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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~バンドー叛乱編~

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百六十話 九曜紋

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 マサードが動かぬ間、周囲のまだ息がある兵達を離れた場所に移送していると不意に嫌な汗が背筋に伝った。

 結界を張ってからまだ10分も経っていない。

 時間にはまだ余裕があったはずだ。


 しかし神威が急激に高まった後、突然風の結界が霧散してその中からマサードが姿を現した。

 その風体は土によって汚れており肌の色も金色ではなく、くすんだ黒になっている。

 どうやら結界の中で身体に土を纏って炎を防いでいたようだ。

 結界を吹き飛ばした際に神威が霧散したのか金色ではなくなっていた。


 これは恐らく太陽光を受けていなかったことが原因だろう。

 ミドノ寺の資料で九曜紋(くようもん)の元になっている九曜星信仰について調べたが、宇宙にある九つの星の力を司っているようだ。

 その中でも中心となっている大きな丸が太陽を表している。


 最初に出会った時もミチナ様の魔法から仲間を土の下に隠して自分だけ受けていたが、あれも陽の光を浴びていなければ力を十全に発揮できないので自分だけは隠れられなかったのだと思う。

 それに今思えばマサード自体は夜戦に出て来る事など殆ど無く、さっきの闇の霧にしたって過剰な反応を示して防いでいた。

 そして爆炎から逃れる為に土を纏ったせいで陽光を遮った結果がこれだ。


 先ほどまでの圧倒的な力の差を感じない。

 畳み掛けるならば今だ!

 

「父上! 母様! ミチナ様!」

「-雷纏(ライテン)-! おぉおおおおおお!!」

「≪天雲を ほろに踏みあだし 鳴る神も 今日にまさりて 畏けめやも≫ -裂雷(レツライ)-」

「≪大いなる風よ 遍く空と大地の悉くを知る者よ 逆巻く風を我が矢に宿せ≫ -暴風之矢(ボウフウノヤ)-!」


 俺が叫ぶより早く動き出していた三人が神威の消え去ったマサードに対してそれぞれが必殺の一撃と呼べる威力の技を放つ。


 紫の雷を纏った父上が鬼切丸を振り上げて突っ込み、マサードを袈裟斬りにして通り抜ける。

 そこへ真上から切り裂く様な鋭い落雷が縦一閃。

 さらに風を纏った矢が胸に突き刺さった。


「よし! 決まった!!」


 強者三人による大技をその身で受けたマサードは立ち尽くしたままだ。

 刀で切れたし矢も刺さったことから黒鉄も効果を失っていることだろう。

 黒鉄の防御力が落ちたのは草生水(くそうず)の影響である。

 原油に含まれる不純物が硫化水素を生み出して風の結界に留められ、纏った土の下で黒鉄を一気に腐食させたのだ。


 以前、黒鉄を錆びさせる方法を考えた時に腐食させることにも思い至っていた。

 だが、ルアキラ殿の屋敷にある実験装置が無いような場所で硫酸などの劇薬をどうやって用意するかが問題だったのだ。

 硫黄から生成するにしても下手をすればガスで死人が出るしな。

 そこにルアキラ殿から聞いていた草生水の話が結び付いたおかげで今回の策を立案出来たのである。

 ルアキラ殿には離れていながらも兄姉妹の命を救ってくれたり、知識に助けられたりと本当に世話になってばかりだ。帰ったら真っ先にお礼を伝えに行こう。


 立ち尽くしていたマサードに変化があった。

 それを目の当たりにし、俺の頭に絶望という言葉が過る。


 マサードの身体が再び金色に染まっていったのだ。

 そして再び周囲に神威が放たれる。


「くくく。ははははは!! 陽はまた昇るもの! 神には勝てぬ! 天意は我にあり!!!!」


 外見はボロボロになっているが再び金色に染まったマサードは声高に叫ぶ。


 叫んでいる隙を突いて背後から斬りかかった父上だったが、まるで来ることが分かっていたかのように反応したマサードによって鬼切丸の刃を片手で掴まれ、刀ごと俺たちの方へと投げ飛ばされた。


「ぐおっ!」

「-金装爆岩(コンソウバクガン)-」

「! -十字雷(ズシライ)-」

「-返風壁(ヘンプウヘキ)-!」


 人間離れした怪力で父上を投げ飛ばしたマサードは続けざまに俺たちの方へと金色の岩を飛ばす。

 それを母上の十字型の雷が迎撃したことで爆散し、破片はミチナ様の風の壁が跳ね返したことでマサードへと降り注ぐ。


 強風によって雨霰のように返って来た金の石片を、マサードの身体が三人分は隠れる程の大きな金の土壁を生み出して防いだ。

 石片が止むと壁が崩れ去り、金の土煙がマサードの周りに立ち込めており、煙の中は太陽光が遮られている。

 今が絶好の機会ではないだろうか。


 そう考えたのは俺だけでは無かったようで、母様がマサードが居るであろう煙の中から見える人影へ向けて雷の槍を3本連続で放つ。

 バチバチと当たった音がし、同時に父上が斬りかかる為に構え、ミチナ様が風で土煙を吹き飛ばす。


 しかし、煙が晴れても父上は突っ込んでいかなかった。

 そこにあったのはマサードではなく、人の形に似せた金の岩だったのだ。

 マサードの姿はどこにもない。


 どういうことかと皆が訝しんだその時、俺の足元が揺れて背後の地面からマサードが飛び出してきた。


「死ぬがいい!!」

「なにっ!?」


 突如として地中から現れたマサードは黒鉄の剣で俺を薙いだ。

 振り向き様に袈裟に斬られる。

 しかし身体が小さい事と振り向き方が幸いしてか胴丸と草摺が斬られたものの身体は薄皮が斬られただけで助かった。

 斬られたと同時に後ろに跳んで転がる。

 もし今のが横薙ぎだったら両断されていただろう。


 俺が転がり下がると同時に父上が前に出てマサードを斬った。

 地中に潜ったことで一時的に黒鉄に戻っていたからだ。

 だが今回はマサードの剣によって防がれてしまう。


「-雷刃(ライジン)-!」


 父上も防がれることは想定済みだったようで、刀が触れた際に刃に纏わせた雷を相手の身体に流し込んだ。


「ぬがぁああああ! -金装土鎧(コンソウドガイ)-」


 父上の雷を浴びつつも肉体が金色に戻ったマサードは黄金色の土の鎧で身を包む。

 重厚なその鎧はどこか西洋の騎士を思わせるような装いをしていた。


 そのまま剣を振って父上を弾き飛ばす。

 マサードの土鎧には九曜紋が浮かんでいる。

 どんな原理かは不明だが全身を包んだにもかかわらず力が衰えないのはその為か。


「これでもう雷は効かぬぞ!」

「ならば水ではどうかな?」


 勝ち誇ったマサードの背後から声が聞こえた。



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