれるようにして刺さった。


 ......かのように見えた。



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