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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~鴎鳴編~

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四十八話 夢の魔力補充装置

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 久しぶりにルアキラ殿とお会いした翌日、俺は爺ちゃんと共に屋敷にてちょっとした実験を行っていた。


「ふーむ。姑獲鳥(ウブメ)の卵が命素(めいそ)を吸い取りそれを魔力に変換している可能性か。考えたことも無かったわい。そもそも姑獲鳥自体がそんなに見かけぬ魔獣じゃしのう」

「そう。それをやっているのが卵の中身なのか殻なのかが気になるんだ。もし中身なら他者から命素を吸い取って魔力に変える機能……つまり魔獣が他の生物を捕食して命素を得るのと同じような効果を持ってることになる」


 姑獲鳥の卵を割る際に一瞬だけ殻に触れたときに、命素が極めて少ない俺ですら吸われた感覚が分かった。

 もしこれが殻だけで機能するならば、俺は殻に触れている間は一切の魔法が使えなくなる。

 だがこの機能が殻だけで使えるのであればもしかしたら......。


「もし殻じゃった場合は、命素を吸い取って中身に魔力を与える機能があると......まさか!!?」

「そう! 魔力の減った魔石に魔力を補充出来る可能性がある!」


 俺の推論に爺ちゃんはかなりの衝撃を受けていた。

 それはそうだろう。今まで不可能だと思われていたことが可能になるかもしれないのだ。

 とは言っても、まだ推論の域を出ない為、先日持ち帰った卵殻を使って実験しようと思ったのだ。


「では、触れてみるね」


 まずは割った時に取り除いた指先ほどの小さな欠片に触れる。

 さすがにこれでは吸われていると分かるような感覚は無かった。

 次に上部を覆っていた掌程の大きさの殻に触れる。

 こちらも何の反応も無かった。

 最後に上部が無いだけの大きな殻に触れる。

 ......反応がない。


「はぁ~~~~。思った通りにはならなかったかぁ」

「いや、面白い推論ではあったぞ。今まで誰も考えてこなかったような着眼点じゃ」


 俺の予想は外れてしまったが、ある意味で世の中を変えるような事が無くて安堵した。

 片付けるために一番大きな殻の中に小さな殻や用意してあったビー玉くらいの大きさをした中途半端に魔力の残存した魔石を放り込む。


 布に包もうと殻を持ち上げた時、違和感に襲われた。


「え? 吸われてる?」


 さっきは何も起きなかったのに何故今?

 違う点は......中身?


 今、殻の中には纏めて片付けようとした殻の欠片や魔石が入っている。

 俺はもう一度床に殻を置くと、中の欠片や魔石を取り出してもう一度触れてみた。


「吸われる感覚がない」


 俺は殻の欠片を中に入れて触れてみるが今度も反応はしなかった。

 そして魔石を入れて触れてみる。


「命素を吸われてる感覚がある……」


 試しに雷神眼を使おうとするも全く視界は変わらず、無意識的にも使えるようになったはずの雷珠も発動しなかった。


「どうしたんじゃツナ? もしや!?」

「うん。中に中途半端に魔力の残った魔石を入れたら吸われているような反応がするんだ。今は全く魔法が使えないや」


 爺ちゃんは慌てて俺が持っていた殻を取り上げた。

 命素が枯渇している状態の俺を心配してのことだろう。


「大丈夫か!?」

「うん。今はもう使えるよ -雷珠-」


 俺は安心させるようにわざと呪文を口にして雷珠を発動して見せた。

 爺ちゃんは心底ホッとしたした様子で持っている殻の中を覗き込んだ。


「爺ちゃんは命素を抜かれてる感じは分かる?」

「ああ。僅かじゃが変な感覚がするのが分かるぞ」


 爺ちゃんは「魔法のように体内で命素を魔力に変換して放出するのではなく、その前の状態で放出しているのだから変な感覚に思うのじゃろうな」などと所感を述べていた。


 そうして暫く持ったままでいると、ピシピシと音を立て卵殻が崩れ去ってしまった。


「「あぁ!?」」


 二人して素っ頓狂な声をあげ、粉々になった殻に触れると殻は欠片も残さず砂になった。

 その砂の中からビー玉くらいの魔石を取り出して観察してみる。


「どう?」

「うむ......これは……魔力が満ちておるな......」


 爺ちゃんが確認したのだから間違いは無いだろう。

 恐らく砂になってしまったのは卵殻が中の魔石の魔力が満ちたことで孵化出来ると認識して役割を終えたと判断したのだと思う。


 なんにしてもこの世界で魔石に魔力を補充する方法が見つかったのだ。

 画期的な発見に二人で歓声をあげていると、何事かと侍女や侍従が集まって来てしまったので何でもないと解散させた。


「ツナ、分かっておると思うが......」

「このことは誰にも言えないね。ルアキラ殿には爺ちゃんから?」

「うむ。事が事なだけあるのでその方が良いじゃろうな。しかし姑獲鳥の卵殻か......」

「もしかしたら中の魔石の魔力が満ちる前に取り出したら、殻を何度も使えたりするかもしれない。でも姑獲鳥自体珍しいから滅多に手に入らないだろうね。飼うにしても危険だし安定供給は難しいんじゃないかな」


 誰がどうやって調べたのかは謎だが、俺の読んだ書物では姑獲鳥は単為生殖する生物で生涯に数度産卵すると書いてあった。

 つまり雌しか存在しない。

 そのため子を亡くした母の霊が変じたモノだとする説なんかもあるくらいだ。

 野生の姑獲鳥は酷く凶暴なので、騎獣を育てるように幼い頃から飼い慣らしたとして上手くいくかは不明である。


 見た目的にも鳥の身体に人面が貼り付いている容貌なのでかなり不気味だしな。

 エタケ曰く少しではあるが意味のある人の言葉を喋ったというのでかなりの知能はあるのかもしれない......。


 まあ、うちで育てるのはエタケが絶対に許してくれないだろうが、次に遭遇することがあれば卵を割らずに確保してみよう。


 魔力の満ちたビー玉くらいの魔石は俺が貰っておいた。



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