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セイデンキ‐異世界平安草子‐  作者: 蘭桐生
第一伝:幼少期~バンドー叛乱編~

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百五十七話 母の実力

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右近衛将監(うこんえしょうげん)様がどうしてこちらに!?」

「ミチナ様から主上に嘆願書が送られてきましたので、それの許可を出す条件として私の同行を主上御自らがお決めになられたのです。久しぶりに家族たちと会って来るようにという温かいご配慮でしょうね」


 サキ母様はそう言うと俺がヨシツナを名乗っていることを知っているようで、じんわりと目尻に涙を浮かべて微笑んだ。

 俺も久々に会う事が出来た喜びでいっぱいだ。正体を偽っている状態じゃなければ両手を握る位はしていたかもしれない。


「それで賤しくも真皇と僭称している賊というのは彼奴ですか」


 つい先ほどまでと一変してサキ母様の眼光が鋭くなり、距離を取って離れたマサードを射殺すような視線で睨みつけた。

 こんな表情は初めて見たので正直、とても驚いたし滅茶苦茶怖い。

 近衛職に誇りを持っている母様だからこそ、自分の主を貶めるような輩は許す事が出来ないのであろう。


「なるほど。確かに主上と同じような威を放ってはいるようですね。儀式には三種神器と同等の神器でも用いましたか。それでも所詮は紛い物です。あんなものに遅れを取ってはなりませんよ?」

「は、はい!」


 母様は俺に気合を入れるようにジッと見て言い聞かせた。

 

「はは! これまで散々活躍したヨシツナもサキ殿には弱いか! これは愉快だ! ははははは!!」

「ミチナ様は以前から申し上げているようにもう少し品位というものを身に着けた方がよろし————」

「あー! わかったわかった! 降参だ! アタシもお主には勝てん!」


 いつもサモリ殿に注意されても我が道を行くようなミチナ様ですら、サキ母様のお小言には弱いのか。

 これは珍しいものを見た。


「さて、ヨシツナ。事前の策通りで良いんだな?」

「ええ。やること自体は今までと変わりません。何度も同じ手を使っているので新しいもの好きなミチナ様には退屈かもしれませんが効果的な手だから仕方ないのです」

「そんな事は無いぞ? アタシもアイツを斃せるならどんな手だろうと構わんさ」


 軽口を言って自分の緊張を解す。

 この後の数手によって此度の戦の趨勢が決まるのだから緊張しない方がおかしい。

 これまでの戦いで観察と分析は出来ている。

 仮説を幾つも立て、道具も揃えた。

 そして昔からルアキラ殿に教えて貰っていた暦道や、眉唾だと思って滅多に手を出さなかった占星術で決戦に今日という日を選んだ。

 それにサキ母様という強力な味方が付いてくれた。

 ヤツ自身が天の意思だと言ったが、天運は此方に向いている。

 なんとかなるはず、いや絶対に斃す!


 決意を胸にそれぞれの動きを見守る。


「マサードに暗闇を!」

「-闇霧(アンム)-」


 陰の放出型の使い手たちがマサードのみを狙って視界を奪う闇の霧を放つ。

 朝の陽ざしの中で使うため、大した効果は出ないだろう。

 しかし、これはマサードの反応を見るためのものだ。


「っ! -握土(アクド)-」


 迫る闇にマサードは右手を顔の高さまであげて握り締める動作をすると、大地が掌のように隆起し闇の霧を下から包むように握り潰した。


 あんな殺傷力の無い技をわざわざ防いだというのはやはり何かしらの理由があるとみて間違いない。

 此方が何かに感付いた事を悟ったマサードが周りの兵達に指示を出して接近戦を仕掛けてくる。

 狙いは先ほど魔法を放った闇の使い手たちのようだ。

 

 しかし、そうなることは想定済みであちらの守りにはサキ母様を付けている。


 先に突撃を掛けて来た騎馬武者たちをサキ母様が一人一人撃ち落としていく。

 掌から放たれる雷撃は斜め十字の形となって飛び、当たった敵兵を感電させては意識もしくは命を刈り取っている。


「強い......」


 実際に戦っている母様を見るのは初めてだったが、爺ちゃんに負けず劣らずの強さを持っているように思える。


「あれで鎧が黒鉄でなかったら、身体を四つに焼き切ることも可能だぞ。なんせそれが”裂雷(サクライ)”の由来だからな」

「えぇぇ......」


 隣に立つミチナ様が教えてくれた情報が強烈過ぎてちょっと引いた。

 あ、母様がこっちを笑顔で見てる。でもなんか怒りを孕んだ笑顔をしてるような......。

 その笑顔は俺ではなく隣のミチナ様に向けられているようで、ミチナ様を見上げると青い顔をしていた。


「ヨシツナ。今の話は冗談だぞ。なんせサキ殿の二つ名は花が咲くような意味での”咲雷”だからな? 分かったな?」

「あ、はい......」


 あのミチナ様が冷や汗を搔いて焦っている。

 この二人の間には過去に何があったんだろうかと一瞬気になったが、触らぬ神に祟り無しと本能が告げたので黙って戦況を見守ることに集中した。



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