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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~百足蜈蚣編~

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六十話 燃え盛る本陣

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「どうして本陣が! あっ! あそこで戦ってる! あれは以前より小さく感じるけれど大蜈蚣(オオムカデ)!?」

「ワシが行く。ツナはコゲツと共にここで待て!」

「分かった! 気を付けて!」


 爺ちゃんが加勢に入っている間、コゲツに乗って空から周囲の様子を確認する。

 妖魔大蜈蚣討伐隊の本陣とされた場所、そこにある庵と呼ばれる運動会のテントのような天幕の幾つかと、その周辺には火の手が上がっていた。

 煙で良く見えないが、所々で剣戟のような音と怒声や悲鳴が聞こえる。


 この煙、臭いがキツイ。

 大蜈蚣の毒を燃やしてるならかなりヤバいかも? 下手に吸わない方が良さそうだ。


 俺はコゲツに煙に入らないようにして風上へ向かえと指示して改めて周囲を観察した。

 以前より小さい5mくらいの大蜈蚣が複数居る? 纏っている雰囲気は妖魔だ。

 もしかして竜王が言っていた卵が還ったのか!?

 長くて1週間と聞いていたから5日と予定を早めたというのに、それよりも孵化が早かったという事か。

 もしくは大蜈蚣が強制的に孵化を促進させた?

 果たしてそんなことが可能なのだろうか?


 妖魔の生態は分からないことが多い。

 以前の百鬼夜行の際には首魁となったライゴウと呼ばれた鼠人(ラット)族の僧が鉄鼠(テッソ)という大鼠の妖魔になり、その身体から無数の小さな鉄鼠を生み出し続けたという記録もある。

 その時はライゴウの首を落とせば他の鉄鼠も消えたとされているが、全てが同じだと先入観で考えてしまうと違った時に困る。


 今はデサート殿を探すのが先決だろう。


「デサート殿! デサート・タワラ殿は居られぬか!? 子天狗が約束の品を届けに参った!」


  俺は竹の水筒で喉を潤しながら、煙を避けつつ熱気が舞う空を駆けるコゲツの上から何度も叫んだ。

 すると、反応が返って来た。


「ここだ! 子天狗殿! 拙者はここに居るぞ!」


 声のした方へ急行するとそこにデサート殿と討伐隊の隊員であろう者たちの姿があった。

 どことなく疲弊しているように見える。


「デサート殿! ご無事でしたか! これは一体何があったのですか?」

「功を焦ったオウミの守備隊が独断でミカミ山に仕掛けたが惨敗したようでな。本陣まで敗走して来たところを子蜈蚣共に追撃されたのだ。毒の件があるので火の魔法で応戦したが火のついた子蜈蚣共があろうことか天幕に突っ込んでな。この惨事というわけよ」


 オウミ守備隊か......自分たちの領地は自分たちで守る意地だったり、皇京から派遣された討伐隊に対抗心でも持ってたんだろうな......。

 その結果がこの本陣強襲を手伝ったとは笑えない。

 それよりも子蜈蚣ってことはやはり予定より早く孵化したのか。


「口から吐く毒は熱で無毒化されますが煙には毒が混ざっていますね。それに胴体に別の毒があるのか分かりませんが吸わない方が良さそうです」

「うむ。同感だ。煙を吸った者が数名居るが、全員が目口鼻をやられて動けなくなった。幸い死ぬほどではないようだがこの視界の悪い乱戦状態では彼らを守りながら戦うのは厳しい」


 この場で負傷者を抱えて戦うのは難しいだろう。

 俺はコゲツに乗って空から火の手の無い風上へと討伐隊の面々を誘導した。

 途中、逸れた者や生き残りが居ないか声を掛けながらの移動だったため、少し時間を要したが討伐隊として編成されたうちの8割は揃ったようだ。

 オウミ守備隊の生き残りも二十人ほど加わった。

 全体で十六人の負傷者が居るが戦闘不能の三人は巫女によって回復魔法が続けられている。


「移動中は子蜈蚣と遭遇しませんでしたね。全て倒したのでしょうか?」

「いや、竜王様から卵は50あると聞いていたが拙者たちが倒したのはまだ10匹程だ。乱戦になっているうちにもう少し倒している可能性はあるがな。オウミ守備隊の生き残りの話だとミカミ山で襲われた時は5匹も倒せていないらしい......」


 ということはまだ半数以上は残ってると考えるべきか。

 オウミ守備隊って三百人くらい居る話だったが、もしかして生き残りはこの二十人弱だけとか言わないよな......?


「おぉ! ここにおったか! 探したわい」

「おお! 天狗殿! 後ろに居るのはうちの隊員ではないか! 助けてくださり感謝致す!」


 俺と同じ天狗面を被った爺ちゃんが討伐隊の生き残りを率いて合流して来た。

 これで9割は揃ったようだが残りは戦死してる可能性が濃さそうだ......。

 デサート殿の計らいで俺と爺ちゃんは少し離れた所で弓矢を渡すことにした。


「約束通り雷上動を持って参った。これで存分に務めを果たされよ」

「忝い! 八幡大菩薩に誓って妖魔大蜈蚣を討ち取ってみせます!」


デサート殿は雷上動を膝をついて両手で受け取ると宣誓をした。


「こっちがサイカが作ってくれた特製矢です。2本はクラマ寺で秘中の秘である特殊な祈祷をして力を込めてもらった特別中の特別だそうです。今日一杯で魔力は消えてしまうのでなんとか使ってください」

「こ、これは(やじり)から矢筈まで鉄で出来ているのか! しかも鏃は螺旋のような形をしている? それにこの魔力は一体!!?……」

「まさか陽属性の魔力を込めた矢じゃと!!?」


 そう。俺が考案してサイカが作った矢は羽根以外が鉄で出来ている。

 そしてその先端は螺旋状に溝を付けたドリルのような構造をしている。

 羽根部分はクラマの大烏が落としたものを使った特製の螺旋鉄矢だ。


 しならないうえに重い為、遠くまで飛ばすには恐ろしい程の膂力が必要となるだろうが、 雷上動とデサート殿なら可能だろうと判断した。

 この矢であればきっと大蜈蚣の甲殻すら貫き通すだろう。


「苦手と仰られていましたが、放つ際に風魔法で回転を加えることでこの矢の貫通力が爆発的に上がります」

「なんと! 試射した時よりも貫通力が上がると申すか!? なんというものを作っとるんじゃ! ツナよ!」

「ミチザ殿がそこまで仰るほどの威力ですか。これは期待できますな!!」


 弓矢を渡して討伐隊がミカミ山へ行くのを見送ろうとした時、周囲の空気が変わった。



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