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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~百足蜈蚣編~

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五十二話 妖魔蛟討伐隊

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「そうなんかぁ。ニオノ海で起きてることは妖魔の仕業の可能性があるっちゅうことやねんな。それで猟師のおっちゃんらにはなんか支援はあるん?」

「いや......あくまで調査隊の派遣だけだと聞いてる。オウミの領地だからね。残念だけどオウミ(のかみ)から救援を求められた時しか民草の為には動かないと思う」


 朝餉の際にサイカに昨日の件を伝えた。

 皇京から民を助ける行動が無いと知るとサイカは苦々しい表情をしていた。

 

 彼女は耳と右手が治った今でも毎日(しじみ)の買い付けに行っている。

 何度も通ううちに見知った者も出来たことだろう。

 そんな知り合いたちが困っているのに何も手を差し伸べられないことが心苦しいに違いない。


「今回の調査隊派遣もサイカが相談したおかげだし、後はサイカにしか出来ない手助けをしてやるといいんじゃないかな。キイチ師匠に頼んで貯蔵してある干し肉を分け与えたり、皆が使ってる包丁や農具を調整してやったりね?」

「ウチにしか出来ひん手助け……。せやな! ありがとうツナ坊ちゃん! ウチはウチにしか出来ん助け方でおっちゃんらを支えるわ!」


 俺の助言に納得がいったのか、サイカの顔にパァッと明るさが戻った。

 俺はサイカにはなるべく明るく笑っていて欲しいのだろうな。

 まだ知り合ってから日は浅いが修行で疲れた日なんかは彼女の明るさに癒されることもある。

 

 これが恋というやつかと聞かれるとおそらくは違うのだろうけれど。

 どちらかというと家族と同じような親愛の気持ちなのかな?

 エタケが姑獲鳥(ウブメ)に攫われた時のように、何かあったときは自分の命を掛けてでも助けたいと考えるような気持ちだ。


 まあ爺ちゃんからもっと自分の命を大切にしろとお叱りを受けた事もあり、自分の命も守りつつという感じではあるが。


「それじゃ、今日も修行に行ってきます」

「いってらっしゃい! きばりや~!」


■ ■ ■


 サイカに調査隊の話をしてから2週間が経ち師走に入った。

 寒い日が続くが相変らずニオノ海周辺は酷い状況のようで、サイカは毎日通っては農具の修繕や畑仕事に慣れない漁師たちの為に畑を耕す手伝いなどをしているらしい。

 最近では周辺の牛馬や人も襲われたと聞いているので行くのは少し控えるように言っているが、本人はそのつもりはないと答えていた。


 皇京からの調査隊三十人はオウミ(のすけ)シタダ・ハルス殿が率いるオウミ守護隊三百人と共に現地で調査に取り掛かっていると聞く。


「師匠。此度の妖魔の正体は(ミズチ)が変異したものとの噂がありますが本当なのでしょうか? 確かにヒノ国の魔獣の書やトウ国の『仙海経』には毒を吐く似たような魔獣が載っていますが、地上にも痕跡が見られるというのはおかしいと思うのです」

「やはりツナ殿もそう思われますか。しかし調査隊が水中を泳ぐ大蛇のような姿を見たと報告しているのも事実。最悪を想定するならば二体の妖魔が居る可能性も考えた方が良いかもしれませんな......」


 一体でも十分な脅威と言える妖魔が二体も出現しているとは考えたくないものだ。

 それが事実なら確実に皇京からも追加の討伐隊が派遣させられてしまうだろうな。

 そうなると権力争いなど言っている場合では無いだろうし父上や爺ちゃんが討伐に駆り出される事になるのが安易に想像できる。


「皇京では既に蛟として討伐隊が編成されていると聞きました。主にうちの家族を除いた雷魔法の使い手から選ばれているとか」

「そのようですな。蛟相手であれば雷魔法で攻めるのが定石。あとは妖魔化しているのであれば祓い清めの為に巫女や祈祷師を始めとした陽属性の使い手たちも参加することになりますな」


 蛟は水属性の蛇とも竜ともいえる魔獣だ。

 毒を吐くものや角の生えたもの、(くちばし)のあるものなど個体差が豊かだと書物には載っている。

 どんな個体差があろうと共通するのは弱点が雷属性であること。

 故に今回の討伐隊の人選は定石に則っている。


 また妖魔とは魔力を持った生き物の感情が暴走して変じる以外では、穢霊(ハハチ)が憑依することで変じることが一般的だ。

 穢霊とは魔力溜まりという自然発生した魔力が溜まった場所が何らかの影響により濁る事で生まれる存在で、高濃度の命素から生まれる精霊は似た存在だ。

 書物には穢霊に憑りつかれると殺意や捕食などの感情が極限まで増幅されることで妖魔へと変じるのだと書いてあった。

 そのため穢れを祓う事が可能な巫女や祈祷師など陽属性魔法の使い手が必ず同行するのだそうだ。


「そういえば今回の討伐隊はバンドーから来た方が隊長をされると伺っておりますが師匠はその御仁はご存じですか?」

「ああ、デサート・タワラ殿ですな。ミチナ・テミス殿に並ぶ弓の名手と言われております。珍しい武具に目がないようで、つい先日もクラマ寺に祀られている刀を見に来られましたぞ」


 へぇ。クラマ寺にも来ていたのか。

 ミチナ殿に並ぶほどの弓の名手ということは”御堂弓姫(ミドウキュウキ)”のような二つ名を持っているのだろうか?

 ミチナ殿の実力を見た事は無いが爺ちゃん達も一目置くような人物であるのは知っている。

 それほどの猛者が隊長をしてくれるのは心強いな。


 俺は自分の家族が派兵されないためにもデサート殿達の妖魔退治が無事に終わることを祈った。



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